日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第451夜 タワービルで

◎夢の話 第451夜 タワービルで
30日の午前5時ごろに観ていた夢です。

 我に返ると、どこか知らぬビルの床に座っていた。
窓の外には夜空が見える。
立ち上がって、外を眺めると、オレがいたのは高層ビルの高い階だった。
「30階くらいかな」
 ここで改めて周りを見渡す。
 オフィスビルの長い廊下で、橋から端まで50辰呂△蠅修Δ澄
 薄暗いが、あちこちに人が倒れているのが見える。
「うう」と呻き声がしている。

「おい。起きろ。皆大丈夫か」
 声を掛けると、床に寝ていた人たちがめいめい体を起こす。
「ここは一体どこで、何でこんな所に」
 そんな声が聞こえる。

 オレもよく思い返してみる。
「これは夢だな。オレは起きている時のオレの自意識のままだが、オヤジジイではなく若者だもの」
 窓ガラスに映る自分の姿を見れば一目瞭然だ。どうみてもオレは30歳くらいだろ。
 夢だと言う事を承知していれば、比較的安心して行動できる。

「なぜここにいるのか、全然思い出せない」
 これは背の高いモデルみたいな女の子だ。
 他の者も起きて来たので、号令を掛けて集まって貰った。
 フロアに居たのは全部で12人。全員が同じくらいの齢格好で、男が7人に女が5人だった。
 全員がそれまでの記憶を失くしていた。
 もちろん、オレを除いて、という意味だ。
 オレの特技は、夢を総て記憶していることと、夢を観ている時に「今は夢の中にいる」という自覚がある場合があることだ。要するに、眠っていても頭が起きて働いているってことだな。

「なんでこんな所に集められたんだろ」
 男の1人が呟く。
「家に帰りたい」
 そりゃそうだ。オレだって帰りたい。

「とりあえず、出口を探してみようか」
 誰かが言うと、皆がぞろぞろと廊下を歩き出した。
「エレベーターがある筈だな」
 エレベーターはすぐ近くにあった。しかし、電気が消えており動く気配がない。
「こいつじゃ駄目だね。階段で下りようか」
 階段を下りても、果たして1階があるかどうか。
 オレはそう思ったが、口には出さない。
「階段じゃあ、何十階歩かされるか分からないよ」
 最初のモデルみたいな女の子が不平をこぼす。
「まあ、ひと回りして、何もないようなら非常階段で下りるしかないね」

 窓の反対側にはオフィスが並んでいる。ところがどの部屋にも鍵がかかっており、扉が開かない。
「ここには人の気配が無いね。誰もいない」
 頭の中で「それは違う」という声が聞こえる。
 皆で一緒に歩いてみたが、その途中、あちこちでオレは「気配」を感じていた。
 眼には見えないが、誰かがうずくまっている気配がある。

「ここは高層ビルだけど、古いよね」
 地味で質素な服を着た女の子が言う。
 この子も勘が働くらしい。ここには何だか、あちらこちらに古くて良くないものが隠れているような気配がある。

「階段があったぞ」
 先に進んでいた男の1人が呼び掛けて来た。
「開けてみる?」
 オレはすぐさま「まだやめとけ」と声を掛けた。
「様子を確かめてからだ。何だか罠が張ってあるような気がするな」
 階段の踊り場付近で、誰かがこっちを見上げている予感がある。
「こっちに来い、というような展開だもの」
 そして、間違いなくそういうのが3百はいる。

「しかし、このままこの階にはいられない。いずれはこの階段を上がるか下りるかしなくては」
 まあ、それもその通りだ。ただ考えていても何も変わらない。
 どこかで前に踏み出さねば。

 そう思った瞬間、扉の外で「くく」と小さな含み笑いがした。
「やっぱりな」
 オレの頭には、縞女の姿が思い浮かんだ。
 あの女を含め、悪霊がここにいる男女を取り込もうとしているのだ。
「しかも、オレはその水先案内人をやらされている」
 ここで、オレは総てを理解した。
「ここはいつものあの旅館だ。オレを騙すために形を変え、高層ビルに見せかけているのだ」
 この時、一瞬にしてビル内の景色が消え、あの旅館の縁側廊下に変わった。

 どうやらオレはとてつもない間違いを犯したらしい。
 こないだの夢で、オレは縞女をこの世とあの世の中間の世界から外に出した。
 その時から、あの女は「出入りは自由」の状態になったらしい。
「そして、このオレを取り殺さないのは・・・」
 「まだ利用できる」と考えているからだ。
 確かに、オレは夢を通じてこの世と中間の世界とを行き来している。
 行き場の分からない魂を拾い集める役目に、オレは最適の境遇だった。

 縞女の考えがオレにひたひたと伝わって来る。
「お前も、そして他の者も何ひとつわかってはいない。お前らなど、取り殺すのは簡単だぞ」
 だがそうはしない。
 恐怖をまき散らす役目を果たしてくれるからだ。これは、自称霊能力者や霊感師、心霊研究家などといった輩も同じ。
 人の心に恐怖心が生じると、心と魂に隙間が出来て、悪霊が入り込みやすくなる。
 こういう輩には恐怖心を撒く仕事があるから、悪霊たちが黙認しているのだ。

「不味い。ご神刀を出さねば」
 しかし、このイメージと共に右手の中に現れたのは、トタンのようなふにゃふにゃの金属板だった。
 最近、オレはお勤めも参拝も前よりおろそかにしていた。
 たぶん、そのせいだ。
 縞女は鋼鉄の扉の向こう側にいる。
 オレが扉を開き、他の若者の魂を与えるのを待っているのだ。

「怖ろしい。何ということだ」
 扉の前に立ったまま、オレは例えようもない無力感を覚える。

 ここで覚醒。
 途中から、半覚醒状態になり、体の周りの気配を感じていました。
 こういう時は、自分の体を中心に、20短擁?硫擦聞こえます。
 眼が醒めて体を起こすと、すぐに玄関の扉が「コツ、コツ」と鳴りました。
 普段は「ベタン」という音に近いのですが、この日はごく普通のノック音です。
 嫌なことに、時計を見たら朝の5時。時間帯も逸脱しています。

 縞の着物を着た女は、「濱子」という名だったらしい。
 昔のありきたりな名前のようですが、それもその筈で源氏名です。
 メッセージがあり、「あの世のことについて分かったようなことを言う者に、真っ先に取り憑ついてやる」とのことです。