日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎美人女医に刺される

◎美人女医に刺される

 日曜に所用で都区内に行った。電車に乗ることすら二年ぶりで、都区内に入るのは三年ぶりくらいではないか。

 トータルで三キロくらい歩いたと思うが、動脈硬化が進んでいるのと、歩き慣れていないので、踵に血豆が出来た。

 大きさは「血豆」と言うより「血腫」の域だ。

 月曜になったら、足の裏半分くらいの大きさまで拡大したので、病院で診察・治療を受けることにした。

 

 いつもの病院の皮膚科に予約を入れ、火曜の朝一番に診て貰うことになった。

 「前回、炎症で診て貰ったのだが、同じ医師なのだろうか?」

 待合室で科の扉についている名札を見ながら考えるが、名前など憶えちゃいない。

 前回は女医さんで、ちょっとそんじょそこらで見たことのないような美人だった。

 三十台前半で、身長が170㌢前後、スラリとした体躯で、黒髪が健康的だ。顔は歌手のキヅキミナミって人をさらに数段美人にした感じ(やや失礼な表現だが)。

 女医でここまできれいな人をこれまで見たことが無い。

 テレビで見る「美人女医」は、医者なのにどこか「ケバ臭い」印象の人が大半だが、この人はナチュラルだ。

 ま、医師なので、それが当たり前だ。

 

 「ますは水を抜きましょうね」

 麻酔を塗って、針を刺そうとしたが、踵の固いところなので上手く入らない。

 少し上の柔らかいところから打って貰ったが、そこは神経が集まっているからさすがに痛い。

 だが何となく「平気な顔」を装ってしまう。

 そこは「美人女医」効果だ。

 「痛くないですか?」

 「別に大丈夫です」

 すると、医師は力を入れて俺の血種をぎゅうぎゅうと絞った。

 トホホ。そりゃ痛えよ。

 ちょっとした見栄が二秒後に跳ね返って来た(苦笑)。

 

 病棟に行くと、早速、治療の状況を訊かれた。

 「どうでしたか?」

 「いやあ、きれいな先生で少し緊張した」

 訊かれているのは治療や患部のことなのだが、答えはこっち。

 オヤジ看護師が頷く。

 「あの先生は本当にきれいですからね」

 ここで脇からチエコちゃんが刺さって来た。

 チエコちゃんは長崎出身の看護師で、アラ五十女子ということもあり、きさくに話が出来る。

 ま、沖縄とか北海道の奥地とかの出身だと、共通のイナカ話が出来るからすぐに気心が知れる。

 

 そのチエコちゃんが私をからかう。

 「そんなきれいな先生なら、泌尿器科でなくて良かったね」

 「まったくだ。出来れば泌尿器や肛門科はオヤジ先生にして欲しいね」

 でも、そもそも、診療科自体に関係がないわけで。

 幾つになっても、オヤジ根性はそのままだ。

 私のような腎臓病患者は、リンの排出が悪いから、動脈硬化が普通の人のニ倍以上のスピードで進む。

 血管が弱っているので、些細なことが大事になってしまう。

 隣のベッドのガラモンさんも、ある日突然、心臓の大動脈が塞がって、心停止した。

 抵抗力も落ちているから、足にほんの些細な傷が出来ると、あっという間に化膿して、足を切り落とす羽目になってしまう。

 で、今は医療がいいから、死ぬこともままならず、生かされてしまう。

 

 「そんなことなら、さっさとあの世に行った方が楽だよね」

 この病棟では、患者も看護師もこれに全員が頷く。