日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

扉を叩く音(続)  道を歩く女

「十一月から三月頃までの間、深夜玄関の扉を叩く音が聞こえる」話の続きです。

三月二十七日御前2時の記録。

居間で眠っており、徐々に目覚めようとしている。
意識が少しずつ戻ろうとしていた時のこと。

夢ともうつつともつかぬ中、家の外の状況までが見えてくる。
ちなみに、これは前にも書きましたが、日々練習していると、出来るようになります。
目を瞑り、意識を周囲に拡大していくと、二十メートル四方くらいの状況が感じ取れるようになるのです。

すると、家の前の道を誰かが歩いて来るのが見えてきた。
女で三十歳くらいの年恰好。
怖ろしく険しい表情をしている。

「まずい。あれはこの世の者ではない」

これは一瞬にして分かります。
死神の幻視?を見る時と同じで、ごく普通の人間の格好をしているのですが、見た瞬間にそれと悟るのです。

「この女。どこに行くのだろう。まさかオレの家の扉を叩きに来るのでは」

そう思い、すぐに起き上がりました。
完全に覚醒している状態なら、接点が少なくなります。
時計を見ると、ほぼ2時。いつもの時刻です。

そこで改めて考え直します。
「もしかして、先日、オレの肩に乗ったあの女では」
「起きて、約束を果たせ」と言っているのかもしれません。
そこで、2階に上がり、まずはこれを書いています。

あの表情、あの目線。
やはり心がありません。
幽霊の怖さはけしておどろおどろしさのようなものではなく(そんなのは作り話)、生きている人間には必ずある「心」が無く、念だけの存在になっていることです。