◎夢の話 第490夜 医師
27日の早朝に観た夢です。
目を開くと、オレのすぐ前に医師がいる。
ここは診察室の中で、椅子に座って問診を受けていたようだ。
医師は心臓の担当医に似ているが、何となく様子が違う。
その医師が口を開いた。
「どうしたんですか」
え。何が「どうした」んだろ。
何か不摂生でもして、検査結果にそれが出ているのか。
「特に思い当たることはありませんが・・・」
医師は渋面のままだ。
「そろそろ侍が出て来る話を書いて貰わないと」
え。そういう話なの?
「あっち行ったり、こっちに行ったり。闘病中だから、関心がいろんなところにあるのは分かるけど、私が待っているのは侍の話なんだよね。何時出来ますか?」
「まだ5、6本は先です。とりあえず、原稿料が取れる業界誌、専門誌の原稿を書かないと。この1、2年でだいぶ医療費を使ったので、お金を減らしているのです」
「そんなことを言ってたら、書く前に死んじゃうよ。ネタは錬れてんの?」
「はい。長い間、ネタを引き出しに仕舞うような暮らしをして来ましたので、百本分はあります」
「それなら、早いとこ手を付けてくれないとね。良いですか。ネタを貯めても、書く前に死んだら、結局は書けない」
「それもそうです。」
でも、病気をして働ける力が半減し、障害者になってさらに半減した。すなわち、今はソコソコ健康な時の25%くらいしか働けない。
「分かりましたか。とりあえず、『黄昏の城』をすぐ書いてよ」
「え?『黄昏の城』はオレの頭の中だけにある話ですよ。なんで先生がそれを知ってるの?」
ここで、医師が「しくじった」というように、小さく舌打ちをした。
なるほど。
「あんた。本当はオレの知ってる人だね。そうだな。名前は」
オレの言葉を聞き、医師がさらに顔をしかめる。
「アモンだろ。またお前が来たのか」
その途端、医師は両手両足から力を抜き、だらんと投げ出した。
「分かっちゃったかあ。さすがケンちゃんだ。仕方ない」
医師が身を正すと、一瞬にして子どもの姿に変わっていた。
「随分、姿を見せなかったね。アモン」
「ちょっと忙しかったからね。地獄にだって色々あるんだ」
「ふうん。お前がいなかったから、オレは誰にも相談できず、すぐに死ぬのかと思ってたりした」
誰ってのはあの世の住人ってことだ。
「ケンちゃん。生きてる人は皆そんなもんだよ。それが当たり前だ」
「そっか。オレみたいに、死人や悪魔と付き合ってるのは異端な方なのか」
ここで男児がくつくつと笑う。
「ちょっと前なら、ケンちゃんは真っ先に火あぶりだね」
それもそうだ。実際に、こうやって地獄の番人と話をしてるわけだものな。
「アモンが来た、ということは、オレは2年くらい前の状態に戻ったってことだな。お前は悪魔だが、死神じゃない。オレを連れに来たわけじゃないんだろ」
「そりゃそうだよ。ケンちゃんの死神は、ほら」
アモンがそこで言葉を止める。
だが、それをオレは知っていた。
「オレのことを迎えに来るヤツは、あの女なんだろ。夜中に玄関のドアを叩いたり、家の中をうろついていたりするあいつだ」
しかし、アモンはそのオレの話が聞こえなかったふりをして、窓の外に目を向けた。
それでも、コイツが来たってのには、何か意味がある。
「アモン。本当は何しに来たんだよ」
ここでオレは思い出した。コイツが来る時は、大きな事件が起きる時だ。
例えば、戦争とか。
ちょうどこの時、アモンは右目をほんの少し細めた。
コイツはひとの心が読めるのだ。
「まさか。時間が無いってのはそのことなのか?」
その途端、オレの頭の中に、宙を飛ぶミサイルのイメ-ジが広がった。
ここで覚醒。
脈絡がない夢でした。
アモンはオレの悪友の「コウちゃん」に似ています。
先日、コウちゃんの思い出を書いたので、夢に現れたのだろうと思います。