日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎いい感じに不味い味 (382)

◎いい感じに不味い味 (382)

対面の車窓に見ゆる老人の
    食すバーガー 我のに似れり

 長く逡巡した挙句、医療費の補助申請をすることにした。障害者が窓口で払う医療費の割合は同じなのだが、申請するとひと月当たり1万幾らかまでは還付して貰える(確か)。
 当方は福祉行政の「やっかいになっている」気分が嫌で、これまで申請して来なかったのだが、考えを変え、申請することにした。年間あたり十五万以上返って来る勘定になるし、健康な人なら貰えるだろう年金は、結局、1円も貰わずに冥土に旅立つことになるからだ。
 健常者はこういう障害者が払って来た年金で老後を暮らすんだから、エラソーな顔をするなよな。

 窓口に行くと、40台後半の女性が応対してくれたのだが、極めて親切でいい感じだった。今はこういう取り扱いは外部委託だから、たぶん、福祉団体の事務の人だろう。
 車に戻る道々、「さっきのオバサンは良い感じに年齢を重ねているわけだな」と感服した。
 ま、当方は口が悪いキャラだから、ここは「良い感じにトシを食ったオバサン」という言い方になる。 美人でも小奇麗でもなく、それなりの人生を送って来たが、きちんと他人に愛想良く振舞える。
 トシを取ると、誰でも次第に根性が悪くなるから、「快く」「潔く」みたいな振る舞いが見えると、「良い感じ」になる。そんな感じ。

 我に返ると、ちょうど昼過ぎの頃合で、小腹が空いていた。
 「こういう時は、『良い感じに不味いもの』が食いたいよな」
 駅の生蕎麦とか、「大衆食堂」の定食とか、小さい中華屋の焼き蕎麦とか、五百円で食えそうな簡単な代物だ。旨味を詰め込んだような味ではなく、ごくシンプルな味のやつ。

 「親子どーんなんかちょうど良いよな」
 ここはその都度説明が要る。
 前に某所で「親子丼」を注文するのに、「親子どんぶり」と言ったことがあるのだが、女性店員にすかさず「親子どーんですね」と直された。そこでそれ以来、「親子丼」を言う時は面白がって、「親子どーん」と発声するようにしたのだ。ま、ブログネタにはちょうどよい。
 そうしたら、それが癖になってしまい、常に「親子どーん」と言ってしまうから、今度はその言い方で店員が止まるようになっている(笑)。でももはや止められなくなった。

 ここで、あるスーパーの脇にほとんどスタンドなみの蕎麦屋があったことを思い出し、そのスーパーに向かった。
 駐車場に車を停めると、向かい側に停まっていた車の中で70歳くらいの高齢男性が何かを頬張っていた。何気なく目を向けると、ハンバーガーとコーラを持っている。
 「Mとかは、まさしく『良いくらいに不味い』食い物だよな」
 中高年にとっては、到底、美味いものではないが、懐かしいかも。
 そこで予定を変更して、一番安いバーガーを買い、向かいの車のジーサンと同じように車内で食べた。

 「このジーサン。独り暮らしなのかな」
 スーパーの駐車場で老人が※ックを食べるさまは、短歌になりそうだが、急なので上手い言い回しが浮かんで来ない。うーん。
 「独り暮らしも、慣れればそう悪くはないだろうな」
 もちろん、そこには限定符がつく。
 「もし、健康だったらの話だがな」
 持病があると、独りはキツいぞ。
 「ジーサン。そのトシでバーガーを食ってるお前はどうだね?」
 でも、そう言うこの当方だって、※ックを食べていた。
 肉類を食べなくなって久しい。※ックを食べるのは、十年ぶりではないかと思う。

 食い終わった後に呟いた。
 「やっぱ、俺には親子ドーンの方が良かったかな」

 そこから遠回りして、高麗神社に参拝した(382)。
 カメラを持参しなかったので、画像は無し。
 ちゃんと短歌を直そうかとも思ったが、イマイチ浮かんで来ない。