◎夢の話 第480夜 行き着けない
火曜の夜の夢です。
気が付くと、列車の中。
隣には家人がいる。
家人と2人でどこかに行こうとしているようだ。
周りを見渡す。
ごく普通い首都圏で走っている電車だ。
チラシの類が古くて、まるで35年は前のよう。
頭の中で「まあるい緑の山手線」というCMソングが響く。
しかし、窓の外はかなりの山の中だ。
単線らしく、列車に届きそうなくらい左右に樹の枝が垂れ下がっている。
「間に合うかしら」
家人が呟く。
ここでぼんやりと思い出す。
家人もオレも、これから職場に向かおうとしているのだ。
「でも、どこの職場だろ」
家人と同じ方向ということは、それこそ30年近く前に通っていた研究所だろうな。
古い建物で、5階が研究所だった。
「遅刻しちゃうかも」
家人の声が不安そうだ。家人は几帳面な性質で時間を守る。
遅刻は一度もしたことがないのではないか。
今はどの辺だろ。
ちょうどその時に、小さな駅を通過した。田圃の中にひっそりと建つ無人駅。
「ここは・・・」
オレの夢の中に頻繁に出て来る路線だった。
千葉の先のほうに似ているが、そこから福島を通り、岩手と秋田の中間を通って竜飛岬まで繋がっている。現実には存在しない路線だ。
「ってことは、今は夢の中だな」
なら、遅刻しても平気だろ。
「外国人は弱い立場だから、失点を作らないようにしないといけない」
やはり家人は不安そうだ。
「でも、この路線は都心には向かわない。次の駅で下りて、タクシーを拾おう」
易の前はごちゃごちゃしているが、少し進むと広い道に出る。そこでタクシーに乗ると、思ったより時間が掛からずに都心に着く。
次の駅で下り、駅前通りをまっすぐ歩く。
いつの間にか、夫婦の隣に男が並んでいる。
「出勤するのに、タクシーを使ってたらお金が勿体ないですよ」
ありゃ、コイツは?
昔、オレが通っていたクラブのバーテンだった。
なぜか馬が合って、一緒に旅行したりしたっけな。
「でも、ゼニカネの問題じゃないだろうな。仕事をおろそかにしないという心構えで、そういう家人だから守ってやりたい、という気持ちの表れだろ」
夢の中で、自分の夢の分析を始める。
ひとしきり物思いに耽り、我に返ると、また列車の中にいた。
「ああ、やっぱりね。これは夢だからなあ」
この旅は終わらない。
たぶん、オレが死ぬ時まで延々と続く。
「しかも、オレが死ぬ時が終着駅だとは限らない。列車を乗り換えるだけかもしれん」
ここで覚醒。
入院した時から、どろどろの悪夢は観なくなったのですが、その代わりに人間関係に関するトラブルの夢とか、こういうまとまりのない夢を延々と観ています。
当方的にはドラマ性のある話の中に、侍とか幽霊が出て欲しいもんです。