◎古貨幣迷宮事件簿 R40909 「旭日龍五十銭銀貨の文字型」(さらに続)
さて、これまでの経緯はざっと以下の通り。
たまたま書体の異なる明治四年銘五十銭銀貨を見付けた。デジタルマイクロスコープを使用して文字種別に撮影し、これを比較すると、相違は少数個の文字に留まらず、多数に及んでいた。
手持ちのものを点検すると、偶然生じた変化ではないような相違があるようだ。
極印は、当初、大きな原版(直径1メートル超)を彫り、これを順次縮小させていくのだが、その過程で複数枚の型が生じている模様である。
まずは記述的に差異の有無を調べ、各特徴の違いが意味のある違いかどうかを調べるものとした。(この作業の目途が立つのは、一定量の大量観察を経たのちのことになる。)
今回は分かりやすいように、代表的事例4つについてのみ記述することにした。
要するに、これは研究ノートとしての内容である。
さて、既に掲示したサンプルの中から、代表的とも言える1、4、5を取り上げた。
相違はリストの通りであるが、「五」を除く文字について、形状の相違がみられる。
今のところ、「偶然生じた変化」のようには見えぬが、これは枚数を重ねることによって修正される場合がある。
種別Ⅰについては、従来、「跳ね本」、また種別Ⅱは「止め本」という分類で知られて来た分類に相当すると思うが、文字を個別に調べてみると、相違はかなり多岐に渡っている。
さらに、種別Ⅱについては、文字型の組み合わせに相違のあるものが存在しているようだ。これはひとつ二つではないかもしれぬ。
ひとまず、この段階では種別Ⅱをa、b二つに区分して置いた。
場合によっては、こういう組み合わせが多岐に及ぶのかもしれぬ。
明治四年大型五十銭の製造枚数は180余万枚らしいから、系統(最初の彫印)が十個を超えるのかもしれぬ。
ちなみに、カタログを見れば「跳ね本」「止め本」は書いてあるのだが、そこで思考を止めるより、ゼロから再スタートすると「見える世界が変わる」ことがある。
従来の分類を無視して進めたのはそういう理由で、要するに確信犯だ。
(型分類を知らぬのでも、近代化コレクターを小馬鹿にしているわけでもないので、念のため。大岡越前の逸話と同じように、計算するにあたりきちんと算盤をはじいただけ。)
先人の業績をそのまま受け取るだけでなく、「最初から確認し直す姿勢」が重要だ。
実際のところ、「本」字のみを見るよりも数段楽しい。
種別Ⅰ、Ⅱの「明」の文字型の相違
これまで「明」字については、「日」の形状のみに着目して来たが、「月」の撥ねの長さにも相違があるかもしれぬ。跳ねが「日」にくっつく場合と、離れている場合だ。
ただ、微妙な相違でもあり、摩耗変化の可能性を含め、ひとまず保留するものとした。
種別Ⅰ、Ⅱの「銭」の文字形の相違
「銭」字については、「金」右隙間の大小の他に、「金」横引右突起の大きさに違いがあるようだ。種別Ⅱについては、さらに文字型の細分が為されるかもしれぬ。
注記)いつも通り書き殴りで、推敲や校正をしない。あくまで日記の範囲と理解されたい。
注記2)十日に少々加筆した。