◎扉を叩く音(続)
「毎年、秋から冬にかけて、深夜、玄関の扉を叩く音が聞こえる」話の続きです。
令和二年十二月二十一日午前三時の記録。
居間で寝袋に入って仮眠を取っている。
夢を観ていたのだが、その夢の内容とはまったく関わりの無い「言葉」が響いた。
「年寄りだけでなく、十歳の子どもが何度も来ているんだよ」
壮年の男の声だ。
足元に立ち、私を見下ろしている。
慌てて目覚めたが、やはり傍には誰もいない。
心臓がまさに「早鐘のように」という表現の通りに打っていた。
私の許を人が訪れることはなく、今、現れるのは専ら幽霊だけだ。
そうなると、その中に「子供がいた」ということ?
男性はクレームめいた口調だった。
「はいはい。承知しました。毎日のお務めに子どもを加えます」
もはや、衣類の大半が線香臭くなっている。
「あの世」系の異変は、「写真に変なのが写る」よりも「そこにはいない人の声がする」方が多い。
思わず飛び起きて、周囲を確かめるほどの声の大きさだった。
追記)「そう言えば、昨日の画像に」と思い出し、それを確認してみた。
私の右肩に何かが乗っているような気がしたのだ。
それが「子ども」なのか。
だが、「猫」か「気のせい」のいずれかだった。