日刊早坂ノボル新聞

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◎今日の四文字熟語は・・・「画▢▢睛」

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今日の四文字熟語は・・・「画▢▢睛」

 病院のエレベーターには、四文字熟語のクイズが映し出される。

 この日、エレベーターに乗ると、もはや四文字熟語の設問は終わり頃だ。慌てて撮影を試みたが、切り替わった後。しかも、画像は保存されていなかった。

 問題のストックが尽き、同じローテーションに入ったかと思いきや、まだ見ていない問題だった。

 

 答えはひとつしか思い浮かばぬが、「ひとまず造語から始めよう」と言葉を見直した。

 ありゃ、最後の文字は「晴」じゃなく、「睛」だったのか。

 「日」ではなく「目」だ。

 そもそも私は熟語に興味がなく、これまでてっきり「晴」だと思っていた。意味も概ね知っているが、なぜこれがあの意味になるのかなど、考えたことがなかったのだ。

 「睛」のつく熟語など、見たことも聞いたこともねえぞ。

 これでは遊べない。

 

 そこで、真っ直ぐ答えに向かうと、もちろん、「画竜点睛」だ。

 竜は「眼が青い」から、「睛」は竜の眼のことだ。

 意味は「ものごとを完成するために最後に加える大切な仕上げ」となるが、普通は「画竜点睛を欠く」までで一セットになっている。

 

 もちろん、これは故事成語だ。

 出典は概ね『歴代名画記』とされているようで、作者は張彦遠、時代は晩唐の作となる。

 内容は概ねこんな風な話になっている。

 梁(南朝:502~557頃の江南地方の王朝)に張僧繇という名の絵師がいた。この絵師は殊の外絵が巧みで、当時の梁の武帝は多くの寺院の絵を彼に描かせた。

 ある年、武帝は彼に健康(南京の古名)の安楽寺の壁に4匹の金竜を描くよう命じた。拝命を受諾し、張僧繇はわずか三日間で絵を描き終えた。

 この絵の中の竜は生き生きとしており、まるで実際に生きている竜のようだった。この絵を見に来た人々は感嘆の声を挙げ、「まるで本物の竜だ」と称賛した。

 しかし人々が近寄ってよく見ると、これら4匹の竜には眼が描かれていなかった。そこで皆は「何故眼を入れぬのか」と問い、絵を完成させるように張に頼んだ。

 すると張は「竜に眼を書き入れるのは簡単だ。だが、そうするとこの竜は壁からとび出して飛んでいってしまうのだ」と答えた。

 もちろん、人々は誰もこんな話を信じない。

 「こいつはいい加減なことを言っている、壁に描かれた竜がどうして飛ぶものか」

 やがて多くの人が「あいつは嘘つきだ」と喧伝するようになった。

 それを聞き、絵師は「分かった。それでは竜に目を入れることにする。ただし4匹の竜のうち2匹だけだ」と皆に約束した。

 その約束の日、その絵の前には大勢の見物人が集まった。絵師は見物人の前で筆を取り、静かに竜の目を入れた。

 すると、彼が2匹目の竜に目を入れたところで、空には黒雲が広がり、激しい風が起き、雷鳴がとどろき、稲妻が走った。

 その雷鳴の中、目が描かれた2匹の竜が壁を破って起き上がり、牙をむき出し爪を躍らせるようにして天空に飛び去って行った。竜が去ると雲は消え、再び空が晴れ渡った。

 それを目の当たりにし、見物人たちは茫然として口を利くことが出来なかった。もう一度絵を見ると、そこには目玉のない2匹の竜が残っているだけで、絵師が目を入れた竜は絵からいなくなっていた。

 はい。どんとはれ。

 

 故事成語は、短い言葉の中にひとつのストーリーを含む。まさにこの世で最も短い小説だと思う。