日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第292夜 殺人の依頼

昨日は体調がイマイチ。
何もしないのに疲れてしまい、夕食後すぐに寝入ってしまいました。
これは目が醒める直前に観ていた夢です。

オレは殺し屋だ。
生業として行っているのではなく、道楽でこれをやっている。
資産があり、年中、旅行しているので、オレが殺人犯だとはだれも考えない。
その逆を突いて、今の道楽を始めたのだ。
オレの手口はかなりシンプルで、大体は銃で眉間を一発撃つ方法だ。
銃の好みも、昔のドイツ軍が使っていたモーゼルのみを使う。

いつも同じやり方でバレやすいようだが、オレが殺人を実行するのは概ね国外だ。
欧米では人種を特定されやすいので、人の間に紛れ込みやすいアジアが主戦場だ。

この日の依頼は、高級マンションだった。
ある部屋を訪問し、その部屋の中にいる者を全部殺す、という内容だ。
オレは贈り物の箱を持ち、マンションを訪れた。
月並みな手法のようだが、「配達」は世界中で最も、チェックされにくい手段だ。
ま、今日みたいな高級マンションだと、監視カメラがあるのが普通だから、オレみたいに殺す相手と接点を持たない実行犯が必要になるわけだ。

ピンポーンと呼び鈴を押す。
おそらく中の者はオレの姿を確認しているはずだ。
オレは箱を抱えているが、その中身は銃だ。
箱の後ろには穴が開いており、オレはそこから手を入れて、相手が箱を受け取ろうとした瞬間にぶっ放す。
このやり方だと廊下のカメラでは犯行の瞬間をとらえにくい。

ドアが開いた。
顔を出したのは女だった。
「あ」
お互いに声を漏らした。
その女は、オレが昔付き合っていた女だった。
「なんでこんな所にいる」
「ここは海岸のリゾートだもの。金持ちの定番よ」
なるほど。ダンナは資産家で、金に不自由はしていない筈だ。高額な報酬を貰うオレに、妻の殺害を頼めるくらいだもの。
「何しにここに来たの?」
「うん。お前を殺しに来たんだよ」
「はは。じゃあ、中に入って」
案内されて、部屋の中に入る。
「良い部屋だね。ダンナと一緒に暮らしているのか」
「ダンナは滅多に来ないよ。都心に事務所があるから、そっちのマンションにいる」
「1人じゃ退屈だろ」
「そうでもないわね。ダイビングが趣味だし」
変わらないな。オレと付き合っていたのは十年前だが、大して齢を取っていない。

オレは思わず呟いていた。
「どうしようかな」
これに女が反応する。
「何を悩んでるの?それに本当は何しに私のところに来たの」
「だから、さっき言った通りだよ。人に頼まれてお前を殺しに来たんだよ」
女が頷く。
「ダンナだね。新しい女が出来たんだ。それで」
「そんな簡単な話なのか。サスペンスドラマでも見当たらないくらいの単純な話だぞ」
「うちのダンナは商売が上手だけど、エロオヤジだからね。私が死ねば高額な保険金が入るし、新しい女か男がここに入るだけの違いだけだ」
「新しい女か男か」
「そう。両方とも好きなのよ」

「オレのやれることは限られてる。お前を殺すか、殺さないかだ。お前を殺さないと、今度はオレが殺されるので、先回りしてお前のダンナを殺しに行く必要があるな」
「そう。じゃあ、とりあえずエッチしてから決めれば?」
「そうだね」
女がパパッと服を脱ぐ。
「十年ぶりだと言うのに、あっさりしたもんだね」
「お腹が空いてる時には、まずはお腹に入れることが先よ。ゆっくり味わうのはその後で良い」
相変わらずだな。
このサッパり感が物足りずに、オレはこの女と別れ、別の女のところに行った。コイツとは逆に嫉妬深いヤツだったから、すぐに別れたがな。

淡泊だが、相手のツボは知っている。
自転車に乗るのと一緒で、一度覚えたら、そうそう忘れるもんじゃない。
ことを済ませると、オレは起き上がって煙草を吸った。
「やっぱりお前とエッチしたのは不味かったな。殺す気が無くなったもの」
「そりゃそうでしょ。私だって、むざむざダンナに殺されるのは嫌よ」
「じゃあ、すぐにダンナのところに行って、そっちを殺さないとね」
「うん。じゃあ私も一緒に行く」
「よし。まず先にやることがあるけどね」

オレは部屋を出て、マンションの玄関に向かった。
道の向こう側に車が停まっていたので、そっちに向かって顎をしゃくった。
コイツは監視役で、オレが依頼通りに相手を殺したかを確かめるのが仕事だ。
オレは通りを歩き、路地を曲がって、マンションの後ろに回った。
こっちには非常口があるので、そこからもう一度中に入り、あの部屋に戻った。
すると、女が監視役に銃を向けていた。
オレはオレの銃を女に渡していたのだ

男の後ろから声を掛ける。
「どれ。床に伏せろ」
男を床に腹ばいにさせると、オレは女から銃を受け取った。
「枕を持ってきて」
腹這いの男が絶望的な表情に変わった。
オレは女から枕を受け取り、それを男の頭に当てて銃を2度撃った。

それから、オレは女と一緒にマンションを出た。
駐車場に行くと、女の車はどでかいアメ車だった。
「なんでまたこういうのに乗ってるんだよ」
「ドイツや日本の車だと盗まれるからね」
「どこに行くにも不便だろ。それにこれじゃあ、目だってしょうがない」
ま、仕方ない。

その車で、都心のホテルに向かった。
女のダンナはそこにいる筈だ。
2ブロック前の通りに車を置き、オレたちはそのホテルまで歩いて行った。
せいぜい中級の上レベルで、金持ちが使うようなホテルではなかった。
「ダンナは小金を持っているのに、何でこんなところに」
「ここはホラ。相手を探すところだもの」
1階の奥にはバーがあり、飾り窓まで付いていた。
窓の奥には若い女が沢山座って、客を待っている。

プ-ルもあるが、やはりここにも若い女と男が並んでいる。
中に中高年のオヤジがチラホラ混じっているが、金を払うのはこいつらで、回りは皆買われる側だ。
オレを雇った男はプ-ルサイドに寝そべっていた。
女が指を差す。
「あれがうちのダンナよ」
「ふうん。じゃあ、お前はここを出て、別のホテルで待ってな。終わったらそっちに行く」
「セントラルで良い?」
「了解」

オレはプールサイドのバーカウンターに座って、ターゲットの様子を見張った。
案の定、男は自分の相手を連れ、エレベーターの方に歩き出した。
若い男の肩を抱いている。
「両刀使いだって言ってたな」
オレは一緒のエレベーターに乗り込んで、2人について行った。
依頼者の方はオレの顔を知らないので、隣に立っても平気だ。

男たちが部屋の鍵を差しこんだ。
オレはその瞬間に後ろから声を掛けた。
「落し物ですよ」
2人が振り返って、オレが手に持った銃を見た。
オレが顎で示すと、2人が部屋の中に入る。

「ゆっくり中央に進め」
そう言うと、オレはすぐに後ろから2人の後頭部を撃った。
消音器を付けているが、やはり振動が響く。

部屋のドアを閉め、オレは外に出た。
いちいち思い入れをせず、迅速に行動すると、他の者はほとんど気づかない。
オレはこの日のうちにこの国を出て、もはや2度とここに戻って来ることは無い。
女もいずれ後でオレの許に来るだろう。
「ま、こんなもんだよ。ごくありきたりな展開だけどね」

ここで覚醒。