日刊早坂ノボル新聞

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◎夢の話 第941夜 海での出来事

◎夢の話 第941夜 海での出来事

 21日の午後11時に見た夢です。

 

 新鮮な魚が食べたくなったので、漁港に出掛けることにした。

 目当ての漁港には数時間で着き、最初に周囲を見物した。

 松林の生えた小島が沢山見えている。

 「きれいなところだな。災害の前ならもっと美しかっただろうに」

 早々に見物を切り上げ、港に行く。

 地図を頼りに市場に向かうと、そこに鮮魚市場らしきものはなく、何やら工事をしていた。

 タイヤの直径が二㍍もありそうな巨大なトラックが行き来している。

 これはこれで見ものだ。確かロシアの鉱山で使う型で、この国にはないはずのトラックだった。

 

 沖の方に目を向けると、遠くの方に白波が立っていた。

 「あれは何だろ。さっきまでは無かったのに」

 こんなのはさんざん学習したから、すぐに分かる。

 「あれは津波だ。津波がこっちに寄せて来るんだ」

 俺は直ちに周囲にそれを知らせ、小走りで高台の方に向かった。

 周りには百人くらいの人々もいたが、皆が慌てて山側の方に走り出した。

 

 坂を三十㍍ほど登ったところで、ドドドっと津波が押し寄せて来た。

 だが坂の手前で波は止まり、静かに引いて行った。

 工事現場は波に洗われたが、人家の方に被害は出なかった模様だ。

 暫くの間様子を見て、皆が再び港の方に戻った。

 そこの駐車場に車を置いていたから、車がきちんと残っているか確かめるためだ。

 だが、さすがに車は海水に浸ったようで、あちこちにゴミが付着していた。

 「これじゃあ、この車では帰れないよな。何か手段を探さないと」

 

 この時、後ろの方で叫び声がした。

 「あれを見て。海から変なのが上がって来る!」

 言われた方を向くと、海面に黒い頭が沢山出ていた。

 すぐに体が出たから分かったが、そいつらはひとの体のかたちをしていた。

 だが、半魚人のような姿をしたものがいれば、黒いコールタールの人形みたいなヤツもいる。要するに化け物軍団だ。

 「さっきの波と一緒に海底から上がって来たのだ」

 こいつらがけして好ましい訪問者でないことは、その風体を見れば分かる。

 第一、眼だけがギラギラ光っている。まるで肉食獣が獲物を狙う時の光り方だ。

 

 「きゃあ」と女性が叫び、再び高台に向かって走り始める。

 先ほど、そっちに逃げたばかりから、つい反射的にそこに向かったらしい。

 化け物たちは、そんな逃げ惑うひとたちを追い掛け、一人また一人と捕まえて行く。

 「俺は逃がられないから、戦うしかないよな」

 俺は心臓に持病があり、走ることが出来ない。さっき津波から逃げた時のような小走りが精いっぱいだった。

 良い具合に、工事現場にスパナがあったのでそれを拾い、後ろを振り向いて、化け物を待つことにした。

 化け物はすぐにやって来た。

 体中に海藻を巻き付けた化け物が俺の方に走って来る。

 俺はスパナを構え、そいつが間近に来たら殴ってやろうと身構えた。

 

 昆布の化け物が目の前数メートルまで届いた。

 俺がスパナを振り上げると、そいつが足を止めて俺のことを見た。

 化け物は上から下までじろじろと眺め渡した。

 「さあ来てみろ」

 俺が叫ぶと、しかし、化け物は不意に方向を変え、別の方に走り去った。

 これには、去られた俺の方が面食らった。

 「こりゃ一体どういうわけだよ」

 うーん。

 

 俺はその場にぼーっと立ち、周囲を見回した。

 すると、ほとんどの人が化け物たちに捕まっていた。

 「ああ、皆、あいつらに食われるんだな」

 ここで俺はどうすればいいのか。

 

 だが、その次に起きたことは意外なことだった。

 一匹の化け物が自分が抑え込んだひとの肩にひょいと飛び乗ったのだ。

 ひとの頭を挟んで跨ったから、要するに肩車の体勢だ。

 他の化け物たちも同じように、自分が捕まえた人の肩に飛び乗った。

 数秒後、さらに驚いたことに、化け物たちの姿が見えなくなった。

 「ありゃりゃ。あの化け物たちが消えちまった」

 生身の存在ではなかったわけだ。

 

 化け物に襲われた人たちは、暫くの間、茫然と立っていたが、やがてゆっくりと動き出した。

 俺はその中の一人に声を掛けた。

 「大丈夫ですか」

 その中年の作業員は首を横に小さく振りながら俺に答えた。

 「大丈夫だけど、何が起きたのかな」

 「何か変化はありますか?化け物のことを覚えてます?」

 「え。化け物って何?何のこと?」

 「化け物に捕らえられたことを憶えてないの?」

 「全然。でも体が重いね。自分の体の感覚じゃない」

 ここで合点がつく。

 「はっはーん。さっきのは海で死んだ幽霊が魔物化した奴らだったか」

 幽霊なら、ひとの魂の中に入り込むことも無いわけじゃない。

 

 ここで俺は我に返る。

 「じゃあ、何で俺のことをスルーしたんだろ」

 ま、幽霊たちは俺の肩に手を載せたり、抱き着いたりするけれど、まるで挨拶のよう。

 すぐに離れて行く。

 「ま、そんなのはどうでもいいか。結局、俺は無事だったもの」

 俺は自分を納得させ、後ろを振り向いた。

 そこには俺の正面に工事現場の事務所があったのだが、そのガラス窓に俺の姿が映っていた。

 それを見て、俺はなぜ化け物が俺をスルーしたかが分かった。

 俺の肩には、二㍍半もあろうかと思しき身長を持つ「でかい女」の姿があった。 

 

 「なあるほど。俺には既に先客がいたわけだ。これじゃあ、肩には乗られないや」

 ここで覚醒。

 

 おまけに、後ろにはムカデ行列のように、幽霊が十数体も繋がっていた。

 これじゃあ、確かに定員オーバーだ。