日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第172夜 飢餓の果て

これは、一昨日の夢です。
 
場所は近未来の日本のどこか。
今は決定的な食糧危機で、オレは生きるために、野生動物を狩りに出ていた。
もう三昼夜の間、各所に仕掛けた罠を見回っているが、小ウサギ一匹かかっていない。
イノシシを見かけなくなり、もう数年が経つ。
 
いよいよ腹が減り、オレと息子は、息子の友だち3人を引き連れて、三日前にこの禁断の地に入ったのだ。
ここは、20年前から立ち入り禁止区域で、二重三重に囲いがしてある。
しかし、周囲から隔絶されていたため、この中には野生動物が生き残っている。
東京の周辺には、もはや雑草すら生えていない。
食糧を得る可能性のあるのは、この場所だけだ。
 
だが、同じことを考えるヤツもたくさんいる。
どんなにここが汚染された土地でも、3、4日後に飢え死ぬよりはまし。
危険を承知で、目の前の飢えを満たすためにここに入るわけだ。
もし、そういう輩と出会ったらどうするか。
もちろん、容赦なくぶち殺す。
ここにあるのは、オレたちの食料で、あいつらのではないからな。
だが、オレはもうトシで、野山を駆け回ることが出来ない。
結局、この数日間は無駄に過ぎた。
 
オレは倒れた電柱の上に腰かけて、目の前の雑草を眺めていた。
「オオバコとか、本来食えるんだけどな」
だが、汚染された土地から直接生えてくる雑草の類だけは、直接口にしてはならないのだ。
 
ここで、数人の声が耳に届いた。
息子たちが帰って来たのだった。
最初に姿が見えたのは息子で、林の陰からぬっと出てきた。
息子は身長が180センチを軽く超えるので、遠くからでもすぐにそれとわかる。
息子は背中に大きな布袋を背負っていた。
 
すぐ目前まで、息子が近づいた。
「オヤジ。生きてたか。ほれ、獲れたぞ」
息子が袋を下ろすと、どさっという音がした。
「何がいた?」
父親の問いに、息子は笑って答えず、ただ袋の口を指差した。
オレは袋を引き寄せ、口の紐をほどいた。
中に入っていたのは、動物の長い脚だった。
「なんだこれ?」
「ふふ。見りゃわかるだろ」
なるほど。こんな長い脚部を持つ動物は、キリンしかいない。
「子どもだな。キリンの子がいったいどこで生き延びていたんだよ」
「海沿いに北に向かっていたら、発電所の近くにいた」
ふうん。
「胴体は?」
「後ろのヤツらが運んで来る」
じゃあ、ご馳走だな。
ここで燻製にして、家に運べば、母さんたちも喜ぶだろう。
 
今の時代、生きていくのは大変だ。
愚かな政治家が後先考えずTPPなんぞに加入してしまったために、国内の1次産業が衰退して、食糧やエネルギー等の97%を海外に依存することになってしまった。
その結果どうなったか。
先例を見れば想像がつくだろ。
阪神淡路の震災の時、被災地の中心部は周囲から物資が入らなくなり、3日で食料が枯渇した。
三陸の震災・津波の時には、物流が止まった瞬間に、数日のうちに東日本全域で食料が枯渇した。
 
そこで、自給率数パーセントの状態で、もし北朝鮮がヤケクソ気味に、韓国に侵攻したらどうなるか。
中国が示威(自慰)行為のために、尖閣で紛争を引き起こしたらどうなるか。
話は簡単で、その瞬間に国内外の物流が止まるのだ。
 
TPP交渉では「農業産品は例外とさせる」と政治家がウソをついた。
バカを言うなって。それはアメリカが、「自国にとって自動車産業は基幹産業だから、これを除外してほしい」と言うのと同じようなナンセンスな話だ。
 
大体、なぜ韓国を「環太平洋」の仲間に入れようとしないのか。
サムスンヒュンダイを無関税で入れれば、製品の質は別にして、価格競争力で負けてしまう。
逆に韓国の側は、独立国としてはお話にならない食糧自給率だ。
また、一部の企業の業績が良くとも、貧富の差が大きくて、国民資産はまだまだ中流だということもある。
アメリカにとっての対韓、韓国にとっての対米は、最初からまるごと例外なんだよ。だからFTPでなくてはならない。
食料は産業でも経済でも、安全でもなく、「国防」だ。
自分の身を守るのに、「刀の値段」がどうとか言っていられるわけがない。
護身用の武器に、国際競争力なんか必要が無い。
燃料費や機械類がバカ高いのに、農産品の値段を下げられるわけがない。
ガソリンや灯油はアメリカの2倍の値段だ。
安価な農産品が必要なら、まずは農業生産にかかる税金の類をぜんぶゼロにしてから言え。
1次農産品に消費税はかけない。農業所得に所得税をかけない。
農業機械のローンの金利を下げる。
ここがスタートラインだって。 
 
これくらい、ちょっと考えればわかりそうなのに。
日本国政府がいくら赤字になろうが、円が強いのは、国民資産がいまだ膨大にあるから。
要するに資産があれば、多少の借金は返せる。円が強いのも「まだ余裕があるでしょ」っていう意味だ。
それを搾り取るのがTPPで、実際にそうなった。
輸入しなければ経済が成り立たなくなったところで、今度は値段を上げる。
三文字名のスーパーに行って、品揃えをみれば、結果は見えるだろ。周囲に競争相手がいなくなると、鮮度の悪い食品を、一律同じ値段で売っている。
 
今さら文句を言っても、もはや取り返しがつかない。
輸入依存度が目いっぱい高まった頃に、すぐ傍で紛争が勃発した。
その結果が今の事態だ。
 
もはや食えるものはどこにもない。
あとは骨だらけの人間だけだろうな。
オレは、いざそういう事態が来たら、最初に食うのは政治家と決めている。
次が法律家で、役人、警察官と続く。
 
ここで覚醒。