日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎「ぢんない。叫びを請けよ」

◎「ぢんない。叫びを請けよ」
 この記事は「三途の川便り」でも「夢の話」でも構いませんが、ひとまずこちらにして置きます。

 27日の午前9時。家族を駅まで送って来た後、居間で横になっていると、何時の間にか眠りに落ちていた。
 すぐに夢を観始める。
 若かりし頃の思い出を作り変えた話で、友人を連れ立って海に行った時の経験を再現する夢だ。男女数人で泳ぎに行ったり、花火を見たり。
 女の子の一人に興味があり、「このこと付き合うようになれるかどうか」などとつらつら考える。そんな夢だった。
 ところが、それと並行して別の夢も観ている。
 モニターを二つ並べて眺めるように、同時に別の夢を観ているのだ。
 こちらは、ただ真っ暗な闇を見詰める夢だ。
 漆黒の闇をいくら見ても、何も変わらないのだが、それでも全身全霊を集中し、闇に眼を凝らしている。

 すると、闇の中から声が聞こえて来た。
 しわがれた声の主は、たぶん男。いわゆる壮年くらいの齢だろう。
「ぢ・ん・な・い。さけび・を・うけよ」
 このフレーズを繰り返している。
 ぢんない?人の名前なのか。しかし、よくある苗字の「陣内」ではなく、「鎮内」のような気もする。「じんない」ではなく、あくまで「ぢんない」。
 これって、「あの時」に関係しているのか。
 あの時とは、俺が行軍に参加した時のことだ。
 大塩平八郎一揆に賛同した俺は、たぶん最後の行軍の際に、隊列の最左か二番目の列の七番目の位置にいた。この辺は記憶が曖昧で正確な位置関係を忘れてしまったが、状況は憶えている。投降してもどうせ斬首だから、幕府軍と戦って死ぬことにしたので、その最後の戦いに赴くところだった。
 戦闘が始まると、俺は最初の方で、刀で切られ、最後は槍を鳩尾に突き刺されて死んだ。
俺はこの夢を、子どもの頃から何百回も夢に観ている。昨夜の夢もそれだ。
 ただし、あの世のルールは現世とは違うから、誰か特定の人物ではなく、要素、すなわち、そういう境遇にあり恨みを遺して死んだ者の心境なのかもしれん。

 ここで思い出すのは、先日の約束だ。
 俺は幽界に通じる穴の前まで行き、そこで祈願し、約束した。
 「俺の命を延ばしてくれ。その代わり、声を聞き届ける」
 人はかたちを眼で見て、音を耳で聞かねばならないが、俺にはもうひとつ「振るえ」が分かる。心の振るえ、魂の振るえ。そんな感じ。
 それがこういう風に「声」になって聞こえる。

 ここで眼が覚める。
 「それじゃあ、ここからどうしろというのだろ」
 「ぢんない」は別として、「さけびをうけよ」は分かり易い。
 「叫びを受けよ」か「叫びを請けよ」のいずれかだろう。
 すなわち、圧制に苦しんだ者の叫びを聞き止めるのか、願いを叶えるかのどちらかということだ。
 ここで、ほっと胸を撫で下ろす。
 「俺は『声を聞き届ける』と約束した。だから、声を聞き、それを伝えるだけでよい」
 「代わりに無念を晴らす」なら、刀を持って、悪代官や殿様を殺しに行かなくてはならなくなる。
 恐らく、最近、現世で起きていることの「気配」は、幽界にも伝わっているのだろう。
 それなら、「一揆勢が『許せん』と言っている」という言葉を伝えるだけでよい。
 もしくは、悪徳政治家のいる近くに行けば、そこで幽界の住人たち(悪霊とも言う)は勝手に標的を見つけて、そこに群がるだろうと思う。

 あの悍ましい声の響き。
 覚醒時にも幾度か聞いたことがあるが、想像や妄想によって生み出されたものとはまったく異なる重みがある。
 極めて不愉快だ。