◎夢の話 第1118夜 「新装開店」
16日の午前二時に観た夢です。
二つ前の実家跡を改装し、店舗にすることになった。
大正から昭和初期の古い商店のつくりだったが、なるべくその雰囲気を残して、内部を今風に変えた。
古民家を改造して、カフェやレストランに直すのが流行りだが、今回は古い商店を使えるように直し、土産物を売る。
父母の「老後は萬屋みたいな小さい店で、半道楽の商売をやりたい」という夢をかなえたものだ。
この店が営業を始めて数か月経ったので、様子を見に行った。
店に着いたのは夕方で、もはや閉店の時刻だった。
店内に入ると、アルバイトの女性たちが後片付けをしていた。
そこに父母が出て来たが、「今日の夜は用事があり、出掛けて来る」と言う。泊りになるそうだ。
「それなら俺がここに泊り、明日は朝から店番をしてやるよ」
「そう。じゃあ、よろしくね」
二人が外に出て行く。
そこに従姉が戻って来た。
従姉は配達に行って来たらしい。
「ああ、○○ちゃん。来てたの」と従姉が言う。
ここで俺はぼんやりと思い出す。
「あれあれ、この従姉はもう十五年以上前に亡くなった筈だが、何でここにいるんだろ」
うーん。「死んだ」というのは気のせいだったか。
その従姉が思い出したように俺に告げた。
「昨日、『お父さんに会いたい』と言う子が来てたよ。そのお父さんって、○○ちゃんのことだったけど」
「え。俺に娘はいないよ」
そもそも俺は三十二歳で、まだ独身だし。
するとまた頭のどこかで声が響く。
「俺には娘が二人いるじゃないか。それにお前が結婚したのは三十の時だぞ」
何だかおかしい。今の俺は本当の俺ではないような気がする。
表のシャッターを閉め、店の灯りを消した。
事務室に座り、厨房の後片付けをしている従姉が戻るのを待った。
すると、事務室の出入り口に誰かが立っていた。
十七歳くらいの女の子で、頭がショート。高校生くらいだ。
その子が入り口から中を覗いて、俺のことを見た。
「お父さん。私はあなたの娘です」
ははあ。さっき従姉が言っていたのはこの子か。
「え。俺には娘などいないよ」
「でも、私はあなたの娘で、あなたは私のお父さんです。中に入れて」
こりゃ、ややこしいことになって来たぞ。
「だって俺には身に覚えが何ひとつないよ」
この子は少しイカれているのかも。
「お父さん。私を中に入れて」
女の子がその言葉を繰り返す。
俺はなんだか自分が自分ではない心持になり、頭がぽわんとした。
ここで覚醒。
さっぱり意味が分からない。「従姉」や「ショートの高校生」が何を象徴しているのやら。
店は五十年以上前に住んでいた家を改装したものだったが、その家自体、二十年前に取り壊されている。
今ならあの古い商家づくりは使いようがあるんだが、残念なことにもうない。