日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第405夜 空飛ぶ大頭

火曜日の夜十時ごろに観ていた夢です。

道を歩いていると、人だかりがある。
ざっと2百人くらいが集まっていた。
「なんだろ」
何となく近づいてみる。

よく見えない。
前の人たちが口々に何かを言っている。
「気持ち悪い」
「殺してしまえ」
さりげなく人を押しのけて前に出て見る。

人々が取り囲んでいたのは、大きな頭だった。
見るからに人の頭だが、サイズがでかい。
直径で1辰らいある。
赤ら顔で、頭のてっぺんが剥げていた。

「うわあ。何これ?妖怪?」
前の人が振り返る。
「こいつ。空をふわふわ飛んでいたんですよ。気持ち悪いから石を投げたら上手く当たった。下に落ちてじっとしてるんです」
「危なくないのですか?」
「今のところは大人しいね」
でも、安心は出来ない。
子どもの頃、叔父が狸を捕まえてきたことがあるが、昼の間は固まったままじっとしていた。
ところが夜になったら暴れて、繋いでいた針金を食いちぎって逃げてしまった。
昼には、それこそ「狸寝入り」をしていたのだ。
叔父はその時、「野生の動物は大人しいようでも獰猛だ。手を出したら指なんぞ噛み切られてしまう」と語った。

「気を付けるに越したことはないですよ」
そう言った瞬間、目の前の大頭が空中に飛び上がって逃げようとした。
「あ。こいつ」「待て」
皆は声を上げて、大頭を追い駆けた。
あのオヤジの頭のようなやつは、今まで逃げる頃合いを見計らっていたのだ。
「野郎。死ね」
皆で石を投げつける。
幾つかがそいつに当たったが、大頭は飛び去ってしまった。
「あーあ。逃げられたか」
「ビデオを撮って置けば良かった」

「しかし、世の中にはまだあんな怪物がいたんだな」
オレはさっきの大頭を思い出しながら、家に帰った。
玄関に入ろうとすると、庭の隅の方からなにやら泣き声がする。
「何だろ」
声のする方に歩き、家の横を覗いて見た。
そこに居たのは、さっきの大頭だった。

赤ら顔のオヤジ頭は、悲しそうな目をしてしくしくと泣いていた。
オレは一瞬、箒の柄で殴ろうと思ったが、大頭が涙を流しているのを見たら、すぐにその気が失せた。
「こいつ。まるで野良猫か野良犬の子みたいだな」
その声が聞こえたのか、大頭が俺の方にすり寄ろうとする。
オレは思わずそいつを制止した。
「おい。やめろやめろ。傍に来るな。オヤジ頭にすり寄って来られたら迷惑だ」
すると、大頭は再び悲しそうな表情でその場に留まった。

「こいつは凶暴な化け物ではないのかも」
オレは念のため確かめてみることにした。
「お前。顎の下はどうなってるの?」
大頭がごろんと横になり、下の部分をオレに見せる。
人間なら首が断ち切られている部分だが、そこはつるんとしていた。
「ええい」
オレは手を伸ばしてその部分に触ってみた。
少々産毛が生えていたが、この下に何かがあったような形跡はない。
「してみると、お前は首だけの妖怪ではなくて、これが全身なのだな」
大頭がうんうんと頷く。

「そっかあ。お前はこういう動物なのだな。どこで暮らしていたかは分からないが、この街に迷い出て来たという訳だ」
なら、化け物扱いするのは可哀相だ。
「でも、お前のことをこれから一体どうすればいいんだろ」
家に入れてやってもいいが、今にこんなでかいオヤジ頭を置いたら、女房が騒ぐよな。
オレはその場で首を捻った。

ここで覚醒。