日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎扉を叩く音(続)

◎扉を叩く音(続)

 「毎年、秋から冬にかけて、深夜、玄関の扉を叩く音が聞こえる」話の続きです。

 このスレッドはもう終わったかと思っていたのだが、まだ続くらしい。

 

2月12日20時11分の記録。

 二階で仕事をしていると、玄関のドアレバーが「ガチャ」と音を立てた。

 「あれ。長女が帰って来たのか」

 長女が家に帰る時は、概ねこの時間帯から後になる。

 そのすぐ後に「キー」と音がして、扉が開いたような気がする。

 平日に帰って来るのは予定外だから、長女の分の夕食の支度をしていない。

 「何か作ってやらねば」

 椅子から腰を上げ、階下に向かおうとした。

 

 ところが、いつまで経っても足音が響かない。

 長女が中に入ると、いつもトントンと足音が響くのだが。

 階下に降りてみたが、別段、誰も入って来ていなかった。

 「扉の音がしたから、※※が帰って来たかと思った」

 家人は返事をしない。

 数日前から、当家の夫婦は冷戦状態にある(苦笑)。

 

 今に腰を下ろしたら、疲れていたのか、すぐに寝入ってしまった。

 家人の方は風呂場に向かった。

 そのまま眠っていると、家人が戻って来て、文句を言い始める。

 「何故、灯りを消すの」

 シャワーを浴びていたら、風呂場と洗面所の灯りがパッと消えたらしい。

 「ちょっと。灯りを点けてよ」と叫んだが、居間の方からは反応が無い。

 それもその筈で、ダンナも息子も寝入っていた。

 数分後に点いたのだが、その間は真っ暗。それで文句を言いに来たら、ダンナは眠っていたのだった。

 「じゃあ、あれは何?停電?」

 うるさく騒ぐので、こちらもすぐにキレる。

 「眠っているんだよ。静かにしてくれ。停電なんか起きちゃいないから」

 停電すれば、ファンヒーターの電源が切れ、止まってしまう。ヒーターは動き続けているから、すなわち停電は無かったということだ。

 「じゃあ、スイッチで消したということ?まさか幽霊」

 他の家なら異常な会話だが、当家では普通だ。

 誰もいない筈の家で、足音がすることなどは、頻繁にある。

 だいたい、このスレッドだって、夜中の2時3時に、玄関の前に「誰かが立つ」という話だ。

 家人が自室に去った後で、うつらうつら考えた。

「扉を叩くくらいならまだしも、中に入って悪戯をされるんじゃあ、堪らんな」

 鍵のかかっていない扉が、「突然、開かなくなる」ってのも、時々あった。

 

 しかし程なく気が付いた。

 「ああ、なるほど。夫婦喧嘩をしているからだな」

 そう言えば、「お前みたいなバカはどこかへ行け」みたいなことを叫んだ記憶がある。

 ちなみに、家人はもっと激しい気性なので、三倍酷いことを言われている。

 「それでか」

 今は白い服の「御堂さま」やら、黒い服の怖い女やら、この世の者ではない者が周りに集まっている。

 そういう者たちが、当方の敵意を感じ取って、自動的に家人に寄り付いているのかもしれん。

 「道理で、今夜のノックは俺にしか聞こえていないようだった」

 要するに「私が来たよ」というメッセージだ。

 

 こりゃすぐに宥めないと。そこでまた二階に戻った。

 「『どこかへ行け』とか『死ね』と叫んでいますが、それでも俺の女房なので、我が家ではごく普通の夫婦喧嘩です。だから手は出さないでください」

 そう祈願して、お焼香をした。結果はまだ分からない。

 

 この症状がもう少し進んで、「気にくわぬ者を具体的に懲らしめる」ことが出来るようになれば便利だ、とも思うのだが、しかしそれは「呪(まじな)い」をかけることだから、先に進んではならないと思う。

 そういうのは、死後に必ずツケが回って来る。祈祷師や霊能者の死に方や死後の姿を観れば、呪いなど「やってはならないこと」だというのは一目瞭然だ。

 ひとつ間違えると、凶悪な方の仲間になり、何時の間にか亡者の先頭に立っていることになるかもしれん。それは幾度となく夢に観た自分自身の姿だから、よくよく気を付ける必要がある。

「まじない」と「のろい」は、等しく「呪い」と書くのだ。