日刊早坂ノボル新聞

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「九戸戦始末記 北斗英雄伝」:其の九 嚆矢の章 のあらすじ

其の九 嚆矢(こうし)の章

<あらすじ>
 疾風一行は帰路、三戸の伊勢屋を訪れる。伊勢屋では疾風はお晶、平八は若菜という娘を、宮野城まで連れて行くことになった。
 出立の仕度をしているところ、伊勢屋の門前に岩泉兵部が現れる。岩泉兵部は元々、東孫六という名で、東一族の枝葉に属する。疾風は孫六と立会い、勝負に勝つが、命は取らずそのまま返した。
 この勝負を見ていた口入れ屋の松の知らせにより、毘沙門党が疾風を待ち伏せる。疾風が敵に立ち向かおうとすると、先に行かせたはずの三好平八、山ノ上権太夫が助太刀をするために戻ってきた。
 疾風は宿敵である毘沙門党の窮奇郎、紅蜘蛛と対峙するが、この時、三戸の追手が何百人も現れ、取り囲む。疾風はひとまず毘沙門党と休戦し、三戸の包囲を脱し、宮野に向かった。
 一戸城では城主の一戸図書が家臣たちに、この後、政実に与することを告げ、「残る者は残り、去るべき者は去れ」と命じる。この命に応じ、城の外に出た者の中には、三戸から派遣されていた小平左近がいた。小平左近は、田子に集結する三戸軍中の兄・月館隠岐に知らせるべく馬を駆る。
 北郡の七戸家国のもとには、天魔源左衛門により、政実が宣戦布告したことが報じられた。
嚆矢(開戦を告げる鏑矢)は、まさにこの時に放たれたのであった。

<主な登場人物>
◇登場人物氏名(登場順。○は豊臣・三戸側、▲は九戸側、□■※は氏名不詳に対する仮名または創作上のキャラクター。黒は九戸側、※は何れにも属さない者)

※捨吉(13歳):口の利けぬ伊勢屋の使用人。お晶に可愛がられており、お晶を姉のように慕っている。
■厨川五右衛門宗忠(=疾風、30歳台前半):岩手郡姫神山の麓の領主・日戸内膳の配下で武術の達人。
■三好平八(45歳) :元は上方侍で三好康長の隠し子。葛西・大崎の一揆に乗じて北奥に落ち延びる。疾風と行動を共にすることにより、自分を取り戻した。疾風の人柄に惹かれ、参謀として接するようになる。
■山ノ上権太夫:五尺ちょっとの陽気な相撲取り。陸奥各地の神社の相撲大会に出ることで褒賞金を稼ぐのを生業としている。 
■お晶:千徳一族の娘で、天正13年の津軽大浦⇔南部信直の戦で家族を殺され、消息不明の兄弟を探すために自ら娼館に入った。23歳くらい。
▲岩泉兵部(=東孫六、38歳):東一族の者。疾風の腕を確かめようと伊勢屋を訪れる。南部家の扱いに不満を持っている。実在する岩泉の地侍で、宮野城攻防戦では九戸方に参じた。
※赤平窮奇郎(52歳):毘沙門党の赤平三兄弟の次男。
※紅蜘蛛お蓮(28歳):毘沙門党の赤平兄弟の義妹。縄術を使いこなす。
▲一戸図書(50歳くらい):一戸城の城主。兄の一戸実富は宮野城で、九戸家の執事を務めている。
○小平左近(38歳くらい):三戸南部家家臣。一戸城に派遣されていた者で、兄は鹿角毛馬内の家臣で、一戸近くに領地を持つ月館隠岐
▲■天魔源左衛門:七戸家国の家臣で、乱破衆(忍者)。天魔一族は男子は皆「源左衛門」を称するが、この章の源左衛門は「鳶丸」である(「卍」の弟)。
▲七戸彦三郎家国(42歳):北郡(きたのこおり)の主。元々は八戸家の傍流で、妻の1人は八戸政栄の娘(正室九戸政実の妹)。

<ひと口コメント>
天正19年3月11日、一戸開城の前後を伝える話です。
九戸党が初めて、三戸と戦う意志を自ら示したのが、この一戸城の包囲と開城になります。
「嚆矢」とは鏑矢のことで、古い戦の作法では、宣戦布告の際に用いられます。
新聞への掲載は1月中下旬頃からになります。