◎起き掛けに観る妄想
半覚醒状態の「寝ぼけ頭」では、現実には存在しないものを見聞きする。
おそらく脳の回路があちこち塞がっているためだと思う。
夕食の後、居間で寝入ってしまい、先程目覚めたのだ。
薄らぼんやりした頭で台所のカウンターを見ると、誰かがそこに立っていた。
頬かむりをしたオヤジだ。
まるで故志村さんの番組に出ている時のウエシマ(ダチョウ)って人の風体だ。安来節を踊る時みたいに、顔には少し白粉を塗っている。
そのオヤジが何やら鼻歌を歌いながら、下を向いて何かをしていた。ま、台所だから「料理」と言うこと。
「こりゃ典型的な妄想だよな」と思いつつ、そのまま見入ってしまった。一分以上は見ていたと思う。
もの凄くリアルで、まるで現実にそこにいるようなのだが、状況的にアリエネーから、瞬時に「妄想だ」と判断できる。
これがごく普通のシチュエーションなら、少し判断に困ると思う。
心神耗弱状態になると、こういうのが増えて行くようだ。
死期の迫った者は妄想と現実の区別がつかなくなる。
ほんの小さな血豆が翌日には足の裏半分になり、紫色に腫れ上がるくらいだから、基礎体力も抵抗力も落ちている。
郷里の高齢者で数々の話を聞いたが、しかし、私はその状態になってからが割と長い。