日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

「座敷わらし」に会った話

岩手県の実家に寄った時に、老父母と昔話をしました。
専ら、亡くなった祖父・曽祖父や親戚の思い出話です。

母の実家は旧家で、大きな農家です。
常居(じょい)が40畳くらいで、客間・奥の間がそれぞれ14~16畳。
日頃、家族が使う居間が16畳で、その他に6~8畳くらいの小部屋が6つあります。

この奥の間には、ここで寝ると「座敷わらしを見る」という言い伝えがあります。
実際に「見た」と言う人も何人かいます。
私の父方の祖父も「見た」人の1人です。
何か理由があり、祖父と父がその家を訪れた時のことだと聞きます。
祖父が座っていると、突然、奥の間から子どもが走り出て来て、「目の前に立った」とのことです。
祖父は「おかっぱ頭の女の子だった」と話していたそうです。
もちろん、その当時、その家に小さい子どもはいませんでした。
祖父はその子の印象を「なんとなく怖かった」と父に語ったそうです。
祖父に直接この話を聞いたことはなく、今回初めて父から聞きました。

かく言う私も、その家で「座敷わらし」を体験した1人です。
まだ小学校に入るか入らないかの頃、母の里帰りに一緒についてその家に行きました。
小部屋の1つで、祖母の隣に布団を敷いて寝たのです。
すると、深夜になり、柱時計の音が鳴ったので目が醒めました。
2時か3時だったと思います。

私の枕のすぐ前が擦りガラスの引き戸で、その向こう側が居間でした。
眼が冴えてしまい、そのまま布団の中で考え事をしていると、何やら足音がしました。
その足音は、奥の座敷から常居を小走りで通り抜け、居間に入って来ました。
「タタタタ」という軽い音です。
4歳か5歳くらいの重量感でした。
それで「ああ。子どもなんだな」と思いました。
しかし、その家の子らはもう少し年齢が上で、かつ別棟で寝ています。

その足音は居間の中を歩き回っていましたが、小部屋ひとつ1つを窺うように、部屋の前で足を止めます。
2つ離れた部屋の前で止まり、また走り回っては、隣の部屋の前で止まる。
また居間を出て、常居の方に行ったかと思えば、また戻って来る。
その繰り返しです。
そのうち、また居間の方に戻って来ると、中を歩き回ったのですが、私が寝ている小部屋の前でピタッと足を止めました。
「うひゃあ。やだやだ」
そう思って、私は布団の中に顔を埋めました。
何分か経ち、周りが静まったので、私は布団から恐る恐る顔を出しました。
すると、すぐ頭の上の擦りガラスに、子どもの姿がシルエットで映っていました。
輪郭のみで、表情は見えませんでしたが、直感で「男の子だ」と感じました。

その後、あまりの恐ろしさにしくしく泣いていると、祖母が目覚め、「大丈夫か」と声を掛けてくれました。
その声を聞いてほっとしたのか、私はようやく眠りにつくことが出来ました。

見た人が口を揃えて「何だかとても怖ろしかった」と言うのですが、私も心臓がバクバクするくらい怖い思いをしました。
自分自身の体験や回りの人の体験談を聞く限り、この「座敷わらし」は到底、「可愛らしい妖怪」の類ではないです。
あれは間違いなく幽霊の類です。
子どものうちに死んだが、行き場がわからずうろうろしている幽霊だと思いますね。