◎古貨幣迷宮事件簿 「贋作古銭の話あれこれ」 追補
(5)ハ 中国製 虎銭
合金製寛永の件で、「その後、地方貨等が来た」と記したが、現物があったので追加添付する。
ネットを見ていると、「本物とは思えぬ」虎銭が出ていた。そこで落としてみると、やはりグラインダ仕上げ。そこで出品者に「これは贋作ですよ」と教えてあげた。
相手は中国人収集家で、彼地で仕入れた品のよう。最初はクレームだと思ったようで警戒しているので、「資料としてそのまま貰っときます」と伝えた。
値段は本物の六掛けくらい。そもそもその設定自体がおかしい。
その件でその中国人と交流が生じ、中国銭の資料を教えて貰った。
目の前の損得勘定よりも、人を介した生の情報の方がはるかに役に立つ。
様々なバリエーションを見ておけば、新手の品にも対応できる。
実際、「あ、また来やがった」と思うことが多々ある(苦笑)。古い品を買う時には「どこから出たか」をきちんと確かめる必要があるが、まったく考えない人の方がはるかに多い。
余談だが、「銀銭」の箇所で記した「別の知人中国人」に、故宮博物院の研究員を紹介してもらったことがある。研究員であり、共産党の文化委員だという。
あまり信用していなかったが、日本に来た折に「品物を譲ってあげる」というので、数百枚ほど分けて貰った。
「国宝級の陶磁器で分けられる品もある」と聞いたが、しかし、文化財の持ち出しは違法の筈である。正直まったく信用しなかった。
ところが、数年後に確かめると、その時入手した貨幣は皆本物で、中国本土と言うより日本を含む周辺諸国のものが中心だった。なるほど、外国銭なら中国の文化財ではない。
また、「草書の大観通宝の試鋳銭と通用本銭」のような正貨とは言えぬものも混じっていた。
慌てて、知人に「あの人はどうなった?」と訊ねたが、既に亡くなった後だった。
あの当時は個人博物館を作る目的で、自身の収集品を売却していたらしい。
しかし、その時の一部を各所で回覧に供したのだが、草書の大観を含め、「日本にはない」品を誰かにブックごと持ち去られてしまった。ま、誰かの想像はつく。
古銭の収集家が見下されるのは、斯様に「盗人が多い」ことによる。
しかし、日本にはない試鋳銭を盗み得たところで、人には見せられない。出せば盗んだことが分かる。
今は「いつ表に出て来るのか」と模様眺めをしている。
「他から入手した品ではない」のは、それが故宮博物院から出た一品ものであることで、私のところに画像が残っていることで簡単に証明できる。
他は「孝建」の「たぶん、誰も見たことのない」品各種だった。
とりわけ「しまった」と思うのは、国宝級の宗磁を入手できたかもしれないことだ。
こちらは法に触れそうだが、「党の委員」であれば特権でどうにでもなったそうだ。
骨董商を経ずに渡って来るなら、かなり面白かったと思う。
ちなみに、その時の「残り」のカス品を後で売却したのだが、総て中国人コレクターが買い取り、購入時の十倍の価格になった。
ちなみに、金型で作ると「サイズの調整」は難しくないとのこと。
今ではレーザーで計測して、型のサイズ変更に反映できるから尚更だ。
もはや「大きい」「小さい」でものをいう時代は終わっている。