日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第351夜 サバイバル

金曜の朝に、子どもたちを送り出した後、小一時間ほど眠りました。
その時に観た夢です。

オレは30歳くらい。
ある競技会に出ることになった。
場所は南アフリカのクルーガー国立公園の近くだ。
競技の種目は、「サバイバル」だ。

5キロ四方の柵の中で、丸3日間を過ごす。
その間、生きていられれば、それが勝ちだ。
参加者は30人で、賞金は10億円を勝利者で配分する。
全員が生き残れば大したことは無いが、1人だけなら10億円になる。
もちろん、これを勝ち抜くのはしんどい。
柵の中に、飢えた野獣が120頭放されるからだ。
ライオンやハイエナ、チーターやヒョウもいる。

5キロ四方なんて、野獣たちにとっては庭の広さだ。
樹の上ならライオンは届かないが、ヒョウは簡単に登って来る。

会場の中央くらいに水場があるが、ほとんどの野獣たちがこの近くにいるだろう。
なにせ平均気温は38℃だし、水なしで過ごせるのは1日だけだ。
水を飲みに、水場に行けば、そこでがぶっとやられる。
大体、その水場にはワニだっている。

参加者がどうやって生き残るのか。
それをカメラがずっと追い続ける。
何せ100台くらいのカメラが取り囲んでいるので、どこに居ても映ってしまう。
要するに、人が食われるところを中継しようというのが、このサバイバルの目的だ。
その様子はネットで配信され、運営側には莫大な広告料が入る。
こういうことを考えるのは、やはり某大国の金持ちで、さらにその番組に広告を出すのは、その提灯持ちのような隣国の企業だ。
考えることに品が無いが、ゼニ儲けだけには敏感だ。

リスクはかなり高いのだが、賞金は概ね億の桁になる。
世界中から、「切羽詰ったヤツ」が集まった。
予選には600人来たのだが、そこで殴り合いをやって、残っていた30人が本戦に出場することになった。
カメラに映されている時間が長ければ、後で特別ボーナスが出る。
野獣と戦ったり、参加者同士でラヴロマンスを演じてもOKだ。
こっちは視聴者の投票で決まるが、まあ、生きていてこそナンボの話だろう。

なんだか、ハリウッドの作るB級映画みたいなシナリオになっている。
「こういうのには、一段裏があることが多いから気を付けないとな」
適当なところで「全員死亡」てな事態になれば、主催者は大喜びだしな。
オレは念のため、仲間を本部の近くに配置させておいた。
変な動きがあれば、偉そうなヤツを「ぶち殺せ」と言ってある。

会場の入り口で、500ミリの水のペットボトル1つを渡された。
武器は何もない。
これだけで3日間を生き抜かねばならないわけだ。
中に入って、自分なりの居場所を探すが、2時間後には野獣が放たれるので、作戦を考えなければならない。

皆で用心しいしい中に進むが、岩山に行くものあり、藪に隠れようとする者ありと様々だ。
だが、オレには事前に考えていたプランがあった。
回りに2人しかいなくなったところで、まずはその1人を殺した。
死体から服を剥ぎ、周りから見えやすいところにそれを置いた。
こうすると、ひとまず猛獣の餌が出来るし、そいつの水を手に入れられる。
この辺は非情だが、多かれ少なかれ、皆同じことを考えていただろう。
第一、生き残るためには「何をやっても良い」という規則を知らされたところで、誰でもそれに気づく。
野獣対策よりも、まずは水の手配だ。

あと1時間ある。
そこで、別の場所に行くことにした。
途中で、ライオンの糞を見つけたので、殺したヤツの服でそれを包んで持って行くことにした。
1キロ東に行くと、岩山の上に女がいた。
木の先を岩で削って尖らせて、槍にしている。
10メートルくらいの高さの岩の頂上に陣取り、槍で野獣を追い払うつもりなのだ。
さすが、女は律儀だ。
真面目に野獣と戦おうとしていた。

オレはその女に声を掛けた。
「おい。水をやるよ。1本じゃ到底足りない。君にも必要だろ」
手持ちのペットボトルを2本とも地面に置いて、オレは遠ざかった。
「良いの?」
「ああ。まだ隠してあるんだ。協力して、何とか生き残って、賞金を勝ち取ろう。それには自分1人だけじゃなく、パートナーが必要だ」
女は用心しいしい、ペットボトルに近づく。
これで岩山から20メートルは離れてしまった。
オレは10センチくらいの岩を2つ隠し持っていたので、女がペットボトルの水を飲む瞬間を狙って、放り投げた。
オレは十種競技の選手だったので、これは得意な分野だ。
見事、その岩は女の頭に命中した。
そこでオレはすぐに女に走り寄り、息の根を止めた。

これで水は3本。
これならなんとか水場に行かずとも済む。
競技開始までの時間はあと15分だ。
オレは岩場を出て、ブッシュの外れの林に向かった。
ここには、ライオンが登って来れないような大きな樹木がある。
手ごろな樹を見つけると、オレはその樹の幹に、ライオンの糞を擦り付けた。
こうして置けば、ヒョウが登って来ないからだ。
うまい具合に、樹の上の方は葉っぱで覆われていて、姿をも隠すことが出来る。
念のため、オレは自分の体にもライオンの糞を塗りたくった。

さすがに3日間はしんどかった。
大半の参加者は、野獣に食われてしまった。
百頭の野獣に、30人分近くの肉を与えれば、まあ2、3日は襲って来なくなる。
腹が満ちていれば、そいつらに不用意に近づかない限り、こっちは大丈夫だろう。

残り1時間の所で、オレは樹から降り、ゴール地点に向かった。
時計が無いので、正確な時間は分からないが、30分と違ってはいない筈だ。
ゴールゲートは開いていたが、まだ主催者側の支度は出来ていないようだった。
ゲートのすぐ裏には、ホテルがある。

ここは開始の前日にも宿泊したホテルだった。
そのホテルに入って行こうとすると、ガードマンが横を指差した。
そっちにはシャワールームが設置されていた。
汗を流せということだろう。
確かに、オレの体は半端ない異臭を放っている。

中に入って行くと、トイレとシャワーが3つずつあった。
急ごしらえの筈だが、個室もきちんと作ってある。
しかし、シャワーの蛇口を捻っても、1箇所しか水が出なかった。
「何だよ。こんなんなら最初からホテルの部屋の方に通せよな」

すると、外から人が入って来た。
生き残っていた参加者だ。
「ありゃ。こいつは」
確か、「イ・何とか」という隣の国の俳優だ。
こんなヤツも参加していたのか。
ちょっと考えさせられたが、理由はすぐに分かった。
K国では、今、中東に派兵している。
現実に激しい戦闘を繰り広げており、沢山の兵たちが命を落としているのだ。
競技会のスポンサーはこの国の企業で、この競技に参加すると、兵役は免除になる。
戦争で死ねば賞金は貰えないが、こっちは成功すればかなり貰える。
もちろん、スポンサーとの裏取引だってあるのだろう。
コイツはカメラの前で、散々、演技をしていた筈だ。

男は入って来るなり、オレに向かってごちゃごちゃと何かを言った。
言葉が分からなくとも、言いたいことは分かる。
「先にシャワーを使わせろ」ということだ。
オレは腹の調子が悪く、先にトイレに行きたかったので、「勝手にしろ」とシャワーの方を指差した。

トイレに入ると、扉の鍵が壊れていた。
閉めようとしても、半開きになってしまう。
「ま、いいか」
15センチくらい開いたままにして、とりあえず便座に座る。
「今、何時なんだろ」
回りの様子からすると、まだ時間は来ていないのだな。
その割にはゲートが開いていたが・・・。

嫌な感じがする。
オレは便座の上で胡坐をかいた。これは物を考える時にオレがよくやる仕草だ。

すると、また外から人が入って来た。
2人くらいの足音だ。
どうやら掃除の女みたいな風情で、べちゃべちゃと話をしている。
主催者の国の言葉だった。
女たちはそのまま奥に進み、シャワーを浴びている「イ・何とか」に近づいた。
「ずん。ずん」と音がする。

「ぎゃあ!」
男の悲鳴が響いた。
女たちは刀のようなもので、男の背中を突き刺したのだ。
なるほどな。
主催者はどうやっても、参加者に賞金をやらんつもりらしい。
まだ時間前で、刻限が来る前に死んだら、いずれにせよアウトだ。
参加者が死ぬ理由は、野獣だけとは限らない。
天井を向くと、やっぱりここでもカメラが回っていた。

不味いぞ。次はオレの番だ。
トイレの個室の中には、何ひとつ武器が無い。
そのまま固まっていると、女の1人が何かを話しながら、個室の下の方を覗き込んでいる気配がした。
トイレは3つだけなので、すぐにオレの扉の前まで来た。

オレが動けずにいたら、その女たちはほんの少し下を覗いたかと思ったら、すぐに外に出て行った。
扉に15センチ隙間があったのと、オレが便座の上に足を載せていたので、「中に人はいない」と思い込んだのだ。

回りがしんと静まった。
これからどうするか思案していると、スピーカーからきれいな音楽が流れ始めた。
マーチみたいな曲だ。
「30、29、28・・・」
男の声でカウントダウンが告げられている。

ようやく刻限が来るんだな。
約束の刻限が来てしまったら、もう参加者を殺すわけにはいかんだろ。
「そうなると、もう外に出ても大丈夫だろう」
足を床に下ろし、ドアノブに手を掛ける。

だが、そこでまたオレは固まった。
「いや、待てよ。これも罠なんじゃないか」
扉を押そうとする手を止めて、再び、オレは考え始める。

ここで覚醒。