日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第528夜 アリーナで

◎夢の話 第528夜 アリーナで
 24日の夜9時に観た夢です。

 瞼を開くと、オレはアリーナの観客席に座っていた。
 バスケットボールの試合会場のようだ。
 「ここはどこで、オレは誰なんだろ」
 例によって、自分の事が分からない。

 どうやら、仲間と一緒に試合を見物に来たようだ。
 大学なのか高校なのかは分からないが、同じ学校の選手が出ているらしい。
 皆で自分のチームのことを応援していた。
 手を振って、声を上げて、選手を鼓舞する。

 「あれ。あれは」
 観客席の下のほうに、女子が座っている。
 その女子にオレは見覚えがあった。
「あの子はオレの元カノじゃないか」
「元」ってことは、「もう別れた」ってことだ。
 そんなことがあったっけ?
 記憶が不確かで、とりとめがない。

 試合が終わり、オレたちのチームが勝った。
 選手たちが応援席の前の方にやって来る。
 その中に長身でイケメンのヤツがいる。
 そいつは、オレの元カノの方に近寄ると、何か声を掛けた。
 元カノは嬉しそうにタオルを渡している。
「なあるほど。今はあの男と付き合っているのか」
 ま、どちらかというと発展家の部類だしな。

 「こういう時のモヤモヤした気分は何なんだろ」
 「嫌いだから」、あるいは「先はないと思ったから」別れたのに、他の男と仲良くしているところを見ると、何だか癪に障る。
 まだ好きだったりするんだろうか。
 ここで過去のことを思い返してみる。
 あの女子とはどういう風に付き合ったんだっけな。

 ところが、その過去のことが思い出せない。
 いつ、どういう風に出会って、どういう風に別れたんだっけ?
 
 ここで、オレは真実に突き当たる。
「なあんだ。オレはまだあの子と付き合っていないや」
 オレがあの子と付き合うようになるのは、あの子がバスケの選手と別れた後だ。
 男はプロの選手となり、モデル美女と知り合うと、あっさりあの子を捨てたのだ。
 オレはその後で、あの子と付き合うようになり、やっぱりうまく行かずに別れることになる。
「でも、そんな将来のことがどうして今分かるんだよ」

 すると頭のどこかで声が響く。
「それは、お前が将棋指しだからだよ」
 思わずオレは「え?」と問い返した。
「お前は棋士だから、お前には160手先まで考える性癖がある。だから、人間関係でも先を見通しすぎるきらいがあるんだよ」
「でも、オレが感じたのは、将来のことではなく、過去のこととしてだぞ」
 一瞬、頭の声が黙りこくる。

 「将棋指しはそれまでの差し手をも克明に思い出せる。お前は今を生きていると思っているが、今見ているのは過去なんだよ」
 ちょっと、わけが分からなくなってきた。
「じゃあ、今が今じゃないなら、オレはいつを生きているんだよ。まだあの子と付き合う前で、先を見通しているのか、それとも、あの子と別れた後で過去を振り返っているのか。いったいどっちなの?」
 すると頭の声が冷徹な口調で言い放つ。
「残念だけど、お前が存在しているのは、あの子と別れた後の時間だ。お前は過去を振り返っているんだよ」

 それなら、オレがこの先の展開を逐一知っているのも分かる。
 だが、それじゃあ、最初のデートのドキドキ感とか、別れ際のなじり合いとかは、もはやオレの心の中にしか存在していないわけだ。
 つまらんな。
「はは。何を言ってるの。元々、お前が生きているのは、今しかないだろ。過去も未来もお前の心にしか存在しないんだよ。総ては泡沫の夢でしかないのだ」
 その瞬間、総てのオレの記憶や感情が一緒くたに交じり合い、まるで排水溝に吸い込まれる水のように、くるくると回って消えて行った。

 ここで覚醒。
夢の中の「オレ」は現実の自分ではないのに、登場した「元カノ」は実在した人でした。
脳細胞がハレーションを起こしているような感覚です。
薬物をやったり、老化のせいで頭がおかしくなったらこんな感じになるだろうと思います。