◎<古貨幣迷宮事件簿>原状保存の大切さ
ホームページの方に「文久銭仕様の寛永銭」について記してあるが、部屋の整理中に、その品を発見した藁差が出て来た。
きちんと現状を保存していたらしい。
「どこから」「どのように」見つけられたかは、その貨幣を知る上で重要な情報となるのだが、それに極力近づくためには、なるべく所蔵状況を知ることが大切である。
さすが数千枚の文久銭を持ち続けるのは困難だったが、同時に出た枚数はかなりのものだったので、当初の出物総てを自身で買い取り、検分すれば良かったと思う。
この品の概要は既に記しているので省略するが、とりわけ背波が文久銭そのものである。やはり明和や文政とは違うし、密鋳銭とは材質が異なる。コンセプトが違うのだ。
ある先輩収集家は、この品を見て、「これが本当の文久様だな」と言ったが、仕様はまさにそれである。幾らかは試しに作ってみたのかもしれぬ。
本来の文久永宝と同様に、見すぼらしく粗雑な銭であるから、これまで見過ごされて来たのかもしれない。探せば、割と見つかるのではないかと思う。