日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第323夜 皆がオレを見る

夕食後、例によって居眠りをしました。
その時に観た短い夢です。

気がつくと、どこか田舎町の食堂の中にいた。
レストランではなく、昔風の「食堂」だ。
入り口に、ナポリタンやハンバーグの見本が飾ってあるような店だった。

オレは食事を始めたが、疲れからか、半分食べたところで寝入ったらしい。
今は冬で、この店の中は暖房がガンガン効いている。
これも今どきは滅多にない。
「そう言えば、娘が4歳くらいの時、カレーを半分食べてところで寝込んでいたな」
オレも子どもなみの体らしい、と苦笑した。

店内のテーブルには、どこも客が埋まっていた。
老若男女さまざまだ。
なんとなく視線を感じるので、周囲を見回すと、オレが目を向けた人は眼を合わせないように別の方向を向く。
「顔をそむける」と言った方が正確な表現だ。

(だが、皆オレのことを見ている。)
俺が下を向くと、すぐさま誰かがオレの様子を覗っているような気配がある。
「何だろ」
何か、他人が気になるような原因がオレにあるのだろうか。
自分の体を見回してみる。
カバンや服装、別に何の面白味も無い普通の中年オヤジだ。
オレは独り旅が好きで、かつこんな田舎の食堂も好きなのだ。
半ばはノスタルジアと言っても良い。
昭和の、あの高度成長期の感じを思い出すからな。

オレはカキフライを食っていた。
ほとんど食い終わり、キャベツをもしゃもしゃと口に入れた。
やはり、周りの視線を感じる。
(一体、何なんだよ。こいつらは。)
もう一度顔を上げて、周りに目をやると、やはり皆が一斉に目を背ける。

オレはそのうちの1人に目を付けた。
(よし。コイツにしよう。)
二十台の若い男だ。女と一緒に飯を食いに来たという風情だ。
ごろを巻くには、コイツが良さそうだ。
気が弱そうだし、すぐに口を割るだろ。

オレはまた自分の顔を下に向けた。
すぐに回りの視線がオレに集まった。
頃合いを見計らって、オレは急に顔を上げ、さっき決めた男を見据えた。
「何だよ。何でオレのことを見る」
男は予期していなかったらしく、うろたえた。
「いえ。何でもありません」

オレはがばっと立ち上がった。
「何でもなくはないだろ。お前はさっきからじろじろオレのことを見てるんだよ。お前だけでなく、この店にいるヤツら全員がだ!」
ここでオレは腹を決めた。
面倒くさい。こいつらを全員畳んでやる。
椅子の背もたれに手を掛ける。

すると、中年のオバサンが前に出て来た。
「あの。言ってもいいのかわからないけれど・・・」
顔が強張っている。
明らかにオレのことを恐れているのだ。

「あなた。どうして女の人を背負っているんですか。そのひと。顔色がとても青い。相当、具合が悪いんですよ」
え。何を言ってるんだよ。このババア。
「別にオレには連れはいないよ」
途端に女が不思議そうな顔をする。
「いるじゃないですか。あなたの右肩に顔を半分載せてるでしょ」

オレはここでなんとなく状況が分かって来た。
「なんだそれか。それでお前たちはオレのことを見てたのか」
オレはゆっくりと前に進んだ。
「女がオレの肩に乗ってるなら、そりゃオレの前の女房だろ。オレがあいつを殺してから、大体15年くらい経つ。そろそろ悪霊になって迷い出て来る時期だな」
オレはさらに2歩進んだ。
「こいつはひどく祟るぞ。さあ、お前たちも味わえ!」
オレは皆に見えるように、右肩を前に突きだした。
オレには見えないが、きっとこいつらには見えるんだろ。

「ひゃあ」「きゃー」「幽霊だあ」
店内の客たちが一斉に背中を向け、オレの前から逃げ出した。

ここで覚醒。