日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第613夜 遺伝子モンスター

◎夢の話 第613夜 遺伝子モンスター
 6月26日の午前4時に観た夢です。

 遺伝子実験で「化け物」が生まれた。
 体はタコで、頭は人間の女というグロい姿をした化け物だ。
 いったいどんな悪魔の実験を試みていたのかは知る由もないが、結果的にその化け物が研究機関の外に出てしまった。
 そいつは、吸盤で生物の体液を吸収し、相手を死に至らしめる。
 おまけに、いざ吸収すると、短い間だが、吸収した相手の姿に化けることが出来る。

 「昼は暗いところに隠れていて、夜中に這い出しては人を襲う。始末におえんな」
 俺は製薬会社の研究員で、あの化け物を世に出した研究所と同じ会社に属する。
 もちろん、俺の方は別の研究所で、病気を直す研究をしていたのだが・・・。
 自分たちがしでかしたツケだから、俺たちは必死で化け物を殺す研究をしていた。
 だが、そいつは掴まらない。
 「タコ女」のままならともかく、数分間は別の者に化けることが出来るからだ。
 地下鉄の駅の陰や、下水道から這い出ては、人を襲い、死骸だけを残していく。
 恐ろしいことに、次に現れるときには、前に殺した者の姿で現れるのだ。

 「まるで映画だな。『ボディ・スナッチャー』そっくりだ。何か糸口がみつからないものか」
 俺たちは不眠不休で探しているが、何ひとつ見つからない。こいつを開発した研究所の職員が、まるごと殺されてしまったから、秘匿情報を引き出せなくなってしまったのだ。
 仕方なく、俺たちは、被害者の遺体に残っていた遺伝子から、化け物の細胞を生成させて、それを実験に使っている。
 
 この日は後輩の柴田が俺のところにやって来た。
 「小林さん。あいつには知性があるんじゃないでしょうか。あいつが食うのは日に1人か2人です。自分が見つかり難くなるように、慎重に動いているとしか思えない。あいつの体のサイズはもはや3メートル近くあります。実際は、もっと沢山食べたいだろうに、それで我慢しているのです」
 「そのままの姿で居てくれれば良いのだがな。今や被害者は40人を超える。あの怪物が誰に化けているのか、我々には区別しようが無いのだ」
 化け物が人の姿に生る時は、どういう仕掛けなのか体が人のサイズまで縮小する。
 ま、かなり無理をして、体を小さくするから、数分しか持たないわけだ。

 こうして、あの化け物が研究所を逃げ出してから、3ヶ月が経った。
 もはや被害者は百人を超え、夜の街には人が少なくなった。
 俺たちは夜昼構わず仕事をしているから、家に篭っているわけにはいかない。
 閑散とした電車に乗って、家と職場を行き来していた。
 この日は会社で仮眠を取ったから、家に帰ろうとした時は、もはや始発の時間帯だった。
 6月だから、もう空が明るい。
 俺は疲れた体を引きずって、地下鉄の駅に向かった。
 「良かった。あと5分で電車が来る」
 周りを見回したが、さすがに客は一人もいない。

 「始発電車が到着します」
 ここはターミナルだから、電車は最初にこの駅に回される。
 アナウンスが入ったので、俺はベンチから立ち上がった。
 「ああ」と伸びをして、後ろを振り返ると、ホームに若い女が立っていた。
 「この時間に。珍しいな」
 スタイルの良い女だが、どことなく影がある。
 「何だろう。悩み事でもあるのか」
 電車が近付く。すると、女がホームのへりに歩み寄った。
 「おいおい。まさか飛び込もうとしているわけじゃないよな」
 俺はそう疑って、女に近付いた。
 警笛が鋭い音を立てる。
 「おい。止めろ」
 俺は女に飛びついて、後ろに下がらせた。
 「ゴオ」と音を立てて、電車がホームに入って来た。
 「良かった。間に合ったな」
 俺は女を抱きすくめていたのだが、ここで女の体から手を離した。
 女が振り返る。
 すると、女の両目がまだら色をしていた。
 「うわ」
 俺の目の前で、女の姿がぶしゅぶしゅと崩れ、タコの触手が飛び出て来た。
 もっと恐ろしいことに、女の頭はそのまま人の頭のままだった。
 触手が伸びて、俺の首根っこを掴む。
 「いかん。体液を吸い取られてしまう」
 俺はそう思ったが、しかし体が動かない。
 (なるほど。ある種の虫と同じように、吸盤から毒を出すのだな。)
 奇妙なことに、俺は今まさに殺されようとしているのに、頭の中が冷静だった。
 吸盤が貼り付いて、俺の体液を吸い始める。
 「やられたか。俺はこれで終わりだ」
 そう思った瞬間、しかし、化け物は熱い物にでも触った時のように、急いで手を離した。
 化け物はするすると俺から離れ、地下鉄の線路に下り、暗がりの中に消えて行った。

 「何があったんだろ。もしや」
 この辺、俺は本職だ。化け物が俺の何かを嫌ったことに気が付いた。
 そいつが分かれば、あいつを退治する方法を探すことが出来る。
 俺はすぐに原因を発見した。
 「あの時、俺が服用していたのは、L828シゲルシ剤だった」
 こいつは整腸剤の一種だが、俺みたいな過敏体質の者だけが使う薬剤で、一般には売られていない。
 まずは駄目元で、この薬を試すことにした。
 すると、何と一発目で、タコ女細胞が著しく減少した。
 研究所の研究員は挙って、右手を突き上げた。
 「やった。これであの化け物を倒せる」
 皆で快哉を叫んだ。

 興奮が醒めた頃、柴田が俺のところにやって来た。
 「先輩。やりましたね」
 「ああ。これであのタコ女を殺せる」
 「ところで、先輩は『遊星からの物体X』を観ましたか」
 「ジョン・カーペンターの?ああ、観たことはある」
 「あの映画に出て来る宇宙人は、細胞のひとつ1つが独立した生き物で、かつ全体として意思を共有しています。まるで兵隊蟻のようにです。しかも、宿主を乗っ取ると、そいつの知能や記憶までも手に入れる。タコ女がそれと同じだとしたら、恐ろしい話ですね」
「体液を吸い取って、相手の脳内情報を手に入れるってか。まさか。それなら先へ先へと出し抜かれてしまう。手の打ちようがないだろうな」
 俺はそう言いながらも、少しヒヤッとした。
 あの化け物は、人を殺した上で、その獲物の姿に化けられる。脳内情報をも手に入れている可能性は否定出来ないのだ。
 「ま、今は取り越し苦労だろう。人は一歩ずつしか前に進めないから、目の前のテーマの解決を考えるしかない」

 ここで、俺は家に電話を掛けた。
 「今日はもうそろそろ帰る。飯は途中で食っていくから、先に寝ていていいぞ」
 すると、妻は「そう。分かったわ。じゃあ、私は先に寝てるからね」と答えた。

 いざ帰ろうと思ったが、俺は性格的に、区切りのよいところまでやらないと我慢出来ない性質だ。そこで、もう一度、ラボに引き返し、L828シゲルシ剤を精製することにした。
 警察に配備するには、何十トンか作る必要があるが、ひとまず1トン近くの薬液は出来ている。
 これが終わり、俺が駅に向かったのは、もはや終電間近の時刻だった。
 さすがに人はまばらだ。
 まだ世の中の人は、俺たちが有効な武器を見つけたことを知らない。
 
 ホームに立っていると、遠くの方から女が近寄って来た。
 その女は俺の妻だった。
 「あれ。女房じゃないか。どうしたんだろ」
 妻はにこやかに笑いながら、俺のほうに近付いて来る。
 「先に寝てるって言ったのに・・・」
 ここで俺の頭に、柴田の言葉が蘇った。
 「あの化け物が獲物の脳内情報をも手に入れられるとしたら、恐ろしい話ですね」
 目の前に妻の顔が近付く。
 ここで俺はポケットに手を入れ、注射器の蓋を外した。
 「何てことだ。こいつは俺の知識や記憶を手に入れ、自分の窮地を悟った。そこで、俺の家に行き、妻を吸って、成り代わったのだ」
 もちろん、その目的は俺を殺すためだ。俺を殺した後は、俺に成り代わって研究所に行き、研究員全部を殺すつもりなのだろう。
 俺は嗚咽を漏らしながら、妻を抱きしめ、背中に注射器の針を突き立てた。
 ここで覚醒。

 今のところ、断片的な夢で、色んな映画の寄せ集めなのですが、最初から丁寧に書き直せば、読めるようになると思います。
 「体がタコで頭が女」は、さすがにグロいです。
 続編は、タコ脚の上に人の頭が二十個の化け物でしょうか。それだと、ほとんど物体Xですね。

 薬瓶のラベルには薬名がきちんと書いてありました。
 いったい、何を象徴する言葉なのでしょう。

 追記)ワード文書で作成し、FBやブログに転写するわけですが、片方ではなんとも無いのに、片方で「襲い」が「遅い」に化けていました。同じ音で文字が化けると、これを見つけるのは大変です。
 送信すると、さらに増えますので、メールで原稿をやり取りする編集者は大変だろうと思います。