日刊早坂ノボル新聞

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◎夢の話 第568夜 故郷への帰還

◎夢の話 第568夜 故郷への帰還
 28日の午前2時に観た夢です。

 南北戦争が終わり、オレは故郷に戻って来た。
 オレの家は町外れにある牧場なので、家族に土産を買うために、町に立ち寄った。
 家までは20キロで、日頃から通い慣れた町だ。
 町に入ると、しかし、見慣れる者ばかりだ。
 商店には何も置かれておらず、荒らされている。
 人相の良くない男たちばかりがたむろしており、年寄りや女子どもが見当たらない。

 そこでオレは、馴染みの酒場に入ってみた。
 ここはバーサン一人が切り盛りする店で、オレはそのバーサンが気に入っていた。
 カウンターに向かうと、そこにも見知らぬオヤジが入っていた。
 「ヘレンさんはどうしたの?」
 「ヘレンだと?知らんね」
 「何時からここで営業してるの?」
 「3ヶ月前に買い取ったんだよ」
 「町の人が見当たらないが、どこに行ったんだい?」
 「知らんね。私はここを買わないかと持ちかけられてこの町に来たけれど、その時と同じだよ」
 にべもない返事だ。

 仕方ない。
 オレは家に帰ることにした。
 町を出ようとすると、馬屋の後ろに爺さんが一人座っていた。
 この町に戻り、初めて前の住人に出会った。
 「おい。爺さん。ここは一体どうなったんだ」
 爺さんが顔を上げた。
 「襲われたんだよ。戦争で男たちが出ているところに、盗賊団が入って来た。町の者が立ち向かったが、皆殺されてしまった。わしは元々、足が悪くてここにいたが、殺されずに済んだとはいえ、今は奴隷のような扱いを受けておる」
 「女たちは?」
「大半は子どもを連れて逃げた。逃げ遅れた者は犯されて、娼館に売られた」
 ここから逃げるとなると、ちょうどオレの牧場がある辺りで、山地の中だろう。
 「そうか。分かった」
 そうとなれば、まずは妻子の無事を確かめねば。

 オレは町を出て、自分の家に向かった。
 途中で、オレと同じ帰還兵5人に出会ったから、そいつらに町の現状を伝えた。
 「町を取り返さなくてはな」
 「まずは体制を立て直そう。相手は何人だ?」
「ざっと30人。あと、後から入って来た奴らが20人近くいるが、そいつらがどっちに転ぶかは分からん。まずはオレの牧場に行き、そこで作戦会議だな」

 オレの家に着くと、家の中には、男が一人いた。
 オレはそ知らぬ顔で、訪問者のふりをした。
 「ジェームズさんの家はここかい?」
 ジェームズとはオレの名だ。
 男が疑い深そうな眼でオレを凝視する。
 「ここは俺の牧場だよ。ジェームズなんてヤツは知らない」
 「奥さんと男の子が住んでいたはずだが」
 「知らんね。ここを売って、どこかに行ったんだろ」
 「そうか。教えてくれてどうも有り難う」
 礼を言って、オレは男に背中を向けた。
 二三歩歩いたところで、もう一度振り返る。
 「ところで」
 オレは銃を引き抜き、いきなり男を撃った。
 弾は男の大腿に当たり、どくどくと血が噴出す。

 「お前。オレの女房と子どもを殺したのか」
 男の両眼が丸くなる。
 そこで、オレはゆっくりとナイフを抜いた。
 「出血で死ぬか、耳を削がれ、目をえぐり出されて死ぬか。お前はどっちを選ぶ?」
 男が首を振る。
 「止めてくれ。あんたの奥さんたちは生きている。俺たちがここを襲いに来た時、ここの者はすぐに逃げたんだよ」
 「どこに逃げた」
 「山の方だよ」
 「町の者も一緒か?」
 「逃げたのは20人くらいだ。あとは盗賊に殺された」
 まるで他人事のような言い方だ。
 「お前の仲間じゃないのか」
 「俺は無理やり連れて来られたんだよ。シェリフに」
 「シェリフだと?保安官が首領なのか」
 「いや。通称だ」
 なんだか映画みたいな筋だ。きっとそのシェリフってのは、ジーン・ハックマンみたいな顔をしてるんだろうな。

 「そっか。大体、状況は分かった。今、町に居るのは、ほとんどがシェリフの手下なんだな」
 「まあ、そうだ。自ら付いて来たか、連れて来られたかだ」
 「悪人たちだな」
 「そう」
 オレはここで自分のナイフを男の首に突き立てた。
 男は声も出さず、息絶えた。

 オレの後ろで、帰還兵の一人が声を掛けて来た。
 「やっつける?」
 「皆殺しだろ。先の30人も、あとの20人も一緒だ」
 オレはここで死体を引きずって、家の外に出した。
 「どうすんの?」
 オレは再びナイフを出した。
 「手足をばらして、馬で町に戻してやる」
 菰の中に入れ、送り届けてやるのだ。
 「盗賊だか何だか知らないが、オレたちが経験したことを味あわせてやる」
 帰還兵たちが一斉に笑う。
 「そりゃいいや。あいつらは俺たちがどんな戦争を戦って来たか、露ほども知るまい」

 4年間に及ぶ戦争は、本当に酷いものだった。
 南軍北軍双方で、少なくとも70万人が死んだ。
 戦場では、手当たり次第に敵兵を殺し、捕虜も取らなかった。
 降伏した者もその場で殺した。
 通り掛った町の者を殺し、財産を奪った。
 目の前に立てば、それが女でも子どもでも殺した。
 それが戦争だ。
 オレ自身、敵を40人は殺している。民間人だって何人も殺した。
 「今さら30、40殺したところで、どうということもない」
 帰還兵たちが頷く。
 
 何気なく上を見上げると、空はあきれるほど真っ青だった。
 「きれいな空だよな」
 そう言えば、これと同じような空を、前にも見たような気がする。
 何時だっけな。
 「ああそうだ。あれは大阪だ」
 それほど昔ではない。今から30年くらい前の話だ。
 オレは一揆の首謀者の護衛役で、かつ悪徳商人や侍の首切り役だった。
 
 「あの時も、随分と人の首を切り落としたっけな」
 確か頭領の名は、「大塩」って言ったっけな。

 ここで覚醒。

 何度生まれ替わっても、一揆や反乱の首謀者グループの一員で、悪人を殺しては、次は修験僧になり殺した人の供養をする。
 そんな夢でした。
 この手の夢は頻繁に観るので、ほとほと閉口しています。

 南北戦争は、映画やドラマの中では悲惨なシーンが出て来ませんが、実際は「殺戮」に近い状況だったらしいです。ひと度交戦したら、敵のことは皆殺しにした、とのこと。
 現代人は「奴隷解放」などという、少数の単語でしか知りません。