これは、一昨日の夢です。
場所は近未来の日本のどこか。
今は決定的な食糧危機で、オレは生きるために、野生動物を狩りに出ていた。
もう三昼夜の間、各所に仕掛けた罠を見回っているが、小ウサギ一匹かかっていない。
イノシシを見かけなくなり、もう数年が経つ。
いよいよ腹が減り、オレと息子は、息子の友だち3人を引き連れて、三日前にこの禁断の地に入ったのだ。
ここは、20年前から立ち入り禁止区域で、二重三重に囲いがしてある。
しかし、周囲から隔絶されていたため、この中には野生動物が生き残っている。
東京の周辺には、もはや雑草すら生えていない。
食糧を得る可能性のあるのは、この場所だけだ。
だが、同じことを考えるヤツもたくさんいる。
どんなにここが汚染された土地でも、3、4日後に飢え死ぬよりはまし。
危険を承知で、目の前の飢えを満たすためにここに入るわけだ。
もし、そういう輩と出会ったらどうするか。
もちろん、容赦なくぶち殺す。
ここにあるのは、オレたちの食料で、あいつらのではないからな。
だが、オレはもうトシで、野山を駆け回ることが出来ない。
結局、この数日間は無駄に過ぎた。
オレは倒れた電柱の上に腰かけて、目の前の雑草を眺めていた。
「オオバコとか、本来食えるんだけどな」
だが、汚染された土地から直接生えてくる雑草の類だけは、直接口にしてはならないのだ。
ここで、数人の声が耳に届いた。
息子たちが帰って来たのだった。
最初に姿が見えたのは息子で、林の陰からぬっと出てきた。
息子は身長が180センチを軽く超えるので、遠くからでもすぐにそれとわかる。
息子は背中に大きな布袋を背負っていた。
すぐ目前まで、息子が近づいた。
「オヤジ。生きてたか。ほれ、獲れたぞ」
息子が袋を下ろすと、どさっという音がした。
「何がいた?」
父親の問いに、息子は笑って答えず、ただ袋の口を指差した。
オレは袋を引き寄せ、口の紐をほどいた。
中に入っていたのは、動物の長い脚だった。
「なんだこれ?」
「ふふ。見りゃわかるだろ」
なるほど。こんな長い脚部を持つ動物は、キリンしかいない。
「子どもだな。キリンの子がいったいどこで生き延びていたんだよ」
「海沿いに北に向かっていたら、発電所の近くにいた」
ふうん。
「胴体は?」
「後ろのヤツらが運んで来る」
じゃあ、ご馳走だな。
ここで燻製にして、家に運べば、母さんたちも喜ぶだろう。
今の時代、生きていくのは大変だ。
愚かな政治家が後先考えずTPPなんぞに加入してしまったために、国内の1次産業が衰退して、食糧やエネルギー等の97%を海外に依存することになってしまった。
その結果どうなったか。
先例を見れば想像がつくだろ。
阪神淡路の震災の時、被災地の中心部は周囲から物資が入らなくなり、3日で食料が枯渇した。
中国が示威(自慰)行為のために、尖閣で紛争を引き起こしたらどうなるか。
話は簡単で、その瞬間に国内外の物流が止まるのだ。
TPP交渉では「農業産品は例外とさせる」と政治家がウソをついた。
大体、なぜ韓国を「環太平洋」の仲間に入れようとしないのか。
逆に韓国の側は、独立国としてはお話にならない食糧自給率だ。
また、一部の企業の業績が良くとも、貧富の差が大きくて、国民資産はまだまだ中流だということもある。
アメリカにとっての対韓、韓国にとっての対米は、最初からまるごと例外なんだよ。だからFTPでなくてはならない。
食料は産業でも経済でも、安全でもなく、「国防」だ。
自分の身を守るのに、「刀の値段」がどうとか言っていられるわけがない。
護身用の武器に、国際競争力なんか必要が無い。
燃料費や機械類がバカ高いのに、農産品の値段を下げられるわけがない。
ガソリンや灯油はアメリカの2倍の値段だ。
安価な農産品が必要なら、まずは農業生産にかかる税金の類をぜんぶゼロにしてから言え。
1次農産品に消費税はかけない。農業所得に所得税をかけない。
農業機械のローンの金利を下げる。
ここがスタートラインだって。
これくらい、ちょっと考えればわかりそうなのに。
日本国政府がいくら赤字になろうが、円が強いのは、国民資産がいまだ膨大にあるから。
要するに資産があれば、多少の借金は返せる。円が強いのも「まだ余裕があるでしょ」っていう意味だ。
それを搾り取るのがTPPで、実際にそうなった。
輸入しなければ経済が成り立たなくなったところで、今度は値段を上げる。
三文字名のスーパーに行って、品揃えをみれば、結果は見えるだろ。周囲に競争相手がいなくなると、鮮度の悪い食品を、一律同じ値段で売っている。
今さら文句を言っても、もはや取り返しがつかない。
輸入依存度が目いっぱい高まった頃に、すぐ傍で紛争が勃発した。
その結果が今の事態だ。
もはや食えるものはどこにもない。
あとは骨だらけの人間だけだろうな。
オレは、いざそういう事態が来たら、最初に食うのは政治家と決めている。
次が法律家で、役人、警察官と続く。
ここで覚醒。