日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第957夜 「お前、大丈夫か?」

◎夢の話 第957夜 「お前、大丈夫か?」

 二十四日の午前三時に観た夢です。

 

 列車に乗ろうと駅に向かう。

 しかし、構内の入り口で立ち止まった。

 「でも、列車でどこに向かうつもりだったのだろう」と自問した。

 すぐに答えが浮かんだ。

 「家だね。俺は家に帰ろうとしていたのだ」

 ああ、よかった。

 この鉄道は、「この世」と「あの世」を結ぶ鉄道だ。

 家は「この世」でどこか知らぬ遠くの街が「あの世」だ。

 俺はいつもその中間にいるから、「列車に乗る」ところまでは行くが、「家」にも「遠くの街」にも行き着かないことが殆どだ。

 たまにいずれかに降りることもあるが、そこですぐに夢が終わってしまう。

 「遠くの街」で飲食をすると、もはやそこの住人になってしまうから、目の前に美味しそうな食べ物があっても、絶対に手を着けてはダメだ。

 「家」も「遠くの街」が偽装している場合があるから、信用してはダメだ。

目の前にどんな料理が出されても、絶対に食べてはならない。

 

 ともあれ、俺の特技は、頭のどこかが「目覚めたままでいられる」ことだ。

 だから自分が「夢の中にいる」ことを自覚できる。

 俺は今、夢の中にいるが、駅に向かっているから、生と死の中間の世界に入ろうとしている。でも向かうのは「家」だから、割と気が楽だ。あとは偽装にさえ気を付けていれば、旅を楽しむことが出来る。

 

 もう一度、歩き出し、券売機に近づいた。

 機械にお金を入れようとして、ふと隣を向くと、そっちの券売機の前に見知った顔があった。そこにいたのは男だ。

 先方の男も、こっちを向く。

 先方が「おお、Kじゃねーか」と声を上げた。

 「やっぱりお前だったか」

 久しぶりだ。この男と会うのは数十年ぶりになる。この男の名もイニシャルの頭はKだから、俺と同じ。とりあえずここではホンゴウ・タケシと役名を付けて置く。

 「どうしてた?」

 「まあナントカ。どうにかこうにかだね」

 さすがに年数が経っているから、『ロボコップ』のピーター・ウェラーの「昔と今」みたいな違いがある。(ちとややこしい言い回しだ。)

 それでも友達だから、昔の面影を思い出すのはさほど難しくない。

 

 「今は田舎に帰って、親の面倒を看ているのだが、たまたま用事があってここに来たんだよ」

 「ふうん」

 コイツ。今、「この駅に用事がある」って言ったのか。

 ここは現実には存在しない駅なのに、何の用事があるというのだろう。

 頭の中で思考がくるくる回り始める。

 脳の覚醒している領域が次第に広がって来た。

 その間、ホンゴウは何も言わずに俺のことをじっと見ていた。

 

 ここで俺は気付いた。

 「俺はコイツのことをほとんど忘れていた。接点がまるで無いから、思い出すこともない。すなわち、コイツが俺の夢に出て来たのは、コイツの事情によるってことだ」

 俺は顎で合図をして、ホンゴウを駅の構内から外に連れ出した。

 ホンゴウは黙って俺の後ろについて来る。

 駅に繋がる歩道橋の上まで来ると、俺はもう一度、ホンゴウに向き直った。

 「おいお前。あれはこの世とあの世を結ぶ路線だ。お前がかつて暮らし、思い出がある場所ではないんだよ」

 わざわざその場所に来て、俺と会うということは・・・。

 

 「お前。大丈夫か。まだ生きているのか?」

 俺のことを「思い出す」ってのは、ほとんど死に懸けている者か、もはや死んだ者のいずれかだ。

 現に俺の後ろには、六体の女の幽霊が、まるでグルーピーみたいに付き従っていた。

 ここで覚醒。