日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第228夜 猫

夕方、ワインを1杯飲み、そのままテレビの前で寝入ってしまった時に見た夢です。

気がつくと、居間のテーブルに手を付いて座っていました。
部屋に灯りはなく、薄暗くなっています。
カーテンの隙間からこぼれてくる日の光を見ると、午後の3時ごろのような感じです。

「ふにゃあ」
庭で猫の声がしました。
寒さが一段落し、そろそろ春めいてきましたので、野良猫が活発に活動し始めたのです。
「ぎゃあ」「にゃああ」
なんだか、1匹2匹ではないような声です。

当家の庭は日当たりが良く、日の出から日没まで陽光があたります。
猫が寄りつきたくなる環境ですが、前の道の交通量が多いので、すぐに去ってしまいます。
これが裏の家になると、人目に付かないので、十数匹も猫が集まります。
その家のご主人は、車を出そうとして、そんな野良猫を轢いてしまうことがあるそうです。

「うちの庭に溜まられても困るよな」
窓に近寄り、カーテンを引き開けます。
窓から外を見ると、案の定、野良猫が5、6匹集まっていました。
「追い立てるのは嫌だが、ずっとここにいられても困る」
当家の前の道には、大きな榊の木があり、カラスが巣を作っていたのですが、宅地の造成で周囲の林が無くなると、どこかに引っ越してしまいました。
カラスが見当たらなくなったので、猫たちも大手を振って表に出られるようになったのです。

庭に出ようと、玄関の扉を開けました。
すると、玄関の前にも、猫が十匹以上、たむろしていました。
「おいおい。なんだこりゃ」
普段より足音を立て、外に出ます。

駐車場と庭が見える位置に立ってみると、なんと30匹近くの猫がいました。
「こりゃいかん。しっしっ!」
追い立てるように近寄ります。
すると、大半の猫は人間を恐れ、その場から出て行きました。

ところが、庭の隅に何匹か、じっとしたままの猫がいます。
いずれも、年老いた大野良猫でした。
「仕方ない」
玄関先の蛇口にホースを繋ぎ、シャアッと水を出します。
これだけで、再びのそのそと猫が裏のほうに動き出しました。
水を掛けられるかも、という気配だけで、大体は十分です。

しかし、これでもまだ1匹残っていました。
庭の灌木の下に黒い毛の塊が見えます。
「おい。お前も出て行け」
急きたてるように近づくと、その猫は当初思っていたより大きな体躯をしていました。
体長は50センチくらいあるようです。
全身真っ黒で、木陰にうずくまっている様は、猫なのか犬なのか、はっきり区別がつきません。
「なんだか猿にも似てるよな」
数歩近寄り、外帚で地面を掃き、音を立てました。

しかし、まったく動く気配がありません。
そればかりか、いかにも「絶対にここを動かないぞ」という、強情そうな表情をこちらに向けました。
「そうか。そういうつもりなのか」
私はここで腹をくくり、水道の蛇口に戻ります。

ホースを伸ばし、その猫だか猿だかに向けて、勢い良く水を放出しました。
シャアッ。
さすがに、この時期に冷水を浴びせられてはたまりません。
猫だか猿は、大きく身震いをしました。
それから、庭木の下から飛び出ると、手足をクネクネと動かしました。
体に付いた水を払う時よりも、大きな動作です。

すると、あろうことか、その生き物の体が急に大きくなりました。
「なんだこりゃ!」
チンパンジーのような黒く大きな動物です。

その生き物は、瞬く間に160センチくらいまで体長が伸びました。
なんだか、いかにも悪そうな表情に変わっています。

「コイツ。野良猫どころか、妖怪かUMAじゃんか!」
もし暴れ出したら、かなり面倒です。
私は水道の傍に置いてあったスコップを手に取りました。

ここで覚醒。

夢の中では、「コイツ、宇宙人か」と思ったのですが、目覚めた後で思い返したら、知性のかけらも感じさせないような動物でした。