◎古貨幣迷宮事件簿 「追加処分品」
ひと月後にはこの世を去っているかもしれんので、急いで処分することにした。
N049 絵銭 仏神・中国神 6枚組
かなり古くから作られているようで、大陸にも日本の絵銭が渡っている。
二十年くらい前に、党文化委員某氏と交流があった際に、大陸にある古銭を譲って貰ったのだが、その中に幾枚か日本の絵銭が入っていた。
「大日如来」だったのだが、確かに江戸の銭譜にも掲載されている。
当時は中国との経済格差がまだかなりあった頃だが、古銭と共に、陶磁器についても「国の文化財級だが買わないか」と言われ写真を送って貰った。
その時は半ば本気にせず、また現地渡しだったので取引を見合わせた。
文化財の国外持ち出しは重罪で、捕まれば二十年間刑務所だ。
先方の国で現金を渡した直後に警察に告知されればアウトだ。それどころか、金だけではなく命も盗られる可能性があった。
ところが、後でその文化委員氏がバリバリの本物で、先に買った「草書の大観通寶」は本銭と地方写しの対で日本には無い品だと分かった。
他にも珍錢があったのだが、ある時ブックごと盗まれてしまった。
私が古貨幣収集家をあしげに罵るのは、その手のことが多過ぎるからだ。
黙って見ていたが、きちんとチェックしている(怒)。(もちろん、いずれ悪縁を送ることにしている。)
ともあれ、文化委員氏は本物で、間を仲介した中国人は胡錦涛氏の他、「書記長の名刺」を何枚か持っていた。おかげで普通の形式とは異なる党代表の名詞について蘊蓄を語れる。
ちなみに、党の中枢なので所持品ノーチェックで飛行機に乗れるのだった。
「大日如来」を見るとそのことを思い出して、目の前がクラクラする。
国宝級の焼き物だ。古銭の話など小さい小さい。鑑定団など鼻で笑えた。
脱線したが、それだけ心残りということ。
N050 紅白の桃猿駒 二枚組
これも懐かしい。白銅は盛岡のK岸さんの持ち物で、骨董商なのになかなか譲ってはくれなかった。幾度か訪店し、店を移る時にようやく売って貰えた。
その後、NコインズO氏に、この品の背景についてこってりと教えて貰った。
浄法寺鋳ではないこと。未知の銭座のものだが、系統的な品物が幾つか存在すること、等々。
この先の話は、もちろん、教えない。
オークションや入札の普及で、古銭は「お金を出せば買える」と思っている人が増えたが、お金で知識は買えない。古銭としての代価の何倍かを知識のために遣っているので、そちらは自分で調べると良い。
なるべく地元に返したいので、譲先の優先順位は二戸>岩手>その他となる。
売価が同じなら無条件で地元の人だ。ただ、今はコロナ禍にあり、収集家の多くはネットを見なかったりするから、売価に「から」と追加した。価格差があれば話は変わる。
N051 仙台(奥州)大型七福神 七枚組
各段階を揃えてあるのはこの1セットだけだと思う。
私が一枚ずつ集め二十五年掛かってこれまでなので、次に揃うことは無いと思う。
もちろん、既に出血大サービスなので、「から」付き販売だ。
難点はこれがどういう品なのかを知る者が少ないということ。
「早い者勝ち」にはせず、一週間ほど様子を見て、なるべく地元の人に渡すつもり
だ。この1セットしかないので、高くも安くもないと言える。要は要るか要らぬかだけ。
c札類は値段を忘れたので、大雑把に付けてある。
どんどん体調が下降するので、怒りっぽくなっている。