日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第182夜 氷結ハイウェイ

このところ体調が芳しくなく、通院する以外では外出することも無く、寝たり起きたりです。
昨夜は夕食後、程なく寝入ってしまいました。
その時に見た短い夢です。

私は30歳くらい。
帰省していた時に、急な仕事が入り、新幹線で東京へ来ました。
すぐに郷里に戻りますが、休みは次の日で終わりなので、その足で車に乗り、東京にとんぼ返りすることになりました。

一瞬にして、実家の前に立っています。
母が心配そうな表情で私を見ていました。
「大丈夫かい?無理したらダメだよ」
母親は口うるさく、細かいことまで注文します。しかし、それも息子のことを案じるがための振る舞いだとわかる齢にはなっています。
「いつものことだから、大丈夫」
「でも、雪が降ったらどうするの」

雪?もうじき6月になろうとする季節なのに、雪は降らんでしょ。
「車を置いて、新幹線で行きなよ」
翌日は朝から仕事なので、それもアリ。でも、車が無いと何かと不便です。
「5、6時間もあれば帰れるんだから、どおってことない」

出発して1時間も経たぬうちに、周囲の景色が変わります。
晩春・初夏のはずだったのに、空気が冷え、ついには雪が降ってきました。
「まじかよ。母さんの言った通りだ」
車の外は雪で真っ白になってしまいました。

「スタットレスを替え忘れていたのが、今日は奏功しそうな感じだね」
ところが、高速道路はハンパない速さで雪に覆われて行きます。
なるべくスピードを落としますが、路肩には早くもスリップした車が何台も停まっていました。
路面が氷結しているのです。
(ここは「凍結」ではなく、表面が完全にツルツルの「氷結」です。)
「こりゃいかん。チェーンが必要になりそうだけど、積んであったかな」
さすがにこの季節では、チェーンは倉庫に戻しているはずです。
高速バスの停留所に車を寄せ、外に出ようとすると、信じられないくらいの寒さでした。
マイナス10度どころではなさそう。
時折テレビで見る「アメリカ中西部ではマイナス30度に」というニュースが頭を過ぎります。

チェーンはやはりありませんでした。
「さて、どうしよう」
考え込む私の前を、かなりのスピードで車が通り過ぎて行きます。
「早くここを抜け出たい気持ちは分かるが、自殺行為だよな。コントロールできるわけがない」
高速道路では、車の性能を過信したり、自分の運転技術への妄想から、危険運転の域にはみ出てしまうドライバーが沢山います。その結果、自分だけでなく他の車を巻き込んで事故を起こしてしまう。
私が見ている前で、1台の車がスリップし、くるくると回り始めました。
そこへ後続が突っ込んで、車がぐしゃぐしゃに潰れます。
後ろから次々に車が来て、あっという間に数十台がぶつかりました。
「どおん」という鈍い音がして、あちこちで炎が上がります。

「こりゃひどい。こうなったら助けるどころではないぞ」
爆発と炎上が始まったら、車まで20メートルのところにも寄れません。
「どおん」「どおん」と炎が上がり続けます。
ドライバーの姿が見えませんが、皆、逃げるどころではなく、焼け死んでいるのでしょう。
この氷結の状態では、警察や救急車だって、なかなか来られないはずです。
絶望的な状況になってきました。

雪はさらに激しく降り始め、5メートル先も見えない状況に。
「いかん。このままではオレ自身がここから出られずに凍死してしまう」
車がダメとなると、高速の降り口を探さねばなりませんが、この辺りは山の中で、階段や梯子も無い場所です。
「焼け死ななくとも、このままじゃあ凍死は避けられない」
絶望的な気持ちになってきました。

この時、後ろの方で何やら動く気配がしました。
「生きている人がいるのか・・・」
振り返ると、そこにいたのはポインター(犬)です。
その猟犬はがりがりに痩せ、舌をだらりと下げていました。
「なんでこんな高速の上に犬がいるわけ?」
遠く後ろを望むと、1台の車が防護柵を突き破り、山の斜面に飛び出ていました。
なるほど、犬はフェンスの破れたところから入ってきたのです。
犬は1頭だけではなく、7、8頭の群れが中に入ろうとしていました。

「猟期が終わった頃に捨てられた犬たちだな」
犬たちは鴨猟のために連れて来られたが、1年のうち猟犬が必要なのはその数週間です。
こうして、猟期が終わると、働きの悪い何頭かは山に捨てられてしまうのです。
「何もない雪山に捨てられたら、今はさぞ腹が減っているんだろうな」

ここで、ハッと気づきました。
犬たちは、人の肉が焼け焦げる匂いに引き寄せられたのです。
こりゃまずい。
あの頭数に囲まれたら、あっという間に食い殺されてしまいます。
慌てて自分の車に戻り、中に入りました。
「まさかこんな事態になるとは」
人間の身勝手さから捨てられた犬たちに襲われる。これは因果応報とも言えますが、その肩代わりをさせられたのではたまったものではありません。
「ハンターを襲えよな。ハンターを」

状況は絶望的です。零下20、30度の中なので、車の中にいてもあと数時間しかもちません。
外には動物を殺す訓練を受けた野犬だらけ。
いやはや。母の忠告を聞いておけば良かった。

「でも、ま、どうにかなるさ」
私は危機的な状況を乗り切るのが嫌いな方ではありません。
頭の中で思考がくるくると働き始めました。

ここで覚醒。
いったい何を象徴しているのか、サッパリわかりません。
ただし、元猟犬の野犬は、先日実際に見ましたので、その記憶が鮮明だったのでしょう。