日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第242夜 マッサージ

日曜の朝方に見た短い夢です。

気がつくと、ベッドの前に立っている。
ベッドの上に横になっているのは父だ。

「なんだか、手や足の先が冷たい」
父はぶるぶる震えている。

父の表情は実際よりも、5、6歳は老けて見える。
頭の中で、「父は死出の旅に出ようとしているのだ」という声が聞こえる。

「オヤジ。足をさすってやろう。少し暖かくなるだろ」
上布団の下に手を入れ、足に触れると、父の言葉の通り、本当に冷たくなっている。
「氷のよう」とはこのことだ。

足首から膝までをゆっくり擦る。
父は重度の糖尿病で、足先の感覚は鈍いはずだ。
ゴシゴシと擦っているうちに、体温が戻って来る。
しかし、糖尿病患者は、実際の体温よりも冷たく感じるものだ。
「いくらか良くなった?」
父は首を振り、「まだ寒い」と言う。

ベッドに腰を掛け、父の脛を丁寧に擦る。
そうしているうちに、父の顔に赤みが差してくる。
「ああ。だいぶ楽になってきた」
良かった。

父は小さな商店の主で、ずっと働きづめの人生を送ってきた。
朝から夜遅くまで休みなく働いていたので、昼食と夕食の後に、落ちるように居眠りをした。
どんな季節でも、台所の板間でごろ寝をしていた。
隣の居間には長椅子があるのだが、疲労のせいでそこまでたどり着けなかったのだ。

母は長い間病院に入っており、家にはいなかった。
父は必死で働いて、子どもたちを男でひとつで育てたのだ。

しかし、息子のオレの方は、親の眼が届かないのをいいことに放蕩三昧だった。
「スマン。オヤジ」
父の脛を摩りながら、あれこれ昔のことを思い出す。
どれもこれも、後悔にまみれている。

「オヤジ。オレもなんとか頑張って、せめてオヤジより先に死なないようにするよ」
丁寧に父の脚を摩り続ける。

ここで覚醒。

かつての父と同じように、居間の床で眠り込んでしまうことが多いのですが、状況はまるで違います(苦笑)。
先日、父の見舞いで郷里を訪れたのですが、老いた父を目前にして感じたことが夢に出たのだろうと思います。
何せ、こちらも重い持病のある身ですので、「父より先に死なないように」は本音です。