日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎病棟日誌 悲喜交々 11/11 「俺は見世物じゃねーけど」

病棟日誌 悲喜交々 11/11 「俺は見世物じゃねーけど」
 土曜は通院日。
 病棟に行くと看護師が集まって来た。
 「どうなりました?」
 そこで足の傷を出して見せた。
 「こりゃ、かなり痛かったでしょ」
 「そりゃヒーヒー言うくらい痛いですよ。足の爪を根元まで切り取ったから」
 「膿が出たようですが」
 「腫れていたが、やっぱり内部に膿が出来ていた」

 足には神経が集まっているからすごく痛いのだが、そんなのは顔には出ない。その時、形成の看護師が聞いた。
 「これで痛くないのですか」
 さすがに「そりゃ痛いですよ。我慢しているだけ」と答えた。
 この話をすると、オバサン看護師が「我慢強いんですね」と言う。
 「いやいや、『男は痛いと言わない』というのを美徳とするような昔の人間だし、ひと一倍見栄っ張りなだけです。病状とかはそのまま伝えるのが一番ですよ。医師はそれで判断する」
 前回の左足も同じような状況だったが、麻酔薬の塗布を断ったので、医師は今度も使わなかった。
 前回のやり取りはこう。
 「これ痛いですよ。薬を塗りますか?」
 「いや結構です。痛いのは生きている証拠なんで」
 ただ見栄っ張りで「スゴイですね」と言われたいだけ。威勢だけ良い若者と同じレベルだ。
 成人式じゃ暴れたるでええええ。バカ丸出し。

 最初の看護師たちが去ると、前回のウエキさんがやって来て、「どうなりました?」。
 さすがに、また最初から開いて見せる気にはならず、「今日は処置して貰いました」と伝えた。
 ここの患者は、小さな傷からほんの数日でリンパに回り、足全体が黒変し腐る。次の週には足切断に至るから、心臓と同じくらい細かく足を見る。
 そう言えば、「足は第二の心臓」だっけか。

 実際、爪を剥いだら、膿が沸き出てぽたぽたと落ちた。
 あれを放置したら、結構ヤバかったかもしれん。
 「俺は見世物じゃねーぞ」と思い掛けたが、しかし、ウエキさんの「行きなさああい」(母親口調)に助けられているのだった。

 普通の人なら何でもないことが、瀬戸際にいる患者には、生死に関わる事態になる。足を切り落とすと、ほぼ残りは「長くて半年」だ。これに例外は無い。
 ウエキさん有難う。
 この気持ちがあるので、この日はウエキさんに極めて丁寧に接した。