日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第304夜 寮の出来事

昼寝の時に観た短い夢です。

俺は学生寮の舎監をしている。
俺の学生寮はまだ出来たばかり。今年の春に1回生を迎えて、まだ半年だ。
だが、早くも問題が起きている。

学生寮と言っても、ここにいるのは専ら予備校生だ。
いわゆる浪人生なので、入試が次第に近づいて来たら、精神状態が不安定になる奴が現れ始めた。
具体的にどんなことをするかって?
まあ、人により様々だ。

ここは3階建てで、全部で3百人が入寮している。
建ったばかりなので、建物はきれいだが、案外安普請なので、壁がモルタル張りになっている。
このため、コンクリートの下地とモルタル壁の間に若干の隙間がある。
これはすなわち、強く叩くと、モルタル壁に穴が開くことを意味する。
予備校生は勉強が出来なかったのでここにいるわけだが、今どきの子なので体がデカい。
勉強がうまく進まず、1人が腹立ち紛れに壁を叩いたが、最初のひとつの穴が出来てみたら、すぐに50個の穴が出来た。
真似をするヤツが出て来たせいだ。
こいつらは本当にバカだ。
そうでなくとも、親が学費・寮費をたくさん払っているのに、寮が壊れたら修繕費を請求される。
犯人が特定できないので、頭割だ。
この辺はこちらのスタッフにも知恵の回る男がいて、申し込み書にきちんと書いてある。

「壁に穴」が終わると、またストレスのはけ口が無くなった。
数人は夜中になると、屋上で酒を飲んでいたのだが、これも俺たちが見つけキツく禁止した。
すると、今度は屋上で叫ぶヤツが出てきやがった。
夜の12時頃に屋上に上り、大声で叫ぶのだ。
「わああああああ!」
寮で勉強している学生も迷惑だが、近所からも苦情が来る。

このせいで、夜中の見回りも頻繁に行わねばならなくなった。
この寮では、夜の9時からは、外出はおろか部屋を出てはいけない決まりだ。
もちろん、トイレは別だ。

閉じ込め方式で寮生を大人しくさせようとしたわけだが、次は都市伝説が始まった。
この寮の中に「幽霊が出る」と言うのだ。
一人が言い始めたら、五人十人が「オレも見た」と言うようになった。
まったく。集団ヒステリーかよ。

そこで俺は寮生の何人かに話を聞いた。
いったい、どんな幽霊だと言うのか。
奴らが語ったのはこんな話だった。

この寮は小山の半分を崩して建てられた。
しかし、この寮のあった斜面には、元々お墓があった。
お墓を壊して寮を作ったので、仏様が怒っている。
寮生を追い出そうと、夜の2時になると廊下をさ迷い歩く。
こんな内容だった。
こりゃ本当に都市伝説らしい筋だ。

しかし、一応は真偽を調べ、「そんな事実はない」と説明する必要がある。
俺は本部に照会して、この寮の成り立ちを尋ねた。
すると、なんと寮生の話は事実だった。
寮は墓地を移転して、空いたスペースに建てられたのだ。
元は寺と墓地があったが、寺が郊外に移転して、墓地もそっちに行った。
「ちゃんとご供養しましたから問題ありませんよ」
担当者はそう言った。

次の日、俺が寮の後ろに回ってみると、小山の半分はまだ墓地だった。
しかも、寮の建物からほんの5メートルで、最初の墓に接している。
窓を開き、この光景を見た寮生が、こういうストーリーを考えたのだろう。

一度始まると、こういう集団ヒステリーは、なかなか終わらない。
きちんと、状況を話し、「供養してあるから問題ない」と伝えても、やはり週に1度は「出た」と駆け込んで来る。
そこで、俺はしばらくの間、俺自身が寮に常駐し、「何か異変が起きたら、その場でオレに伝えろ」と皆に言った。
大人が出て行って、問題を解決すれば、落ち着くはずだ。
俺が一緒にその場を確かめ、「何ともないじゃないか」と安心させればよいのだ。

「あああ」
夜中の2時に苦しげな声が響く。
こう言って来るのは、大体、部屋番号が決まっていた。
うっすらと想像がついたが、おそらくあの部屋の寮生だろう。
俺は唸り声を複数回聞いた寮生に対し、「もし聞こえたらすぐに連絡しろ」と指示した。

そしたら、早速、次の夜にインタフォンが鳴った。
「今聞こえてます」
やはり俺が当たりを付けていた3階の部屋の近くだった。
俺はすぐにその部屋に急行して、ドアをノックした。
その部屋の寮生が扉を開くと、ベッドの脇にエロ本が見えた。
「なあんだ」
そいつはそのエロ本を見ながら、自慰行為を行っていたわけだ。
「おい。程々にしろよ。それと変な声を出すんじゃない」
これで一件落着だ。

俺はインタフォンで連絡をしてきた周辺の寮生数人を呼んで、この説明をした。
「こういうことだから、安心して勉強して」
すると、その寮生たちが、一斉に首を振った。
「絶対に違います。だって、僕らが聞いているのは女の叫び声ですから」
夜中の2時に、女が3階の廊下を走り、走りながら「あああ。助けて」と叫ぶのだ。

この寮には3百人の寮生が寝起きしている。
だが、ここは男子寮で、女は一人もいないのだった。

ここで覚醒。

昔の実体験を別の角度から眺めた、という夢でした。