日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第741夜 庭に誰かがいる

◎夢の話 第741夜 庭に誰かがいる
 19日の午前2時40分に観た夢です。

 「チリチリチリ」とベルが鳴る。
 電話のベルの音だ。
 目を覚まし、時計を見ると、2時40分だった。
 「ああ。また起こされたか」
 最近、夜中の2時から3時の間に、頭の中でベルの音が響いて眠りから覚める。
 「ま、玄関のドアを叩かれることを思えば、気にならない」
 もう一度、体を倒すと、再び眠りに落ちてしまう。

 半覚醒状態のまま、夢を観始める。
 布団に仰向けになっていると、知らぬ間に家人が隣に座っていた。
 家にいる時、俺と家人はいつも隣に座っている。体が触れる近さだ。
 家人はテレビを観たり、ペーパークラフトを作ったりする時は、必ずダンナの隣に座るのだ。
 「このトシの夫婦なら、まさに異常だよな」
 ま、今、家人は里帰り中だから、こいつは夢だ。
 俺は夢の中にいるのだ。そういう実感がある。

 すると、家人が俺に言う。
 「ね。誰か家の外にいるよ」
 この時、俺はぱっと母を思い浮かべた。
 「イケネ。お袋が散歩に出たのを締め出しちまったか」

 母は昨年亡くなったが、時々、俺の家に来る。
 2階の娘の部屋にいて、ほとんどの場合、娘のベッドに座っている。
 自分が来たことで、この家の者を驚かせてはいけないと思い、ただじっと座っているのだ。
 でも、さすがに退屈するから、時々、2階を歩く。
 その足音が聞こえるので、その都度、俺はそこに母がいると悟る。

 その母がちょっと外に出た間に、息子が帰って来てドアの鍵を閉めたのかも知れん。
 慌てて、窓に行き、カーテンを引き開けた。
 すると、窓のすぐ外に、女の人が立っていた。
 背丈が160センチくらいほっそりとした女の人で、あまり派手ではない花柄の着物を着ている。
 「ありゃ。これはこの世の者ではないな」
 顔を見ると、少し母に似ていた。28から32くらいの間の年恰好だろう。

 「果たしてこれは母なのか、母ではないのか」
 手を留めて考える。
 死ぬと、心の中が外見に反映されるから、基本は自分が「なりたい姿」になる。
 俺なら、おそらく30歳くらいの時の外見だろう。
 心の状態によって、顔かたちも少し変わる。
 死ぬ時に恨みや憎しみを抱いたままだと、見るもおぞましい表情になるのだ。
 ほとんどの幽霊はこの世への未練を抱えているから、概ね薄気味悪い顔をしている。

 「母に似ているが、違うひとだよな」
 では、何しに来たのだろう。
 この女は幽霊の割には、穏やかな表情をしている。
 誰か相撲取りの「美人妻」に、幾らか雰囲気が似ていた。

 女の人は俺の顔を見詰め、何事かを話していた。
 ガラス越しでもあり、どういう内容なのかが分からない。
 ニュース番組で女性アナウンサーが淡々と事実を話す時の様子に似ている。

 「何を伝えたいのだろう」
 俺は窓の鍵に手を掛けた。
 窓を開ければ、話が聞けると思ったのだ。
 しかし、寸前で躊躇した。

 「このひとはこの世の者ではない。係わらぬ方が良いのかも」
 悪霊は存在するが、基本的に善霊はいない。執着心を解きほぐすことが出来た幽霊は、霊界に昇華してしまうからだ。ひとの姿を保っているということは、何か執着心を抱えているということだ。
 しかし、その女からは、微塵も悪意が感じられない。
 もちろん、幽霊だから、基本は無表情なのだが、悪意があれば、即座に顔に出る。
 それが幽界のルールで、心のうちは隠せない。
 そこが「この世」と違い、わかりやすいところだ。
 ま、幽霊の心の中は単純だから、ひとの心よりははるかに清んでいる。
 もし生きているひとの心の内が外見に現れるとしたら、ほとんどの人間は見るもおぞましい怪物の姿になる。心の中は欲に塗れ、他人の悪口で溢れている。

 女は淡々と何かを語っている。
 「まさか、この先こういうことが起きて、とか、俺に注意喚起をしているわけではなかろうか」 
 女の感じは、俺を「お迎え」に来たのではないことが明白だが、もしも、この先の話なら・・・。

 「もしそうなら、知らぬ方がいいよな」
 この先に何が起きるかが分からないから、人生は楽しい。
 あらかじめ結果を知っているより、その都度、喜んだり落胆する方がはるかにましだ。
 もちろん、興味はあるから、聞いてみたい気はする。

 「さて、開けた方がいいのか、悪いのか」
 俺は掛け金に手を掛けたまま、じっと目の前の女の顔を見続ける。
 ここで覚醒。