日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第682夜 浄霊

◎夢の話 第682夜 浄霊
 28日の午前2時に観た夢です。

 「当家に来て、部屋を見て貰えませんか。お願いします」
 眼の前には、35歳くらいの女性が座っていた。
 (何だろ。何の話だろ。)
 急に夢の世界に降り立ったので、状況が分からない。

 「奥の座敷で物音がするのです。足音だったり、窓を閉める音だったり。もちろん、そこに誰もいない時の話です」
 ああ、なるほど。「あの世」系の話か。
 「そういうのは、霊能者とか祈祷師に頼めばいいんですよ」
 「風を吹かせて桶屋を儲けさせる」みたいなことをする人種ですけど。
 お経も祝詞真言も、実はまったく効力が無い。念の圧力で、よからぬものを「しっしっ」と追い立てようとする程度。
 「だって、信用出来ないじゃないですか。料金だってバカ高いですし」
 でも、大の大人を頼めば、それがどんな人でもそれなりに費用がかかる。当たり前だ。
 わざわざ俺のところに来るのは、俺がその手の研究家だから、「たぶん、ボッタくられない」と見込むせいだろう。
 「そういうのは、お断りしてるのです。仕事にしているわけでも、慈善活動をしているわけでもないですし」

 すると、女性はほとほと困り果てた様子で、続きを話し始めた。
 「始まったのは、ごく最近のことです。それまで何十年も何もなかったのに」
 何十年も。となると、古い家なんだな。
 そういう現象は、新築の家でも起きるが、まあ、オーソドックスなタイプらしい。
 「叫んだりはしないんですよね。実害がなければ、時々、水を捧げてお線香を焚けばいいんですよ。あとは気にしないこと。もともと、この世とあの世は同居してるんだし、住み分ければ平気です」

 「当家では男は高校生の息子だけですし、あと私と娘だけなのです。女と子どもじゃ、こういうのはうまく対応出来ません」
 ま、それもそうだ。「怖い」と思い始めると、もはや止められなくなる。
 「先生。どうかお願いします」
 女性は身をよじるように助力を求める。
 その姿が何とも色っぽい。
 (あーいかんいかん。また俺の弱点が出そうだ。俺は何と言ってもエロオヤジだものな。)
 場所を訊くと、さほど遠くでもなかったので、5分後には行くことに同意した。
 もちろん、この世にタダのものはないから、それなりの謝礼は貰うことになる。

 家は古い町屋のつくりで、元々が商家だった。
 店舗部分が表にあり、裏には土蔵が3つと母屋が建っている。
 その母屋の一番奥に座敷がある。
 「ここは何時頃建てられたのですか?」
 「明治30年です。2、3度改築していますが、基本的な構造は変わりません」
 「この家で親子3人で暮すとなると、掃除が大変ですね」
 「時々、掃除の人に来て貰っているのです」
 そりゃそうだ。部屋が十幾つじゃあ、毎日2部屋3部屋ずつ掃除しなくてはならない。

 「私には姉妹が4人いますが、皆嫁に行き、末娘の私が家を継いだのです」
 「じゃあ、ダンナさんは婿養子だったのですか」
 「そうです。うちに来たら、働かなくなったので、結局は離縁しました」
 「離縁」ね。主人は奥さんだから、奥さんから三行半を渡したということだ。

 座敷の手前に大広間があったが、そこの廊下に廊下に家族の写真がかけられていた。
 話の通り、姉妹が5人並んだ写真もある。どれが誰だか区別がつかぬほど似ており、いずれも人の眼を惹くような美人姉妹だった。
 「お姉さんたちはおきれいな方ばかりですね。もちろん、貴女を含め、ご姉妹皆がという意味です」
 俺のおべんちゃらに、女性はほんの少し微笑むだけで否定はしなかった。
 
 座敷の襖を開く。
 「わっ」
 俺は思わず声を上げてしまった。
 中に別の女性がいたのだ。
 予想外のことなので、さすがに驚く。
 女性は何枚か畳の上に着物を拡げて、それを眺めていた。
 「あら。お姉さん。来てたの」
 「ええ。誰もいなかったから勝手に上がり込んでたわ」
 姉だったのか。
 「こちらは2番目の姉です」
 「こりゃどうも。初めまして」
 「こんにちは。ここの縁側に古い箪笥を出してあったのですが、何枚か私の着物があったので、取りに来たのです。びっくりさせてすいません」
 齢の頃は42、3というところで、こちらもきれいな女性だった。

 「お姉さん。この部屋で音がするから、どうなっているのか調べて貰うことにしたの。この方は本城先生」
 「よく分からないけど、よろしくお願いします」
 「改めてこちらこそ」
 俺は再び頭を下げた。
 ここで妹が姉に尋ねる。
 「お姉さんがここに来て、何か変わったことはなかったの?」
 姉ははっきりと首を横に振った。
 「そんなの。あるわけないじゃない。ここで生まれ育ったんだし」
 「そっかあ」
 ま、何も無ければそれに越したことはない。
 不安があると、色んなものを感じ取るもんだ。
 俺は少しく安心した。

 ここで、玄関の方からチャイムの音が聞こえて来た。
 「ピンポーン」
 この家の主、すなわち末妹の女性が振り返る。
 「あら。誰かしら」
 この座敷の隣が大広間で、その隣の常居の前に玄関がある。
 襖を開けたままにして来たのだろうが それでも随分と音が通る。
 「音が通りますね」
 すると、姉が「この家は天井が高いので、音がよく響くのです」と答えた。

 妹が玄関に向かう。
 襖が半開きで、廊下を歩く音や途中のガラス戸を開く音が鮮明に聞こえる。
 玄関は引き戸で、これもカラカラと乾いた音を立てた。
 この家の主(妹)が、ここで突然、「あっ」と声を上げた。
 訪問客の声がそれに続く。
 「美枝。ちょっと用事があって近くまで来たから来てみたの」
 主(妹)が叫ぶ。
 「お姉さん。今来たの?じゃあ・・・」

 その続きがさらに鮮明に奥の部屋まで届く。
 「じゃあ、今、座敷にいるのは誰なの!」
 う。俺は女性の美貌に気を取られ、すっかり油断していたらしい。
 前にいる女の顔を見ると、女は無表情に俺のことを見返した。
 ここで覚醒。

 総てが「俺」を呼び寄せるための罠だった、みたいなストーリーです。
 急いで書き留めましたので、誤変換がかなりありました。
 
 病人や高齢者が、幻覚にせよ本物にせよ、「この世ならぬもの」を見始めると、余命はそこから2年以内です。多くは半年。
 私は3年を超えていますので、あの手この手の延命作戦はそれなりに効いているのではないかと思います。
 でも、反動ももちろんあり、毎夜毎夜、悪霊が夢に出ます。もはや当たり前なので、夢の話にもほとんど書かなくなりました。