日刊早坂ノボル新聞

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◎古貨幣迷宮事件簿 「研究用の参考銭」

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参考品の特徴(主に輪側)

◎古貨幣迷宮事件簿 「研究用の参考銭」

 さて、試案を重ねた挙句、研究用として参考品を売却することにした。

 首都圏では古銭会を通じ、多くの人が情報を共有しているわけだが、地方のコレクターはそうはいかない。とりわけ、称浄法寺銭という「模造しやすい銭種」があるので、注意が必要だ。称浄法寺銭には、浄法寺から出ていない品が散見される。

 地元の収集家でも関東の入札を通じて入手したりしているから、誤謬がどんどん拡大することになる。

 それならきちんと情報を敷衍させた方がよい。そんな考えによる。

 このため、この譲渡には「相手を選ぶ」ことになる。なるべく北奥地方の収集家に渡し、古銭会で回覧して貰おうと思う。

 

P005 逆ト母銭(参考品)

 面背はそれなりに出来ているが、輪側はグラインダ仕上げ。スプーンを作る時のバリ取り用の機種だと思う。知人に職人がいいて、機械を見せて貰ったことがある。

 砂目も参考になる。かなり大きいのだが、これでまず汎用母を作り、それで鉄銭を作ればサイズ的にちょうどよくなる。高炉鉄を反射炉で溶かし再鋳すれば、水戸銭母子の出来上がり。

 厚手であり、真贋を見誤ることは無いが、あるとすればネットオークションで、面背の画像だけ見せ、「下値1円」で出された時だ。雑銭に混ぜ、っかつ他にも水戸系の母銭の本物を入れて置けば万全だ。「1円」は返品不可を確立させるための手段で、他の者が応札を始めると必ず参加する者が出る。

 十年後に「蔵から出ました。一円」出品されることを避けるため、ひとまず裏面に朱漆を入れて置いた。

 

P006 O氏作鋳放し仰宝(参考品)

 一時、全国の入札誌に下値一万五千円くらいで出ていた。ダメなのだが、資料として保存する必要があり買わざるを得ない。

 「称浄法寺銭の鋳放しの母銭」と思って持っている人もいるだろうと思う。

 О氏作は巧妙で、もちろん研究のために作られたものではない(数が多過ぎる)。

 これはまだ序の口で、さらに地金の配合や仕上げを工夫したものがあるから、これは単なる練習台で、最終的には難獲希少品の製造にあったと思われる。

 「地元でも出ていない」母銭が東京の雑銭から複数枚出た時期があるから、中位が必要だ。稟議段階の品が、地元でもない遠隔地の雑銭から出ることは無い。そもそも流通していない品だ。ま、宮福蔵は直接、作品を東京に売ったし、白雲居の摸鋳銭であれば伝わる可能性がある。

 地金・砂目が少しでも似ていれば疑った方がよい。

 

 ちなみに、前回の大福二神の際のN031イが、浄法寺銭、称浄法寺銭、もしくはこのO氏作にも似ている。そこでまた取り出して確認したが、輪側の鑢はむしろグラインダ製にも似た粗い筋となっている。

 さらに拡大すると、筋の向きが揃ってはおらず機械の仕上げではないようだ。

 だが、この深い筋は金属鑢(いわゆる鉄工ヤスリ)の痕に似ている。

 となると、明治中期以降の作となるが、今のところまだ何とも言えぬ。

 これは次の人に任せようと思う。

 

 ところで、逆トの背に朱漆を打つ際に、生漆の蓋を開けようとしたのだが、固く締まっており力が必要だった。強引に開けたが、その勢いで蓋が跳ね、手に漆が付いてしまった。

 乾いた漆は何でもないのに、生漆が肌に着くとかぶれてしまう。以前は両手が広範囲にかぶれたので病院に行った。あれで肌が慣れていれば何ともない筈だが、これから数日はおっかなびっくりの日々になる。

 

 さて、数日かかった所要が済んだので、今日はゆっくり追加出品の整理をしようと思う。

 もう少し暖かくなり、幾らか動けるようになれば、原稿を再開出来る。あともう少し。