日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第365夜 進むべき道はひとつ

19日の夜、カーリング中継を見始めた直後に眠りに落ちました。
これは目覚める直前に観ていた夢です。

夜の闇に、炎が煌々と光っている。
数百本の松明の灯りだった。

俺たちは百姓で、今は一揆を起こしているところだ。
飢饉が何年間も続いているというのに、代官は百姓の苦境を無視し、税を取り立てる。
種もみすら持ち去った。

飢饉はその後も続いた。
本百姓の多くが土地を手放し、小作人になったが、それでも飢饉が終わらない。
取り立ても一層厳しくなった。
そのうちに、役人がそれまで手を出さなかった豪農や、商人にまで厳しい取り立てが行われるようになった。
役人が突然現れて、「お前の家では不当に蓄財をしている。よって、お前の蓄えた米は我々が買い上げる」と宣言し、蔵の中から穀物を持ち去るのだ。
代金は紙に金種を書いた紙で、いわゆる「手形」なのだが、振り出した本人が換金してくれないので、最初から不渡りだ。要するに、ただの紙を置いて、米穀を収奪するわけだ。

さすがにこれでは堪らない。
何のために、田畑を耕しているのかわからない。
こんな生活が嫌になり、土地を捨てて他の所に行こうとすると、領境で役人が待っている。
百姓は「お伊勢参り」以外では、領境の外に出ることが出来ない決まりだ。
この「欠け落ち」は重罪で、概ね奴婢に落とされるし、抵抗をすれば死罪になってしまう。

このため、俺たちは一揆を起こしたのだ。
俺たちは五百人で、役人と結託した御用商人の蔵を襲った。
役人が徴用した米穀は、この商人が換金していたからだ。
蔵を壊し、皆で穀物を分け、腹いっぱい食った。

三日ほど経ったところで、役人が取り締まりに来た。
下っ端の侍は百姓以上に飢えているから、体力が落ちている。
俺たちは役人を叩きのめし、追い返した。

七日すると、今度は重武装した軍隊が来た。
ざっと二千人の兵たちだ。
しかし、俺たちも腹を括っており、戦意が高揚していた。

ところがこの軍隊は攻撃して来ず、使者を起こした。
代官のすぐ下の吟味役だった。
吟味役はこう言った。
「お前たちの言い分ももっともである。一揆略奪の罪を問うことはしないので、すぐに武器を捨てて投降せよ」
とても信じられない。
「投降したら、俺たちを捉えて、次々首を刎ねるのではないのか」
役人が首を振る。
「いいや。罪を問うのは首謀者1人だけだ。他の者の命は助ける。命どころか一切の罪も問わない。だからすぐに武器を捨てよ」

これで俺たちの心が揺れた。
決死の覚悟で一揆を起こしたのだが、やはり誰でも死にたくはない。
「罪を問わないと言っているのだから、降伏しよう」
皆が名主様の方を見る。
名主様はいずれにせよ死罪だからだ。

俺の意見はもちろん違う。
一揆を起こした時に、俺たちの末路は決まったのだ。あいつらは単に、自分たちが怪我をせずに、俺たちを降伏させたいから、そういう嘘を吐いている。もし投降したら、俺たちの多くは捉えられ、首を刎ねられてしまう」
誰かが叫ぶ。
「でも、お前のような首謀者はともかく、俺たちのような下っ端まで打ち首にするだろうか」
これは不味い事態だ。
皆が動揺している。まあ、それもそうだ。
命は惜しい。自分の命ならなおさらだ。
そして、これが侍どもの狙ったことだ。内紛を起こさせ、ぐずぐずに崩そうというのだ。

ここで俺は吟味役の表情を確かめた。
平然としているようだが、ほんの少しほくそ笑んでいるように見える。
やはりねらいはこういうことだ。
この時、その吟味役の首に鎌が突きたてられた。
「うわああ」
その侍が首を押さえて崩れ落ちる。

横に立っていたのは、俺の幼馴染みだった。
小柄で寡黙な男だったのに、どうしてこんな・・・。
その男が重い口を開いた。
「これで争う材料が無くなっただろ。お前の言う通り、一揆を起こした時点で、俺たちは死罪になると決まった。それなら、もはや引き返すことは出来ないのだ。最後まで抵抗し、あいつらを道連れにしよう」

コイツ。大人しくて静かな男だと思っていたが、きちんと周りの状況を見ていたのだな。
この腹の座り方は見事なもんだ。
「よし。戦うぞ。侍どもに目にもの見せてくれようぞ」

「おう」と鬨の声が上がった。

ここで覚醒。

薄目を開くと、窓の外が明るくなっているような気がしました。
「ああ。もう朝なんだな。5時?6時?」
起き上がって、トイレに行こうとします。
廊下に出ると、真っ暗でした。
戻って来て時計を見ると、2時15分でした。

鳥の声で「もう朝が来たか」と錯覚させると言う妖怪の話を思い出しました。
ゴーゴリだかの小説にあり、水木しげるさんが鬼太郎でも描いていますが、昔の説話にもあったように記憶しています。