日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第305夜 再生

夕食の支度をした後、座って数分で寝入っていました。
その時に観た夢です。

目が醒めると、俺の前に白衣を着た男がいた。
どうやら医者だな。
「ああ。俺は今、夢の中にいる。なぜなら、ここから始まる夢はしょっちゅう観るからな」
そう頭の中で考えた。

医者はにこやかに笑っていた。
「私がわかりますか?ホンゴウさん」
「ホンゴウさん?」
医者が頷く。
「ああ。大丈夫なようですね。あなたはホンゴウさんではなく、別の人です」
なんだそりゃ。一体どういうことだよ。

「まず最初にお尋ねします。あなたは死ぬのと、厳しい条件ながら生き続けるのと、どっちを選びますか」
「は?」
酷い質問だ。死ぬか生きるかという質問なら、答えは決まっているだろ。
「そりゃ、生きる方を選びますよ。誰だってそうでしょ?」
医者はもう一度深く頷いた。
「そうですよね。ではまずこれにサインしてください」
医者が差し出した紙を見ると、そこには「私が生きるために必要な治療を総て受け入れます」と書いてあった。
「これに必ず署名しなけりゃならないのですか?」
「そうです。そうしないと先には進めません」
じゃあ、仕方ないよな。
だって、俺は自分が誰かすら思い出せない状況だもの。
それに、死ぬか生きるかなら、何度考えても答えは1つしかない。
俺は医者が差し出したペンを取り、紙にサインをした。

「ではご説明します」
医者が俺に向き直る。
「ひと月前、あなたは警察官でした。あなたはテロの警戒のため、この地域に来たのです。その時は3人でひと組のチームを組んでいました」
俺にはまったくその記憶が無かった。
「テロリストの標的はこの施設でした。彼らはここを爆破しようとしたのです。たまたま犯人たちが爆薬をセットしようとした時に、あなた方がそれを発見しました。そこで銃撃戦になり、あなた方は犯人たちを倒しました」
医者の話は、まるでサスペンス映画みたいな内容だった。
「ところが、爆発物の傍に近寄った時に、それが突然、爆発したのです。たまたま銃弾が当たったせいだでしょう。あなた方3人はその爆弾の周りにいたので、全員が吹き飛びました」
え?そんな筈は無いよな。俺はここにいるもの。

「でも先生。俺はこうやって生きています」
俺の問いに、医者は首を振った。
「バラバラに吹き飛んだのです。手も足も頭も取れていました」
「・・・」
「そこで私たちは、ひとつの決断をしました。3人の方はもはや各々では生きられません。何せバラバラになってますからね。でも、それぞれにまだ使える部分が残っていました」
うう。これはきっと嫌な流れだな。
「ここは先端医療の研究施設です。この国の最高峰です。そこで、我々は持てる技術を結集して、あなた方の使える部分を接合して、あなたを生存可能にしたのです」
「それは、もしかして、この俺の体に他のヤツの体の部分をくっつけたという意味ですか?」
しかし、またもや医者は首を振った。
「違います。3人が1人になったのです。右脳はあなたですが、左脳は別の人です。心臓を始め大半の臓器はもう1人の人の物でした」
おいおい。それじゃあ、俺は・・・。

「今、フランケンシュタインの怪物を思い浮かべたでしょうが、それは違います。正確にはあなたは死んではいない。もし例えるなら、ロボコップですね。警察官なんだし。でもま、繋がれたのが機械でなくて幸いです。少なくとも、この後も人間の扱いをしてもらえます」

この時、頭上の方から声が響きました。
「待て待て!ここでヤメロ!もったいないぞ」
こう叫んでいたのは、夢を観ていた私自身の意識です。
「こんな面白い話は滅多にないぞ。ここでヤメロ。これは絶対に小説に書かねば」

ここで無理やりに覚醒。

しかし、観るはずだった夢の続きは、頭の中に残っていました。
忘れぬように、すぐにメモを取り、起き上がってPCのところに走りました。
「こりゃ、書ける!」

ちなみに、3人を1人にしたので、医師たちは「俺」のことを、「ホンゴウ・タケシ」と仮称していました。医者の作った人造人間に仮面ライダーの名前を与えるとは、ブラックジョークが効いてます。
しかし、夢の内容はSFでもサスペンスでもなく、「3人分の思いをそれぞれの家族に伝えに行く」というシリアスな内容でした。