日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第230夜 襖の隙間から その2

続きです。

そこで3人でネットにアップした画像を点検してみた。
襖が少し開いていて、押入れの中に片目が見えている。
「別に撮った通りだよな。目だけだから男か女かは分からないだろ」
ここでAが気づく。
「ほら。上の段にも暗い影が見えている。これって長い髪の女じゃね?」
「ホントだ」
「勘弁してよ」
でも、十秒後にオレは真相を発見した。
「この画像。書き換えられてねえか」
よく見ると、オレが撮った画像と少し違っていた。
元の画像を拡大して並べ、比べて見た。

「おお。画像を直してある」
なるほど。これをアップしたのは〇〇〇のサイトだから、侵入はそれほど難しくない。
画像に手を加えた上で、元の記事をまるごと書き換えたわけか。
「スゴイね。わずか1時間かそこらでこれくらいの操作が出来るなんて」
「ウソの心霊写真を撮ったら、偶然そこに霊が映っていたなんて、ありきたりな怪談だろ」
「普通の閲覧者ならありきたりだが、最初のを撮ったおれらにとっては、かなり気持ち悪い」
これを直したヤツは、オレたちの悪戯に乗っかって、悪戯を「2段組み」にしたわけだ。

「動画にも手を加えてあるのかな」
「見てみよう」
動画を開いて見ると、こちらは別段何の変化も無かった。
「さすがに、アップしてからこの短時間では、動画の加工は無理か」
「目だけ見ると、お前でも少しハンサムに見える」
「惚れたか?残念だがオレにはそういう趣味は無い」
「バカやろ」
やはりアナログで仕立てて方が、修正画像より本物らしく見える。
なかなか怖そうな絵になっていた。

しかし、動画は4分で終わるはずだったのだが、まだ続きがあった。
襖から幽霊役が出て来て、首尾について話している。
「何だ。スイッチ切ってなかったのか」
「ネタをバラしてんじゃん」
動画の方では、そのまま少し雑談しながら、廊下の側の襖を開いている。
部屋と廊下は襖1枚で、この建物はかなり古いつくりだ。
廊下の向こうはガラス窓で、裏の山々が見える。

ちょうど夕ご飯時で、奥の広間で宴会が始まっているようだ。
その音がざわざわとビデオに入っていた。
次に廊下を歩く音がして、仲居さんがお銚子を奥の部屋に運んで行った。
襖の開く音。
開いた襖の間から、酔客の声が漏れてくる。
「待ってました。どんどんお酒を持ってきてね」
「今晩はトコトン飲むぞ~」
ここで、録画は終わっていた。

これを見終わったオレたち3人は、いずれも顔面蒼白となっていた。
「おい。あの貧乏旅館でオレたちの他に客なんか泊まっていたっけか」
「あの仲居も30台前半だよな。あれくらいの齢恰好の人を一度でも見掛けたか」
「記憶にない。爺婆ばかりだったな」
この動画にはコメントが付けられていた。
「うわ~。本当だったんだね。この旅館」
「噂には聞いていたけど、本当にあったとは」
「動画で撮れたのはスゴイぞ」

オレたちが泊まった古い旅館は「幽霊が宴会をする旅館」として有名な場所だったらしい。
この旅館で写真を撮ると、時々あの仲居が顔を出すとのことだ。
もちろん、生きている人ではない。

ここで覚醒。

旅館に泊まったら、「他に泊り客がいないはずなのに、奥座敷では宴会をやっていた」という経験が実際にあります。
その時の夢をたまに見るのですが、これは体験をそのままなぞる夢ではなく、少しかたちを変えてありました。
文章にすると、やはり月並みな話ですが、当事者にとっては、仲居さんが歩く時の衣擦れの音さえ聞こえるリアルさです。

あの宴会の主たちは、今でも酒を飲んでいるのでしょうか。
おそらく旅館は無くなっていると思いますが、あの場所が無くなったら一体どこに行くのでしょうか。
私のような体験者の記憶の中に生き続けるしか他に道はなさそう。
だから、こうやっていつまでも夢に出続けるのかも知れません。