◎古貨幣迷宮事件簿 「違和感の理由」
密鋳銭セットに仮入れして置いた「文政風」の離用通について、改めて「何故に違和感を覚えるのか」と確かめることにした。
そろそろ処分も終盤なので、これまで付き合ってくれた方々への分譲を開始している。この品も既に贈呈することが決まったので、発送前にひとまず見解をまとめて置くことにしたわけだ。
画像では分からぬが、指で触ると違和感を覚える。
この理由は、少し銭の中央から周縁にかけて傾斜が付いていることによる。
用は縁が薄いということで、ゴザスレ状の研磨が幾らか入っている。
これが違和感の理由だ。
ひとまず、過去のこの銭種を幾つか抽出し並べてみると、銭径が幾らか小さいようだ。
ただ、右端の面刔輪背削波のように縮小サイズの品もあるので、銭径をもって何かが言えることはない。
④は銭径が縮小しているが、これに関連し、文字が接輪するなどの特徴が目立ったので、これを修正しようとしたものか。
ただ、それは密鋳銭の技法であって、本座で行う工法にはそぐわない。
金色などはまさしく文政銭だが、作り方は異常だ。
現物は既に無いので、輪側などを確かめることは出来なくなっている。
②の輪側を見ると、バリ取りの後、きちんと縦鑢が入れられた形跡はない。
鑢目はほとんど見えぬので、縦とも斜めとも言えぬ。
ただ、銭径が少し小さいので、仮にこれを棹に通した場合、両側の銭の銭径によっては、粗砥の壁が当たらなくなる。
見解らしい見解を出せぬまま、この品は贈呈することになった。
銭種(型)は全然面白くないのであるが、作り方(工程)を学ぶにはよい素材だと思う。