日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第406夜 穴

木曜の午後、少し仮眠を取った時に観た夢です。

東京のオフィス街のど真ん中の道路に、大きな穴が開いた。
直径は20短擁?△蝓底は真っ暗で見えないが、かなり深い。
オレはたまたま近くを通り掛かったのだが、ぎりぎり穴に落ちずに済み、助かった。

「そう言えば、昔、高架橋の下の道路が陥没したことがあったよな。上野か秋葉原で」
あの時は、車が穴に落ちて怪我人が出たんだったな。
まあ、韓国や中国じゃ、まともに地面が陥没して、人が吸い込まれたりしたから、それよりははるかにましだ。

オレはそのまま道を迂回して家に向かうことにした。
すると、あろうことか、オレの家のある埼玉の田舎町でも、同じような穴が出来ていた。
こっちは直径が30辰呂△蹐Δという大穴だった。
沢山の人が集まって、穴の底を見ている。

「どのくらい深いんだろ」
「これって、地下鉄の掘削の影響じゃあないですよね。埼玉の西部に地下鉄なんか無いもの」
本当だな。
水道管はこんなに深いところにはないし、一体どうしてこんな穴が出来たんだろ。

道路が通行止めになってしまったので、オレは仕方なく歩いて家に帰った。
その途中でも、あちこちに穴が出来ている。
建物の真下に穴が出来たところもあり、所々で家が崩れていた。
救急車のサイレンの音がわんわん鳴っているのは、このせいだった。

あまりにも酷い有りさまに、オレは思わずため息を吐いた。
「何だよ、これは。まるでこの世の終わりみたいじゃないか」
すると、前を歩いている男が後ろを振り返って、オレを見た。
「その通り。これはこの世の終わりが来たことを示している。黙示録の通りのことが起きるのだ」
え?黙示録だって。

「まさか。貴方はこの穴が地獄に通じる穴だと言いたいのですか?」
男が頷く。
「そうだよ。この穴の奥は底が見えないほど深い。ここから地獄の亡者たちがこの世に這い出て来るのだ」
さすがにドキッとする。
実際、いくら穴の奥を覗いても真っ暗で、底がまったく見えないくらい深いのだから。
試しに石を投げてみたが、石が底に当たる音がまったくしなかった。
男は何かに取りつかれたような表情で声を張り上げた。
「これから、地獄の亡者たちが外に出る。この世と地獄との境目が無くなるのだ」

オレは怖ろしくなり、すぐに家に戻った。
途中で、有り金全部で食料を買い込んで、気たるべき異変に備えようとした。
まあ、ささやかな抵抗に過ぎないのだが。

ところが、それから何日経っても、地獄の亡者も鬼も現れなかった。
馬に跨った騎士たちも現れない。
この世の終わりを告げるラッパも鳴り響かない。

「何だよ。何も起きないじゃないか」
オレはもう一度、近所の穴を見に行った。
やはり、別段、前と変わったところは無かった。
穴の前には、前の時にいたのと同じ男が立っていた。
「ねえ。何も起きないじゃないか」
男がオレのことを直視する。
「いや。間違いなく、今はこの世の終わりが来ている。すぐに恐ろしいことが起きるのだ」
ちぇ。まだ言ってやがる。

「このウソツキ野郎」
オレは家から持参したスコップで、その男の脳天をかち割った。
周囲を見回すと、あちらこちらで包丁やナイフを持った男たちが争っていた。
女たちが小さい子どもを追いかけ回して、殴りつけていた。

オレは車に戻って、ラジオのスイッチを入れた。
すると、スピーカーから臨時放送が流れ出した。
この国の総理大臣が演説をしているのだ。
「この穴は某国の陰謀により生じたものです。我が国はこの国に宣戦を布告し、先制攻撃を行います。既に核ミサイルを30発発射しました」

オレはここで我に返った。
「何てこった。これこそ地獄じゃないか」
オレはすぐに、今起こっている事態に気が付いた。

「なるほど。地獄の亡者や鬼は肉体を持っていない。それなら、形となってこの世に現れるのではなく、人の心の中に入り込んで、悪意を撒き散らすのだ」
人の心に悪意を吹き込み、互いに殺し合わせる。
これがすなわち、「この世の終わり」なのだった。

ここで覚醒。