日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎扉を叩く音(続)

◎扉を叩く音(続)

 「毎年、秋から冬にかけて、深夜、玄関の扉を叩く音が聞こえる」話の続きです。

 

 9月14日午前3時15分の記録

 居間で眠り、穏やかな夢を観ていたが、唐突にノックの音が響く。

 「カッカッカッ」

 玄関の扉を叩く音だ。たぶん、拳が小さく非力だからごく軽い。

 中学生くらいの女子が叩けば、きっとこんな音になる。

 眼を覚まし、半身を起こした。

 「珍しいな。最近は専ら声で起こされていたのに」

 二十年くらいの間、ノック音を聞かされて来たのだが、1年ほど前から「扉の外」ではなく、家の中で物音がするようになった。要するに、入り込まれていたわけだ。

 「また、別の局面になったのだな」

 この8月までの流れとは違うようだが、それはむしろ望ましい。

 「また誰かが『助けてくれ』と言っているわけだ」

 何故、真夜中にノックの音が聞こえるのか。その理由を理解するのに20年は掛かった。

 要するに、「この男が聞こえる、あるいは自分の声を聞いてくれることを知っている」のだ。

 この場合、「この男が」は正確な表現ではない。その時間帯に起きていれば、多くの者が同じ音を耳にすることが出来るからだ。

 幽霊の発する声は可聴域と不可聴域に跨っているから、ひとの耳に聞こえたり聞こえなかったりする筈だが、音は実際に響いているということだ。

 私だけでなく家族も耳にしたことがあるから、音が存在することに疑いは無い。

その部分については、妄想でも何でもなく、紛れも無い事実だ。