日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎『怪談』シリーズの背景

『怪談』シリーズの背景

「第1話 赤い服の女」

 実際の体験談をもとに、妄想を膨らませたもの。今回は場所を遠野から東に向かう峠道(旧道)と設定した。よって概ね笛吹峠か仙人峠だが、「旧道」という表記をすると、多くの人は仙人峠の方をイメージすると思う。

 友人が大橋付近に別荘を買ったと言うので、別の友人と連れ立って遊びに行くことにした。

 だが、釜石街道が事故で不通になっていたので、旧道で峠越えを試みた。

 そこには「赤い服を着た女の幽霊が出る」という伝説がある。

 その怪談話をしながら道を進むと、道路端から赤い服を着た女が出て来た。二人は恐れ戦き、車を飛ばし、友人の別荘に向かう。

 だが、本当に恐ろしい事態は翌日になってから起きた。

 

「第2話 学生寮の出来事」

 受験に失敗した「私」は、新たに開寮となった予備校の寮に入った。

 その寮では、当初から不可思議な事態が続き、「私」自身も窓の外に立ち、恨み言を言う幽霊に会った。

 周囲の状況を調べると、寮の建物は山の斜面を半分崩して建てられたものだったが、その山は元々が墓地だった。

 宗教法人が破綻して、土地をかたに取られ、開発業者が十分に供養を施さずに墓所を崩したことが原因で異変が起きたらしい。

 寮内の雰囲気が悪くなり、喧嘩が多発。自死した者も出た。

 「私」は「昼の間は幽霊が殆ど出ない」ことに気付き、夜は寝ずに朝まで勉強することにした。

 だが、本当に恐ろしい出来事は、冬になり寮の前の道で起きた。

 

「第3話 磯女」

 偶々、「私」は「かつての彼女」と出会い、二人で三陸海岸まで出かけることにした。双方が真意を確認せずに唐突に別れたので、その後の経過を知り、心の間隙を埋めることが目的だ。

 今の「私」には妻がいるが、幾らか良からぬことを思い描いてもいた。

 二人で磯の前に立つと、近くにいた女の姿が妻にそっくりだ。

 「さては、ダンナが浮気をするのではないかと疑ってここまで追いかけて来たか」

 そう思い、近づこうとすると、その女は不意に姿を消した。

 車に乗り出発したが、カーナビが誤作動をして、港町から出ることが出来なくなった。同じところをぐるぐる回り、幹線道路には戻らない。

 そこで、私は「さっきのは妻の生霊かもしれん」と思い、「この後はお前ひとりを守り添い遂げる」と誓う。

 それでカーナビの呪縛が解け、正常に作動するようになったが、すっかり興が冷め昔の彼女を無難に駅まで送った。

 帰宅して、そのことを妻に話すと、「まったく覚えがない」と言う。夫が女性と会うことを考えもしなかった。

 ここで「私」は自分が誓いを立てた相手が、妻の生霊ではなく別の「何か」だったことを知る。

 そしてその時、誰もいない浴室のシャワーがざあざあと水を吹き出し、同時に玄関扉が「コツコツ」とノックされた。

 

「第4話 みさきちゃん」

 北上山中の豪農の旧家を見学に行くと、既にそこには誰も住んではいなかった。向かいの家の人が管理をしていたので、案内してもらう。

 この屋敷は部屋数が十六以上もある。

 管理人によると、「ある部屋では座敷童が出る」という言い伝えがあるらしい。

 管理人が所用で席を外した隙に、私はしきたり通りに敷居の上に頭を載せて寝転んでみた。

 すると、居眠りした私を「お化けが来るからここで寝てはダメ」だと揺すり動かす者がいた。管理人の家の子どもだ。

 体を起こすと、庭の池のところに着物を着た若い女性がいた。

 私はその女性に声を掛け、謝意を伝えた。

 管理人が戻って来たので、この経緯を伝えたが、「その若い女性は同級生だったみさきちゃん」だと言う。

 みさきと言う娘は既に二十年以上前に亡くなっている。

 管理人は「私も会いたい」と庭に向かうが、もはや娘の姿は消えていた。

 そして、この周囲には、私を揺すり動かした年格好の女児は一人もいなかった。

 

 『怪談』シリーズは概ね実話がベースで、あと数本後に「血が凍るような話」を記す予定になっている。実話だが、あまりに酷い話なので、これまで口外したことはない。

 とりあえず、今は「第5話 ほどの河童」を認め中。

 どれがいつどのように出るかは、各編集担当の意向による。本人は知らない。