日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第726夜 伯爵

◎夢の話 第726夜 伯爵
 13日の午前3時に観た夢です。

 我に返ると、俺は広い部屋に立っていた。
 すぐ傍に男がいる。
 四十台半ばで、品の良い風貌をしていた。
 何となく、「この人は伯爵だな」と思う。

 伯爵が口を開く。
 「ようやくここまで来たね。君のことを待っていたよ」
 ここで初めて、俺は自分のことを見返した。
 壁に鏡があり、そこに俺の姿が映っている。
 俺は二十三四歳くらいの年恰好だった。

「これから君と勝負しよう」
 伯爵が目配せをした。
 勝負。勝負って何だろ。この大広間でやることなのか。
 広いフロアで、どこかボーリング場に似ている。中央に柱がないせいだな。
 まさかこの伯爵は俺とボーリングでもしようってか。

 部屋の反対側、ボーリング場ならピンの立つ機械の位置には、カーテンの下りた小部屋がある。
 「まずはあそこを確認しよう」
 伯爵は俺を先導して、カーテンの小部屋に案内した。
 「君に与えられた課題はこれだよ」
 伯爵がカーテンを引き上げると、中の様子が明らかになった。
 
 その部屋の中には、ベッドがあった。中世の貴族が使うような大きなベッドだ。
 そしてそこに誰かが横になっていた。
 初老の女性だ。
 俺はその顔に見覚えがあった。
 「お袋」
 母はそのベッドに横たわり、目を瞑っている。
 ほとんど動かないが、ごく僅かに身動ぎするのが見える。
 
 「お袋。まだこっちの世界にいたのか」
 まあ、1年から3年の間は、この世とあの世の間に留まる者もいる。
 家族を失くした者が、身近な場所で、亡くなった者の存在を感じることも多い。
 「急ぐ必要は無いが、この世に未練を残さぬように、徐々に送ってやらねば」
 そういうのは、まさに俺の務めだろう。
 何となく納得する。
 
 しかし、ここで俺は気がついた。
「でも伯爵。これは俺の母です。それと伯爵と俺との勝負に何の関わりがあるのですか?」
 まるで見当もつかない。
 伯爵の答えを待つが、伯爵は少しく微笑んだまま、なかなか返事をして来ない。
 ここで覚醒。

 「伯爵」は正確には菊池武夫男爵。