日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第380夜 荒野にて

土曜日の夕方、テレビの前で寝入っていました。
その時に観た夢です。

我に返ると、薄明かりの中にいた。
周りの景色がぼんやり見える。
オレはどこか荒れ野のような場所にいるらしい。
ここは岩だらけの土地で、草が1本も生えていない。
荒れ野というより砂漠だな。

後ろを振り返ると、地面にうっすらと筋が見える。
道とは言えないが、誰かが通った跡だ。
たぶん、オレもここを歩いて来たのだろう。

もう一度、前に向き直る。
進行方向の先には、砂丘のような丘が見える。
その丘の向こうから、さわさわという音が聞こえていた。
「あれは水の音か?」
そう言えば、喉が渇いている。
飲める水ならいいけどな。

水の音がする方に歩き出した。
ゆっくりと丘を登る。

しかし、途中で足を止めた。
「ここ。前にも来たことがあるよな」
いつだっけ?
頭が働かず、しばらくの間立ち止まって考える。
どうしても思い出せない。

「何だか。このまま進んではダメだって気がするな」
何でだろ。
もう一度歩き出す。
丘の頂上はもうすぐだ。
足が砂に入り込んで、うまく歩けない。
「こういうのは、子どもの頃は『ふどる』と言ったよな」
今は使わなくなった方言を思い出す。

ここで不意に記憶が甦った。
「ダメじゃん。この先は川だよ」
しかもその川は、三途の川っていうヤツだ。そこを越えたら「あの世」だが、水に触れたりしてもいけないところだ。
水に触れると、生きていた時の総ての記憶が洗い流されてしまう。
その川を越えず、総てを忘れたら、あの世に行けない幽霊になってしまう。

ああ、ヤバいヤバい。
危うく、あの世に向かうところだった。
気がついてよかったよな。ほっとして胸を撫で下ろす。
しかし、冷静になってみると、やはり岡の向こう側のことが気になる。
「確か、川のように見えるのは、オレ自身がそういう風にイメージを作り上げているからだよな」
人によっては、この場所の感じ方は違う。
海のように感じる人もいれば、小川だと思う人もいる。
川ではなくトンネルを通る人もいるし、それら総てのこともある。
要するに、外形的な姿は、ひとり1人のイメージがもたらす産物だ。
しかし、それら全部の共通点は、そこを越えたらもはや「あの世」で、もはや戻っては来られないことだ。

「近寄ったらダメだけど、見てみたいよな」
そう思った瞬間に、体が空中に浮き始めた。
ゆっくりと、およそ1分間に50造らいの速さで、上に浮いて行く。
視線が上がり、じきに岡の頂上が見え、次第にその向こう側が視野に入って来た。
丘の向こうは海だった。

「イケネ」
オレはここで、もう1つ重要なことを思い出した。
三途の川を渡ると、向こう岸では空中に浮かぶ。それから、空にある雲のどれかに吸収されてしまうのだ。
その雲は、いわゆる「霊団」というヤツで、記憶や心情を共有する魂の集まりだった。
その雲に入ることが、すなわち「成仏する」ということなのだ。

「川を越えるどころか、これじゃあ、オレは一気にあの世に入ろうとしてるだろうに」
危ない危ない。
すぐにオレは平泳ぎみたいに両手両足を漕いで、地面に降りた。

ここは不味いよ。
早いとこ、元の世界に戻らねば。
大慌てで、元来た道を引き返す。

ここで覚醒。

いやはや。死神には誘惑されないと見たのか、新手の勧誘でした。
こりゃ、今年はよくよく気を付けないと、あっさりと「あの世」に案内されてしまいそうです。