日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎根城での体験

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根城にて

◎根城での体験

 八戸の根城(ねじょう)を5年に1度くらいの割合で訪れる。

 城壁・石垣がなく、比較的なだらかな場所に建てられた「平城」なのだが、独特の風情がある。すぐ隣の博物館も見ごたえがあり、丸一日楽しめる。

 十年位前、体を壊し、リハビリを続けていた頃、気分転換に根城に行った。

 4度目位の訪問だと思う。

 建物が復元されているから、中を見て回ったのだが、その各部屋で画像に煙玉が写った。

 煙玉には自然現象から説明のつかない現象まで様々あるが、さしたる影響を及ぼすことは無いから気にしなくてもよい。

 さほど気にも留めずに市内のホテルに戻った。この日はこの街に泊ることにしていたのだ。

 すると、就寝中に夢を観た。

 この日の昼に見学した板間に、茣蓙のようなものを敷いて誰かが横になっている。

 その人の上に掛けられているのは、大き目の着物だ。

 いわゆる「夜着」で、かなり昔の寝具だろう。昭和にだって、布団の中に「丹前」という着物を被って眠る習慣は残っていたから、割と最近まで「夜着」の名残はあったと思われる。

 呆然とその情景を眺めていたが、微動だにしないから、夢の中の私は「もしやあれは死人では」と思った。

しかし、しばらくするとその着物が少し動いた。

 ゆっくりと上半身が起き上がって来る。

 夜着の上掛けが外れ、中の人が顔を出したのだが、横になっていたのは女性だった。

 女性は無地の布を使った着物を着ていたが、やはり死に装束に見える。

 顔からすると、二十台の半ば。目鼻立ちの整った顔立ちをしている。

 眼は瞑っていたが、確実に意識はあるのだろう。周囲に神経を張り巡らしている気がする。

 

   夢の中の私は漠然と考えた。

  「この光景は、まさしくホラー映画だよな」

 死体がゆっくりと起き上がって来る、あのお馴染みの場面だ。

 実際、この女性は次第に体を起こしているし、完全に上半身が立ったら、今度は眼を開き、私の方を向くだろう。 

 そんな確信がある。

 「その先はどうなのるのか」

 ホラー映画の展開とは、もちろん、違うだろうが、理解の範疇を超える。

 それが何とも言えず恐ろしい。

 「こういう話は昔の説話にあったよな」

 今昔だったか、宇治拾遺だったかは忘れたが、盗賊の「袴垂」が荒れ果てた廃屋に行くと、死体があって・・・みたいな筋だ。

 夜になると、その死体が起き出して、袴垂を食おうとする。

 

 この辺から、私は自分が「夢の中にいる」ことを意識した。

 これも時々あるが、頭のどこかが覚醒しており、今が「現実ではなく夢」だと告げてくれるのだ。

 だが、そうは言っても目の前のものに対する恐怖心が消えることは無い。

 何も出来ず、ただじっと女を眺めている。

 こんな夢だった。

 

 病気で普通の仕事が出来なくなったから、仕方なく暇潰しに雑文を書いていたが、その頃から真面目に時代小説を書くようになった。もっとも、書いているのは、怨念や執念にまつわる話で、多くは「あの世」に関わることだ。

 当初、「こうすれば受けそう」みたいな考えがあったが、すぐに無くなった。

 必要なのは、「生と死」の本質を見極めることだから、人がどう読もうか、感動しようがしまいがどうでもよい。

 死んでも先に進めず、この世に自我を留めたままの者たちが大勢いるから、そういう者の執着心を晴らすような創作が出来ればそれでよい。

 その後は、何ら考えなくともキーが動くようになった。

 時折、あの女性の夢を観るが、あちらもいまだに私のことを見ている。

 

 この1、2年は、あの女性が近くにいなかったのだが、そのせいなのか「考えて」原稿を書くようになっていた。それだと、日に十行も進まない。

 このところ、あの女性の姿を身近に感じるのだが、それと同時にキーがようやく動き始めた。これからは、おそらく日に五枚、十枚、三十枚と増えていくと思う。

 

 画像は何回目かの根城のもの。こういう画像は六百枚くらいあったが、昨年整理して、大半を捨てた。これはたまたまけし忘れていたものだ。

 地名をそのまま記しているのは、この地に何かがあるのではなく、私の方にあるからだ。

 こういうのも、世間で話されているものと実態とはまるで違う。