日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

小売業界の「ケツの穴の小さい話」

 今の流通業界では、大規模店では○○ン、チェーン店では○○○アンド○○の二人勝ちだと言われています。竹下内閣時の大店法改正と、小泉内閣の「なんでもかんでも民営化・自由化」の路線にうまく乗れた企業が成長したようですね。特に前者はディベロッパーと経営が切り離されており、複数の系列がバラバラに「開発」を進めており、同じ企業グループの中でも食い合ってます。

 かくいう私の実家の側にも、昨年、○○ンのスーパーセンターができました。ちなみに私の実家は、地元で40年以上営業してきた中小スーパーの老舗です。
 従業員の数から見れば、とても比較にはなりません。なにせ、そこの自治体(あえて名は伏せます)では30億円の財政累積赤字を抱えていたのに、ディベロッパーの「300人の地元雇用」という口約束だけで、○億円の道路をその○○ン用に整備しました。用地だって農業専用指定だったものを、誘致のために解除しました。都合の良いことに、その自治体は隣接市と合併しましたので、この辺の裏の話はわかりにくくなってます。誰の目にもわかるのは、約束だった集配センターへの雇用が1/10に留まっていることです。

 ○○ンがわずか数百メートルのところに立地して、メディアが大挙して取材に来たのですが、ほとんどニュースになりませんでした。なぜなら、「大企業の立地で困っている地元中小」の図式にはまるで当てはまらず、実家のスーパーでは客足が延びたからです。わずかに報道に乗ったのは、取材には全く来ずに、道路だけを撮影し、「既存の中小は『黒船が来た』と愕然としている」と報じたテレビ局が1社だけです。
 しかしもちろん、このご時勢ですので、客足は増えても益率は上がりません。客単価もかなり下がっているようです。賢明な消費者は、○○ンの中にある○○スコと実家スーパーの商品を見比べて、買い得だと思う品だけを買っていきます。
 実家の経営陣はすぐにこれに気付き、ー店と○○ンは共存共栄の関係にあること、⊇擦瀛けをすれば双方が収益性を高めることができることを発見しました。流通経路が異なりますので、購買層も当然違ってくることになります。

 ところが、巨大企業・○○ンさんの経営陣の考えは違っているようで、先方が目指しているのは独占的支配のみのようです。開店時には社長室長が実家を視察に来て値段調べをしていたようですが、現在も店長級の職員が毎日現れては値段をメモして行くとのことです。ちなみにこれは単なる誹謗の類ではなく、防犯カメラにも写っており、事務所では毎日、○○ンのその店の誰が来ているか確認しています。
 で、○○ンでは、実家スーパーと競合する商品をわざわざ仕入れ、安売りセールを打っています。要するに競合店(?)潰しに走っているということです。

 これはある意味驚きですね、横綱が幕尻の小兵力士に対し、はたき込みやけたぐりといった技を仕掛けるのと同じです。
 しかし冷静に考えると、この不況の世の中にあって、人口がわずか1万いくらの町にスーパーセンターを出店するという、無謀とも思える「開発」に手を染めたので、先方にも余裕が無いのかもしれません。少なくとも、すぐ眼と鼻の先の小さなスーパーを潰してしまえば、価格競争をする必要が全く無くなり、自由に値段を決められます。お客が「どっちが安い」と比較することもありません。

 ケツの穴の小さい話で、ここに偵察に来ているのがミエミエなのに、「缶コーヒー1つ買わないで帰る」ところが現在の状況を表しています。ま、熾烈な競争を繰り広げ、「他店より高かったら価格を下げる」ことを掲げる電器店でも、競合店に自ら管理職が赴き、露骨にメモを取って帰るなんてことはやりませんね。仁義に欠けますので。

 私の本業は組織の意思決定や構造改革を行うためのコンサルタントですが、今の状況に対する意見は「2年持ちこたえられれば、先方が先に崩れる」というものです。
 客観的に見て、テナントで入居している店の絶対数が少なすぎますね。○○ンでも、グループ内競争が激化し、食い合いが始まっているのですが、何せこの店舗のわずか15キロ先には、同じ○○ンモールがありますので。同一市内に○○ンモールやスーパーセンターが3つあるのは全国でもこの市だけと聞きます。

 通常はこんな裏話をブログに書くことは無いのですが、大企業の割には「あこぎ」な感がありますのであえて書きます。実家のビジネスには一切口を出さない主義ですが、「力こそ正義」という哲学を目の前にすると多少は考えさせられることがありました。

 しかし、現在、新聞連載を続けている「北斗英雄伝」にとっては、格好の素材となり助かっています。
大軍であることをかさにきて、あこぎな所為を繰り返す豊臣勢とその手先である南部家のイメージにぴったり合っています。
 秀吉の晩年は、意に添わぬ者の首を直ちに刎ねるような専制君主でしたが、二代で滅びました。やはりここでも、「歴史は繰り返す」だろうと思います。