日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第388夜 研究室で

私は目覚める直前の夢をほぼ100%記憶したまま眠りから覚めます。
これは日曜の夜の12時頃に観ていた夢です。

眼が醒めると、どこか実験室のようなところにいた。
何となく、ここが大学で、何かの研究をしているところだって気がする。
ところが自分の名前が思い出せない。
「オレは誰で、何の研究をしてるんだろ」
起きがけの時のように、頭がうまく働かない。

ドアを開けて、白衣を着た女性が入って来た。
二十歳を幾つか過ぎたくらいだから、学生か大学院生だろう。
女子学生がまっすぐオレのところに歩み寄る。
「先生」
「何だね」
「私のことを憶えてる?」
考えてみるが、思い出せない。
「今、私は少し記憶喪失みたいな状態に陥っているらしい。自分の名前も思い出せない」
すると、その女子がさらにオレに近づいた。
「これじゃあ、どうかしら」
白衣の前を開く。
中は下着だけだった。

「思い出せないね」
女子学生らしき女が微笑む。
「本当?」
体を半身にして、入り口の方に向けている。

オレがそっちの方を向くと、ドアの方に人の気配があった。
「誰かいるようだね。君の連れか?」
覗き窓からカメラのファインダーが見えている。
「撮影してんだね」
なるほど。
この場の情景は、研究者の前に半裸の学生が立っているというものだ。
それだけで、スキャンダルには十分だ。
写真を撮って、恐喝のタネにするつもりだろう。

「もう撮影はしたんだろ。なら、中に入って貰えば?」
その言葉が届いたのか、男がカメラを持って中に入って来る。
「筋書きはこうだ。私がこの女子学生と不倫関係にあり、大学の構内でもめていた。証拠は撮影してある。写真誌みたいなところに持ち込むつもりだが、私次第ではそれを止めても良い。そんな感じ」
図星だったらしい。2人は黙ったまま、オレのことを見ている。

「ねえ。私は用心深いんだ。いつもボイスレコーダーを持ち歩いている。ほら」
オレはポケットから指1本サイズの機械を取り出して見せた。
「だが、ここでは使う必要はない。ここは常時ビデオで監視してるからね」
2人が研究室の天井を見上げる。
男女が声を出す前に、私は話を続けた。
「八百屋は店先のリンゴをかじったりはしない。米を田圃で採って食う農家はない。学生は1年に130万から180万を払う客だ。これに手を付けることは、商品を損なうのではなく、客そのものを齧ることだ。そんなアマチュア以下のことをするわけがないだろ」
2人の表情が険しくなってきた。

「単位が欲しかったのか、金が欲しかったのかは知らないが、それはかなわない。もし君たちがここの学生なら、放校・退学だ。学生ではないのなら、警察に引き渡す」
ここで、女の方が口を開いた。
「でも、まだ何も要求していません。刑事事件は被害があって初めて成立する。私たちは詐欺も恐喝もやっていません」
「自分から、『まだ』と言ってるじゃないか。それに・・・」

ここでオレは椅子に腰かけた。
「詐欺で告発しようとは思っていないよ。ここは研究室で、私は新しい技術を開発している。そこへ君たちはカメラを持って入って来た。すなわち君らは産業スパイなんだよ。威力業務妨害では済まないからね」
ここで男が初めて声を出した。
「ち、ちくしょう」

この時、ドアの向こう側に人影が現れた。
オレは手招きをして、その人影を呼び寄せた。
「さっきスイッチを押していたが、思ったより早く来た。この人たちは警察で、君らを捕まえに来たんだよ」
ここで、オレは思い出した。
オレの研究は、光速に近い速度で物を動かすことを可能にするためのものだった。

ここでオレは独りごとを呟いた。
「研究の内容だけでなく、普段のオレの生活ぶりも迅速なんだな」

ここで覚醒。