◎晴れ、時々「死人」
心臓の調子が良いのは7月から9月の間だけで、あとは何らかのトラブルが発生する。
寒くなると覿面にそれが出て、酷い不整脈になる。
「ドンドコドッコーン」
しゃっくりを起こしたようなのが混じるから、自分でも驚く。
もっと酷い時には、心臓が小休止することだ。
鼓動を8拍打った後に、2泊分、停まっていたりする。
その都度体が強張るが、幸いなことに、また動き出してくれるから、かろうじて生きていられる。
「エイトビートだから、ロックのリズムだよな。今や俺の人生はロックンロールなのか」
気が付けば、故内田裕也さん並みになっていた。(『十階のモスキート』は良かったなあ。)
前兆もきちんとあり、これは体感的にはまさに地震だ。
ズズズズっと揺れるから、「地震か?」と錯覚するのが最初の兆候だ。
すぐに明かり(照明器具)を見るが、これが揺れていない時は、心臓の不調のサインになる。
その後は、鼓動の音が高く聞こえる。
「ドシーン。ドシーン。ズドーン。・・・・」
こんな時は心臓が停止している時間が長くなり、五秒十秒と停まっていることがある。
前に内科医にその話をしたら、医師は笑って取り合わなかった。
「そんなことはないでしょう。ハハ」
患者が大げさに話を盛っていると思ったのだ。
「どれ。では脈を採ってみましょう」
コイツ。俺をテキトーにあしらおうとしていやがる。
そう思ったが、検査時に心臓が発症してくれるなんてことが少ないから、治療が後手を踏むわけで。
出ないだろうと思ったが、この日はびったしこのタイミングで出た。
医師が脈を採っている間に脈が止まり、8秒くらい間が空いた。
「あれま。ホントだ」
目を丸くしている。
「こういう時は苦しくないのですか?」
「動けませんね。体が強張って」
ここで、「いやあ。たまに一分くらい停まっていることがあります」と続けるが、こちらは多少盛っている。
二十秒弱が最長なのではないかと思う。
この話は循環器の医師にはほとんど言わない。
「不整脈が出ています」と申告する程度。
あれこれ調べられるし、調べたところで処置できないことも分っているからだ。
いつか、鼓動が停まったまま動き出してくれない日が来ると思うが、その時が当方の最期の日になる。たぶん、そんなに苦しくはないと思う。
外出すると、色んなところで幽霊らしき人影が当方を発見して、じっと見る。
画像に写る人影は、いつも視線を当方に向けているが、それはこういうのと関係していると思う。
もはや半分くらいは死人の仲間になっているということだ。