日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第367夜 孫

土曜の夕方、居眠りをした時に観た夢です。

私は64歳。夫は亡くなっており、独り暮らしをしている。
嫁に行った娘が出産し十カ月が経った。
ある日、娘が「ダンナと赤ん坊の世話が大変だから、しばらくそっちで暮らしてもいい?」と訊いて来た。
もちろん、嫌なわけがない。
赤ちゃんの「ミルクうんち臭い」臭いを嗅ぐだけで、気が若くなる。
「いいわよ」
そう答えると、娘は早速その翌日からこっちの家に来た。

小さい子どものいる家はパアッと明るくなる。
もう十カ月経っているし、首だってとっくの昔に据わっている。色んなものが食べられるので、手が掛からなくなっている。
最初のうちは、毎日、外に散歩に連れて行き、近所の人たちにも孫の顔を見せて回った。

ところが、十日目くらいから少しずつ様子が変わった。
孫のわがままが酷くなって来たのだ。
あまり食べさせ過ぎても行けないのだが、私1人が見ている時に限って、やたら食べたがる。
「もうお腹いっぱいでしょ」と止めようとすると、それこそ火が点いたように泣き始める。
あまりに大きい声なので、近所の手前、泣き止ませようと、食べ物を与えてしまう。
すると、さすがに戻したり下痢をしたりするので、今度は娘が怒る。
「いくら泣いても、子どもの言いなりになってはダメじゃない!」
しかし、ここはマンションだし、夜勤明けで昼に寝ている隣人もいるのだ。

どういうわけか、孫は娘にはあまりわがままを言わないのだが、私に対しては退くことをしない。
年寄りが嫌いなのか、私が抱っこすると、肩口やクビに噛み付いたりする。
毎日それが続くと、さすがに少々疲れて来た。

2カ月が過ぎた頃、私の友だちが遊びに来た。
名前を藤崎今日花と言う。
この友だちは私の高校時代の同級生だが、今は占い師として有名になっている。
占いだけでなく、霊感もあり、芸能人なども通っているらしい。
今日花は、私の孫の顔を見ると、しばらくの間、黙りこくった。
余りに長いので、娘がしびれを切らし、「どうですか?」と尋ねた。
すると、今日花は「病気をせず、健康に育ちます」と答えた。
でも、私が横から今日花の目を覗き見ると、これまで見たことが無いような険しいまなざしをしていた。

娘が席を立った時に、私は今日花にこっそり尋ねた。
「何か良くないことが見えたんでしょ。それは何?」
今日花は首を振った。
「何でもないよ」
「何でもなくは無いでしょ。もう何十年付き合ってると思ってるの。あなたのことは分かるもの。友だちだったら、本当のことを言ってよ。絶対に怒ったりしないから」
今日花は「少し考えさせて」と答え、しばらくの間沈黙した。
「やはり今ここでは言えないわ」
「分かった。じゃあ、帰る時に送って行くから、そこで教えてよ」

今日花が帰ることになり、私は彼女と一緒にマンションを出た。
マンションの近くには、小さな公園がある。
2人でそこに行った。

私はブランコの脇で「さっきは何だったの?」と尋ねた。
「ちょっと言い難い話だけど、我慢できるかしら?」
「構わないわよ」
今日花が下を向く。
「さっき、あなたのお孫さんを見た時、私にはお孫さんの将来が見えた。二十五年くらい後のことよ」
たぶん、不都合な出来事なのだろう。
「まさか、事故とか病気とか?」
「違うの」
「じゃあ、犯罪の被害者になるとか」
「違うわ」
「じゃあ、何?」
今日花はここで私の目を見据えた。
「私の言葉が耐えられるかしら。あなたの孫はその時犯罪を犯すの」
「え?まさか。どんな犯罪なの?詐欺とか」
「いえ・・・」
ここで今日花は少し躊躇ったが、しかし、途中まで話し掛けたのだから、再び口を開くことにしたようだ。
「あなたの孫は女性を殺すのよ」
「ええ。そんな・・・」
新聞なんかで時々報道されるような「愛情のもつれ」とかなのだろうか。
「たぶん、あなたは今、事件の内容を想像したでしょうけど、たぶん少し違います。あなたの孫は自分の快楽のために、30人以上の女性を殺すのです。強姦して殺し、体をバラバラにする」
「まさか」
よもや言葉も出ない。
私が狼狽えているのを見て、彼女は私の手を取った。
「でも、私の霊感だって完璧じゃない。本当に不完全なものよ。だからあまり深刻なものと受け止めないでね」
その言葉は嘘だった。
なぜなら、その今日花の手は、まさに氷のように冷たかったからだ。
すなわち、それほど怖ろしいものを見た、ということだ。

それから2日後、私は今日花の言葉を思い知ることになった。
夜中の2時に、私はかさこそという小さな音で目を醒ました。
「何だろう。こんな夜更けに」
まあ、娘が小用に起きたか、孫のおむつを取り替えるかしているのだろう。
そう考えて、孫を起こさないように、なるべく静かに寝室のドアを開いた。
私の寝室の前は居間だ。
その居間には、孫がいた。
1歳になった孫は、椅子の上に乗り、さらに背伸びをして台所の引き出しを開けていた。
(こんな夜中に何をしてるんだろ。)

孫が短い手を伸ばして取り出したのは、果物ナイフだった。
薄暗い台所で、孫はナイフを探すべく、あちこちを漁っていたのだ。
その直前まで、私は孫に声を掛けようと思っていたのだが、成り行きを黙って見守ることにした。
そこで、指の頭分だけ隙間を残すようにして、寝室のドアを閉じた。

孫は果物ナイフを取り出すと、椅子から降り、冷蔵庫の所に行った。
それから、冷蔵庫と壁の隙間に果物ナイフを隠した。
隠し終わると、孫は母親が寝ている部屋に戻って行った。
「まるで、何か考えがあって、ああいうことをしているみたいだわ」
一体どういうことだろう。

次の日、私は真実を確かめてみることにした。
私と娘、そして孫で食卓を囲んだ時のことだ。
孫を子ども用の椅子に座らせ、テーブルで林檎の皮を剥こうとした。
「あれ。果物ナイフはどこだっけかね」
独り言を言うようにそう呟いて、私は引き出しを開けた。
「無いなあ。どこに行ったんだろ。洗い終わった時に仕舞おうとして、どこかに落としたのかも」
台所のあちこちを探す。
「踏んで怪我をしたら大変だから、徹底的に探すね」
台所の端から探し出したふりをして、私は冷蔵庫に近づいた。

「あった。どうしてこんなところに落ちたんだろうね」
そう言って、さりげなく孫の様子を確かめた。
この時、孫はとても子供とは思えないような表情で「ちっ」と舌打ちをした。

ここで中断。

続きがあり、幼児は深夜、包丁で母親と祖母を殺そうとしていた、という流れになります。
その先は、よく分からないのですが、話として成立しそうな展開なのでここまでとします。
たぶん、ごく近いうちにこの続きを夢に観るだろうと思います。

幼児が禍々しい存在(悪魔や悪霊憑き)だったり、
その幼児を助ける、とか、倒す、といったような締め括りなのでしょう。